(Bloomberg) -- スマートフォン向けゲーム「ポケモンGO」の米国でのヒットを材料に、開発力の高さがあらためて見直され、売買代金が記録的な高水準に膨らんだ任天堂株。株式投資の世界で著名デイトレーダーとして知られる個人投資家も参戦し、株価変動の激しさに拍車が掛かった。

任天堂の売買代金は前週末8日に476億円だったが、週明け11日は1470億円と3倍に急増。12日は3088億円、13日は2284億円、14日には4303億円まで膨らんだ。今週の任天堂株は、4日連続で東証1部の売買代金トップ。2000年以降の東証1部銘柄の1日当たり売買代金の記録としては、14日が3位となった。12日も6位、13日は14位。

2000年以降の東証1部銘柄の売買代金歴代上位は、1位が13年5月の東京電力ホールディングス(4456億円)。ソフトバンクグループ(4314億円、05年11月)、任天堂(14日)、みずほフィナンシャルグループ(3765億円、05年11月)、新日鉄住金(3202億円、07年)と続く。

大和投資戦略部の石黒英之シニアストラテジストは、「市場の期待と真逆のことが起きると、そのサプライズによる見直し買いや見切り売りという投資行動につながる。任天堂は良い方向にサプライズが起きた」と指摘。過去10年あまりの任天堂は業績、株価両面で低迷していたが、「据え置き型からモバイルやアプリで稼ぐスタイルにかじを切り始めた。ポケモンはその最初の成功例になるかもしれない、との期待が出ている」と言う。

また石黒氏は、売買代金は「投資家の先々の期待・失望を表す体温」とみている。歴代上位の東電は東日本大震災による福島第1原子力発電所の事故、ソフバンクは小泉政権による郵政解散後の中小型株乱舞と予想外の事態で体温が上がった結果とし、今回の任天堂も含め「ヘッジファンドや機関投資家、個人と全員参加型相場のときに起こる」と話した。松井証券の窪田朋一郎シニアマーケットアナリストは、任天堂株の活況について「個人も盛り上がっている。過去でいうとガンホー・オンライン・エンターテイメント、ミクシィ以来だ」としている。

株式投資の世界で著名デイトレーダーとして知られる「CIS」氏は12日昼、自身のツイッターで「某ポケモン銘柄VWAP超えで吸い込まれるように買ってしまった」とつぶやいた。12日の任天堂株は午後に上げ幅を広げ、13%高の2万2840円と連騰。ヒストリカル・ボラティリティの10日平均は、14日時点でリーマン・ショック直後の08年11月以来の高さに達した。

CIS氏は、ブルームバーグ・ニュースの電子メールによる取材に対し、12日の取引について「ツイッターに書いたように、後場始まってすぐ2万1000円ぐらいのVWAPを超えてきたぐらいに買った。数万株」と回答。参戦の動機はVWAP(出来高加重平均取引)など値動きだとし、「時価総額が大きく、ある程度の金額を投資できるのも私にとっては良い」と説明した。

さらに同氏は、任天堂株については「大して勝ちパターンとかもなく、いつも通り値動きに従って売買するだけ」「勝てる自信も特にない」などとも言及している。

松井証の窪田氏は、CIS氏について「個人投資家の間では日本のトップ3に入る。ミクシィとかガンホーを盛り上げた知名度で言えばナンバーワンだ」とし、同氏が任天堂株についてツイートしたことで「個人の間での知名度が一気に高まった」との見方を示した。

14日の任天堂株は、前日比16%高の2万5300円と大幅反発。終値ベースで11年2月21日以来、およそ5年5カ月ぶりの高値となった。

(データやチャートを更新、CIS氏のコメントを追記します.)

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