イノベーターズ・トーク 第32回
【新】62歳佐山展生、50歳山本昌が語る「生涯現役論」
2016/6/27
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたち。彼らは今、何に着目し、何に挑もうとしているのか。連載「イノベーターズ・トーク」では、イノベーターが時代を切り取るテーマについてトークを展開する。
第32回は、プロ野球・中日ドラゴンズの元投手で野球解説者の山本昌氏と、インテグラル会長の佐山展生氏が登場する。
テーマは「生涯現役論」だ。
山本氏は言わずと知れた、プロ野球界の「レジェンド」だ。
50歳まで現役生活を続け、最多勝3回、最優秀防御率1回、沢村賞1回といった数々のタイトルを保持。ノーヒットノーランや完投勝利など、数々の「最年長記録」を持つ。
通常、プロ野球選手のピークは20代後半といわれる。しかし山本氏はそこから20年以上も、第一線の選手として投げ続けた。
昨シーズン限りでユニフォームを脱いだが、「今でも現役で勝てる自信がある」と言い切る。
その背景には、限られたチャンスをものにする勝負強さと、仕事に対するあくなき探究心があった。
生涯現役──といえば、実業界ではスカイマーク会長の佐山展生氏がその哲学を貫く一人だろう。
インテグラルやスカイマークなど複数企業の代表を務める傍ら、一橋大学で教べんを執り、プライベートではフルマラソンを踏破するなど、御年62歳とは思えないほど精力的な活躍ぶり──。
自らを、「自分はまだ、ホップステップジャンプのホップにしかいない」と言うほどだ。
平均寿命が伸び、50歳、60歳になっても活躍し続けられる現代。二人の生き様からは、ビジネスマンにとっても有用な「選手寿命を伸ばす方法」が見えてくるはずだ。
子どものころからエースだったかと思いきや、「中学校まで補欠選手だった」と語る山本氏。
高校でも甲子園には縁がなく、プロのスカウトが注目する選手ではなかったという。
そんな中、数少ないチャンスをつかみ、プロへの足がかりを得る。佐山氏が「山本さんには神様がついているのかもしれない」と驚嘆した、その方法とは。
中日ドラゴンズに指名され、プロの門を叩いた山本氏。しかしキャンプ初日にして、「来てはいけないところに来てしまった」と絶望したという。
周囲との実力差に愕然としたのだ。
その予感どおり、最初の4年間は結果を残せず、クビ同然のような形でアメリカ留学が言い渡される。
しかしそこで目にしたある光景から、プロ野球人生を変える武器を手に入れる。
なぜ山本氏は、大きな壁に直面しても、反骨心を持ち続けて結果を残すことができたのか。大逆転のエピソードが語られる。
山本氏のプロ生活について話を聞き、「チャンスは待っている人には来ない」と評した佐山氏。その上で、「この野郎」と何回思えるかが、その人の成長度合いを決めると説く。
それに同意する山本氏。佐山氏はここで、ドキッとする質問を投げかける。
「山本さんも、監督に『この野郎』と思ったことも多いんじゃないですか?」
厳しいことで有名な星野仙一監督に鍛えられた山本氏。その答えとは──。
30年間もプロ生活を続けた山本氏。話題は、「仕事に対する探究心を持ち続ける方法」に移る。
山本氏は、「エリートとしてやってこなかったからこそ、自分の伸びしろを信じている」と真意を語る。
そして研究を重ねる中で、具体的に身につけた技術を語る。佐山氏が「まさに求道者(ぐどうしゃ)と呼ぶのにふさわしい」と驚いた、その中身とは。
山本氏は現在50歳。しかし野球解説者としては1年目で、「現役時代に見えなかったことを、日々勉強している」と語る。
佐山氏は励ますように、「今は常に、10年後よりも10歳若い」と語る。50歳になっても「まだ50歳」だと。そして、過去しか見ずに、「もう50歳になってしまった」と思う人があまりに多いと嘆く。
山本氏はそれに同調し、「何歳になっても、やればできる」と語る。「生涯現役論」の締めくくりとして、二人の「年齢」に対する見解が披露される。
*目次
第1回:パッとしない下積み時代。つかんだワンチャンス
第2回:周囲との差に絶望。クビ寸前からの大逆転
第3回:「この野郎」と何回思えるかが、成長のカギ
第4回:9割の力で投げれば、打たれない
第5回:何歳になっても「10年後より10歳若い」
(予告編・本編構成:野村高文、撮影:遠藤素子、デザイン:名和田まるめ)