なぜ人間は、いつまでも幸せになれないのか

2017/2/22
イスラエル・ベングリオン国際空港から車で1時間。オリーブの樹が立ち並ぶ閑静な住宅街に、その男はいた。
ユヴァル・ノア・ハラリ。ヘブライ大学歴史学部の教授で、世界的ベストセラー『サピエンス全史』の著者として知られる人物だ。
『サピエンス全史』を手に取った読者は、まずはスケールの大きさと扱う学問の幅広さに驚かされるだろう。
「なぜホモ・サピエンスは今日の地位を得られたのか」という問題意識のもと、人類誕生からシンギュラリティが到来する近未来までの流れが、歴史学のみならず生物学、経済学、物理学、情報工学など、ありとあらゆる分野の知見を引きながら語られる。
人類を発展させる一つの原動力となったのが、国家やお金、宗教といった「虚構(フィクション)」を信じる力、というのがハラリの論だ。これによって、人類は見知らぬ他人との協調が可能になり、他の動物を駆逐したり、飼い慣らすに至った。ハラリはこれを「認知革命」と呼ぶ。
その後、人類は「農業革命」「科学革命」など、数々のブレイクスルーにより歴史を前に動かしてきた。本インタビューの最終回でも取り上げるが、人類を自然法則から解放する「次なる革命」もまもなく訪れると、ハラリは予測する。
今回NewsPicks編集部は、国際ジャーナリストの大野和基氏とともに、ハラリの自宅を訪ね、2時間のインタビューを実施した。
人間の幸福とは何か、なぜ民主主義は機能しなくなったのか、そして、未来の人類はどのような現実に直面するのか──今、世界で最も注目される歴史学者から、「世の中の見方が変わる」未来予測が披露される。

虚構の奴隷になってはならない

──あなたは著書『サピエンス全史』で、お金や国家、法人、人権といった「虚構」を信じる能力が、ホモ・サピエンスを今日の地位にまで押し上げたと指摘しています。我々にとってお金や国家は当たり前の存在ですが、これらが「虚構」と気づいたとき、世界を見る目はどのように変わると思いますか。