【プロピッカー】人口減少社会の到来は、日本に何をもたらすのか

2017/3/4
2017年3月の「マンスリー・プロピッカー」のテーマは「人口減少社会の生き方」「新・地方創生」「ヘルステック」の3つとなり、合計13人が就任します。
各プロピッカーは、どんな問題に関心を持ち、どんなコメントをしてくれるのでしょうか。今回は、「人口減少社会の生き方」に関してコメントする4人からのメッセージをお届けします。
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人口減少社会の“光”も見るべき
村上由美子(むらかみ・ゆみこ)
上智大学外国語学部卒業後、スタンフォード大学大学院修士課程(MA)を修了し、国際連合へ。国連開発計画や国連平和維持軍などで任務にあたる。退職後、ハーバード大学大学院経営修士課程(MBA)に入学。修了後、ゴールドマン・サックスやクレディ・スイスを経て、2013年にOECD東京センター所長に就任
私は、経済協力開発機構(OECD)などのグローバルな環境で仕事をしてきた経験も踏まえて、「いま日本で起きていることは、国際的にみた場合はどうなのか」という視点でコメントできたらと考えています。日本と海外を比較することで、新たな発見やヒントが生まれるからです。 
人口減少社会に関して言えば、日本では悲観論が主流ですよね。もちろん、人口減少による財政的な問題など影の部分はありますし、それを否定するわけではありません。しかし、同時に光の部分もあるのです。
たとえば、「AIやロボットは仕事を奪うのか」といった議論がありますが、人口が減少する日本においては、「仕事を奪ってくれることはありがたいこと」なのです。テクノロジーに関しては、高齢先進国だからこそイノベーションが生まれる可能性もあり、国際的に優位に立てる“追い風”になるからです。
私たちは、人口減少社会に関して、その現実をきちんと受け止めた上で、光と影の部分を五分五分で見た議論をすべきです。私の近書『武器としての人口減少社会』(光文社)が多くの方に読んでいただけたのも、光の議論をすることが新鮮味を持って受け止められたからだと思います。
また、この問題に関連して、働き方改革も興味深いトピックです。私としては、長時間労働の規制だけに注目が集まりがちですが、同じタイミングで「いかに労働生産性を上げるのか」という議論が必要だと考えています。
長時間労働の規制は、働く時間が短くなることを意味するので、労働生産性を上げなければ単純に労働時間分の報酬が減ってしまいます。働く時間は短くなるけれど、多くの人が貧乏になってしまう可能性があるわけです。それなのに、日本では長時間労働の規制と労働生産性の問題が、十分な形で一緒に議論されていません。
こうした働き方改革についても、国際比較をすると新たな視点が得られると思います。皆さん、今後ともどうぞよろしくお願いします。
“衰退している地方”の問題点
藤波匠(ふじなみ・たくみ)
東京農工大学農学研究科修了後、東芝に入社。退職後、さくら総合研究所(現日本総合研究所)副主任研究員となり、(財)山梨総合研究所出向などを経て、2015年から日本総合研究所調査部上席主任研究員を務める。
私は、日本総研で地方活性化などに関する研究や政策提言を行っていますが、そのなかで「地方が衰退しているのは、東京一極集中によって若い人が流出しているからだ」と指摘する声をよく耳にします。そこで「本当にそうなのでしょうか」と説明する機会があります。
どういうことかというと、「東京一極集中」と言っても、人の出入りを相殺してみると、地方で生まれた人のほとんどが地方で暮らしている計算になります。東京に出てきているのは、およそ1割程度に過ぎません。
また、そもそも「東京と地方」と簡単に線を引くことにも注意が必要です。たとえば、福岡は東京よりも若者の人口比率が高く、全体の人口も増えていますよね。西日本の中核的な都市であるだけでなく、早い段階からアジアの窓口になる戦略をとったことで、企業集積も図られています。
産業がある場所には、都市であろうと地方であろうと人が集まるのです。人は、高い収入を得られたり、付加価値が高い仕事ができたりする魅力ある場所に流れるからです。
“衰退している地方”が抱えている最も大きな問題は何なのでしょうか。それは、地元に残っている9割の人たちが付加価値の高い仕事ができておらず、提供もされていないことにあります。
そうした自治体は補助金に頼るだけでなく、若い人たちの起業を支援していくなど、新たな産業を生み出す努力が重要なのです。多少荒治療となりますが、生産性の低い産業や企業から、生産性の高い産業に人材をシフトすることも必要でしょう。
さらに言えば、これまでと同じやり方を次世代に引き継ぐのではなく、仕事を束ねてより少ない人手でより多くの付加価値を生み出す構造転換も必要です。地方だから「昔のままでいいんだ」では通用しないのです。
データやファクトに基づくと、地方の問題は東京一極集中だけでは片づけられないことがわかります。政府は東京への人口流入を止めようとしていますが、それだけでは地方活性化にはつながらないのです。
