【新】生産性が劇的に向上。マネジメント力を上げる運動術

2016/12/5
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では、毎週注目すべきイノベーターたちが、時代を切り取るテーマについて見解を述べる。
第55回は、元トリンプ・インターナショナル・ジャパン社長の吉越浩一郎氏と、エステー社長の鈴木貴子氏が登場する。
テーマは、経営者の“運動”論だ。
すべてのビジネスパーソンにとって、心身ともに健康な状態を保つことが重要であることは言うまでもない。健全な身体は高い生産性や正確な判断に不可欠で、仕事のパフォーマンスにダイレクトに影響するからだ。
最近話題になっているリンダ・グラットン氏の著書『ライフ・シフト』では、今後先進国に生きる人の約半数が100歳まで生きると書かれている。健康面が人々の「持ち時間」を規定し、人生において成し遂げられる仕事の大きさを決めるといってもいい。
特に企業トップであれば、健康面が業績に与える影響は計り知れない。
そのせいか、NewsPicksでおなじみの実業家の中にも「運動」を習慣にする人は多い。たとえばインテグラル社長でスカイマーク会長の佐山展生氏はフルマラソンを走り、実業家の堀江貴文氏もアイアンマンレースを完走している。
そんな中、今回登場する2人は、まさに自身の健康が会社の業績に直結すると考え、多忙な中、徹底して運動を続けてきた経営者たちだ。
吉越浩一郎氏は2006年までトリンプ・インターナショナル・ジャパンの社長を務め、現在では講演や文筆活動を行っている。
2007年には、仕事を効率化して労働時間を減らすことを提唱した『「残業ゼロ」の仕事力』を出版し、大きな話題を呼んだ。過重労働が社会問題化し、政府が「働き方革命」を叫ぶ昨今、吉越氏の考え方は時代を先取りしていたと言えるだろう。
60代後半になった現在でも、週2回のパーソナルトレーニングと、毎日ウォーキングを習慣として行なっている。
一方の鈴木貴子氏は、消費財メーカー・エステーの創業家に生まれ、2013年より社長を務める(以前「イノベーターズ・ライフ」に登場し話題を呼んだ、鈴木喬会長の姪にあたる)。
150cmそこそこの小柄な身体とは裏腹に、60kgのバーベルを笑顔で持ち上げる、とんでもない筋力の持ち主だ。
もともと、そこまで運動の習慣はなかったという鈴木氏。しかし、社長就任後に意識を改め、今では「よく食べ、よく運動し、よく寝る」生活を実践している。
そんな2人に、仕事の生産性を最大化するための生活習慣について語ってもらった。年齢の制約を超えた強靭な肉体を持つ2人の、徹底的に磨き込まれた生活習慣から、ビジネスマンが学ぶことは多いはずだ。
対談の冒頭では、吉越氏が「能力・気力・体力」からなる三角形の図表を示す。
仕事のパフォーマンスを上げるためには、日々の業務ですり減りがちな三角形の面積を維持し、さらには大きくしていくことが必要だという。
そして、この三角形を拡大するためには、長時間労働を避けるなどの自己管理が不可欠だと吉越氏は主張する。
鈴木氏もその意見に同意し、社長就任後取り入れた“ある習慣”について語り始める。
トレーニングを初めてから1年で、男性でも難しい60kgのバーベルをあげられるようになった鈴木氏。
もっとも、多忙な社長業ゆえ、まとまった運動は週末に限定しがちだ。だが、それではウィークデイのエネルギー保持がやや不足となる。そこで鈴木氏は、「ながら運動」を勧める。
吉越氏もそれに頷き、多くのビジネスマンが明日から始められる「ながら運動」の方法論を披露する。
筋トレ、ダンス、ピラティスなどを継続的に行う鈴木氏。運動が仕事のパフォーマンスに与える影響について言及する。
運動の時間は、日頃から考え抜いている経営課題から解き放たれる気分転換であると同時に、ダンスやウォーキングなど軽い運動中に、思わぬ仕事のアイデアが浮かぶことも多いという。
吉越氏はその意見に重ねる形で、「仕事でくたびれ果てていては運動もままならない」と、自身が社長時代に行ったある社内改革について言及する。
「バリバリ働くのではなく、サクサク働かないと」と語る吉越氏。仕事のパフォーマンスを上げるためには、投入時間増やすのではなく、時間当たりの生産性を高めることが不可欠だという。
それを実現させるため、自身が取り入れているさまざまツールや生活習慣について、具体的に説明する。
鈴木氏も納得した、その中身とはどのようなものか。
2人の話題は食事や睡眠へと移る。意見が一致したのは、「太るから食べる量を減らす」ことは避けるべきということだ。
吉越氏は「食事制限をしている人は、縮小均衡に向かい、人間の器が小さくなる」と断言する。
鈴木氏も笑いながら、健康を維持するために取り入れている食生活を披露し、「こうすることで、心も体も喜んでいる気がする」と、成果を語る。
(予告編構成:野村高文、本編構成:宮本恵理子、撮影:鈴木愛子、バナーデザイン:名和田まるめ)