【堀江貴文】議員をボット化。「ホリエモン新党」の戦略

2017/2/25
日本に新しい時代が到来しようとしている。明治維新から敗戦までの「日本1.0」、敗戦から今日までの「日本2.0」に続き、2020年前後から「日本3.0」がスタートするのではないか。そんな予測を拙著『日本3.0ー2020年の人生戦略』で記した。では、「日本3.0」はどんな時代になるのだろうか。各界のトップランナーとともに、「日本3.0」のかたちを考えていく。第3回は、堀江貴文氏とともにテクノロジー、メディア、政治などの切り口から未来を考える(全5回)。
第1回:未来予測に意味はあるか?
第2回:AIは電通を殺すのか?
第3回:議員をボット化。「ホリエモン新党」の戦略
第4回:AR、VRで生活はどう変わるのか?
第5回:これからも「紙の本」が生き残る理由

都議選に120人立候補

佐々木 確かに、メディアの世界はもっとも古いので変わりにくいですが、たとえば、政治の世界はこれから若返りそうな気がしませんか? 世界の政界では、40代のリーダーも生まれていますし、選挙には、良くも悪くも、権力構造を変える力があります。
堀江 でも、トランプさんは何歳ですか? 70歳ですよ。しかも、大統領を8年間もやると言っています。
佐々木 日本でも、安倍政権の後に、小泉進次郎さんが首相になったりしませんかね。
堀江 なりませんね。
2021年に安倍首相の自民党総裁の任期が切れるが、ポスト安倍の有力候補は見当たらない。2021年時点で小泉進次郎氏はちょうど40歳だ(撮影:福田俊介)
佐々木 ただ、小池都政を見ていると、政治のほうが、メディアに比べればまだ変わりやすい気がします。
堀江 都政についてはひとつアイデアがあって、最近、オンラインサロンの政治系のディスカッションで、「都議選に120人の候補者を擁立したらどうだろう」という話が盛り上がっているんですよ。
佐々木 それは小池新党から出馬するんですか?
堀江貴文(ほりえ・たかふみ)
1972年福岡県八女市生まれ。東京大学在学中の1996年、オン・ザ・エッヂ(後のライブドア)を起業。2000年、東証マザーズ上場。2006年1月、証券取引法違反で逮捕され、懲役2年6カ月の実刑判決を下される。2013年11月に刑期を終了し、再び多方面で活躍する
堀江 いえ、小池さんとは思想が違うので。
われわれの思想は、アイスランドの海賊党(政治の透明性や情報の公開を信条とする新しい党。2016年10月の総選挙で63議席中10議席を獲得し、第2党に躍進した)に似ています。全部、直接民主制でベーシックインカムを実施しようという考え方です。
アイスランド海賊党のビルギッタ・ヨンスドッティル党首。ウィキリークスの活動家、パンクロックミュージシャンの出身。オンライン投票による直接民主制や情報公開を訴えている(写真:Giles Clarke/Getty Images)
佐々木 党首は堀江さんですか?
堀江 僕でなくてもいいと思う。
われわれの党は、議員が全部ボットなんです。それを条件に議員になってもらう。
要はクラウドファンディングで何千万円か集められれば、東京のすべての選挙区に候補者を出せます。候補者は当選したら、議員として、みんなの意見の総意に基づいて投票するわけです。

議員をゼロにする

佐々木 インターネットの本質は中抜きして、直接つなげることですが、それを政治の世界で行うということですね。政治家は、自分の意志で政治をするのではなく、単なる有権者の媒介になるということですね。
堀江 そうです。それに対してお金を払うということです。
佐々木 思想家の東浩紀さんが『一般意志2.0』で書いていた枠組みに似ていますね。
【東浩紀×西田亮介】「民主主義=資本主義」の未来
堀江 それをやることの狙いは何かというと、まずは過半数を狙う。そして、過半数を取れたら、「議員をゼロにする」という法案を通すんです。実は、地方自治体は議員ゼロで運営できます。地方議会はテクニカルにゼロにできるんです。
佐々木 そもそも地方自治に議会が必要かという議論もあります。
自民党の国会議員の中にも、地方議会はいらないと言っている人もいました。地方自治は首長と議会を別々に選挙で選ぶ二元代表制ですが、首長を選ぶ選挙で民意を反映しているのに、さらに都議選で民意を問う必要があるのかという理屈です。
少なくとも、今のような人数はいらないですよね。
堀江 議員をゼロにしたら、都民が投票するためのコンピューターシステムを入れて、都民総会みたいなものを開けばいい。
投票をどんなシステムで運営するかと言うと、自分の詳しくない分野は、他の信頼する人に託せるようにするんです。たとえば、僕は社会保障に詳しくないと思ったら、それに詳しい佐々木さんに託せるようにするのです。
佐々木 そのアイデアは面白い。
堀江 たとえば、佐々木さんが多数の票を委託されたとしても、もっと詳しい人がいると思ったら、その人に票をあげてもいい。
そうすると、より詳しい人たちとか、信頼されている人たちがより大きな権限を持って、議論をどんどん進めていける。民主主義の枠組みの中で、システムをダイナミックに組み替えられるわけです。
佐々木 子どもにも票を与えて、その票を親に渡すのもいいですね。そうすると、子どもの多い人の意見をより反映しやすくなります。
堀江 そうですね。
佐々木 都政の話は、豊洲や五輪の問題ばかりが取り上げられて、あまり未来を感じる話がでてきていません。その点、テクノロジーの力を生かせる今のような取り組みは面白いですね。
堀江 ええ、そんなトライをしてみようかなと思っています。
*明日に続きます。
(撮影:龍フェルケル)