NewsPicksでは、上記のようにデータに基づきながら地域再生に関するニュースにコメントできればと思っています。さらに、自動運転など「社会を変えることにつながる動き」もフォローできればと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
“ソロ社会”で必要になる力
荒川和久(あらかわ・かずひさ)
早稲田大学法学部卒業。独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・WEBメディア多数出演。著書に『超ソロ社会-独身大国日本の衝撃』(PHP新書)『結婚しない男たち-増え続ける未婚男性「ソロ男」のリアル』(ディスカヴァー携書)など。

独身生活者研究が高じて、書籍を2冊も上梓させていただきました。もちろんソロ男です。
近著『超ソロ社会』に書いたように、日本の人口減少は不可避です。同時に、2035年には人口の半分が独身者となり、単身世帯が4割を占める「ソロの国」となります。大事なのは、こうした現実から目を逸らさず、正確に理解した上で、議論を進める姿勢だと思っています。
人口減少に限らず、未婚化・少子化・高齢化・貧困問題・格差問題など日本の未来を語る上で出てくるワードはネガティブなものばかりです。しかし、いたずらに不安や恐怖を煽る情報を意図的にピックアップし、好転しない現在と悲観的な未来の責任を誰かに押し付けようとしても意味はありません。
NewsPicksでは、そうした未来に向けて「必要となるひとりひとりの意識や行動とは何か」という観点で、ピックやコメントできればと思っています。
ソロ社会と言うと、家族と独身とが分断される社会だと勘違いされますが、それらは決して対立項ではありません。NewsPicksの連載『超ソロ化する日本。希望は「AI」と「つながり」』にも書かせていただいたように、家族とは血縁ではなく、“考え方の家族”となるべきです。
子どもを産むことだけが人間としての価値ではありません。ソロの人たちが、自分のために働き、趣味のために消費することが、意識としても結果としても、子どもたちを育てることにつながる社会になってほしいと願います。そうした社会が新しい未来のしなやかなコミュニティを創造することにつながるのではないでしょうか。
ソロ社会で必要になるのは、逆説的ですが、人とつながる力です。家族であろうと独身であろうと、それは同じです。人は誰かと関わりながら生きるものです。自立とは、他の誰の力も一切頼らないことではなく、頼れる依存先を複数用意できることで生まれるもので、依存先がひとつしかない状況の方こそ危険です。
また、個人の多様化が叫ばれていますが、個人の中にある多様性についてもっと着目してほしいと思っています。これからもよろしくお願いします。
子育て環境を改善するために
高崎順子(たかさき・じゅんこ)
東京大学文学部卒業後、出版社に勤務。2000年に渡仏し、パリ第4大学ソルボンヌ等で仏語を学ぶ。ライターとしてフランス文化に関する取材・執筆の他、各種コーディネートに携わる。著書に『フランスはどう少子化を克服したか』(新潮新書)、『パリ生まれ プップおばさんの料理帖』(共著、新潮社刊)等がある。
いま、私が一番関心のあるテーマは、保育園における保育士の給与や、保護者が抱える問題をはじめとした「子育て環境の改善」です。
子育て環境の問題は多岐にわたっていて「どこから取り組むべきか」の優先順位をつけるのが難しいのですが、小さなことでも何かを変えることができれば、それがきっかけで物事が一気に前に進む可能性があります。例を一つ挙げると、保育園の「使用済みオムツ問題」があります。
使用済みオムツは、保育園で捨てているケースと、保護者が持ち帰らなければいけないケースがあります。実は、自治体や保育園の経済状況などにより、全国でばらつきがあるのです。
介護施設においては、すべて施設側がオムツを処分しています。それなのに、保育園では費用がかかるからと、保護者に不衛生なオムツを持ち帰らせているのはおかしいですよね。
こうした一見小さな問題にも、保育を取り巻く行政の問題が凝縮されているのです。
そして、日本の子育て環境において最も大きな問題は待機児童です。現在、認可・認証保育園が足りない中で、小規模保育などの選択肢もありますが、保護者の多くは「預けるならば保育園に入れたい」と考えています。
私は、保育園を増やすことも大事ですが、発想を少し変えて、小規模保育を充実させる方法もあると思っています。
すると、保育園よりも経済的コストはかからず、現実的な子育て予算の中で保育の枠を広げられます。これにより、待機児童問題を改善できる可能性があるのです。こうした少し違った視点でもコメントできたらと思います。
また、現在フランスに在住しているので、海外の視点も提供できればと思いますが、「海外はいいよね」と言いっぱなしになるのではなく、それが「いかに日本で役立つか」という観点でお伝えできたらと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
(取材、構成:菅原聖司)