【勝間和代】長年の「汚部屋」生活から脱却、恋人もできた

2016/6/18
「私の始末書」第3回には、経済ジャーナリストの勝間和代氏が登場する。

私は「汚部屋」に住んでいた

──勝間さんはかつて汚部屋に住み、今では見違えるほどきれいにした経緯がありますが、そもそも、なぜ、部屋を汚くしてしまったのか。
私の部屋は、引っ越すたびにキレイにはなるんです。でも、引っ越しから3年たつと、怪しくなり、5年もたつと、完全に破綻する(笑)。それで5年で仕方なくまた引っ越すの繰り返しなんです。
──効率追求のためにしていたまとめ買いが、かえって非効率を起こしていた、と。
アマゾンでまとめて買って、ボコボコと箱が積み上がっていき、もう置く場所がない状態でした。瓶と缶と生ゴミそれぞれ専用のゴミ箱があるのですが、その全部が何週間も溜まったままで、2度と部屋から出ていかなかった。
──洋服なども、溜まる一方だったのか。
カシミアのコートなども買ったのですが、3回くらいしか着ないでどんどんため込んでしまう。ベッドの回りは資料、DVD、洋服が散乱して、よく踏んづけては、転んでいました。
──家政婦さんが掃除してくれていたのでは。
その家政婦さんに、掃除に来てもらっていたのも部屋が汚くなった原因のひとつです。こちらは、家政婦さんがやってくれるから、自分はまあいいや、と思ってしまうので。
でも、彼女はわたしが散らかしたモノは責任上、片づけられませんよね。必要なものも捨ててしまう可能性があるので。だから、彼女は毎回、モノの間を縫うように掃除機をかけていましたね。
勝間和代(かつま・かずよ)
評論家、経済ジャーナリスト。早稲田大学ファイナンスMBA、慶応大学商学部卒業。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。現在、株式会社監査と分析取締役、内閣府男女共同参画会議議員、国土交通省社会資本整備審議会委員などとして活躍中。

ものは陳腐化する

──汚部屋で暮らす弊害とは。
やはり汚部屋の最大の弊害は、仕事でも、私生活でも、積極的になれないことです。部屋が汚くても「こなし仕事」ならできる。でも、それ以上のチャレンジは、しようとしてもそのための気力と空間がないのです。
だからでしょう。わたしの友人には「断捨離」の専門家が複数いるのですが、彼女たちからは一斉に「どうにかしろ」と3~4年前から言われ続けてきました。
──やっと汚部屋脱出を決意され、モノを捨てるのは、つらかったか。
捨てること自体はあまりつらくなかった。葛藤もあまりありませんでした。でも、重い腰をあげるのがたいへんでした(笑)。汚部屋に住んでいても、差し迫った不自由はないですから。
家の中、すべてがこの状態だったという。
仕事をするスペースもこの有様。
断捨離後、ご覧の通りすっきり。今では右端にあるパソコン台さえないと言う。
現在は写真の状態より、もう少しキレイになっています。ですので、家政婦さんも必要ありません。自分で簡単に掃除できますから。
部屋では毎日、ルンバが走り回っています(注:ルンバ=おそうじロボット)。
──もうモノは溜まらないか。
溜まりません。たとえば、いまは新しい食器を買うと、以前の食器を、その分捨てます。洋服も同様です。在庫はもちません。毎日、洗濯すれば下着類も5着だけで十分です。
──写真を見ると、部屋に空間がある。
本棚の中も、本がわずかしかありません。スペースがもったいないというと、もったいないですが。でも、とてもモノを探しやすい。
タンスにしても同じこと、洋服も下着も簡単に見つかります。
以前は服も、化粧品も、管理していませんでした。でも、いまは化粧品を買ったら、前のモノはしまってしまい、少しときをおいて、使わなければどんどん捨てます。
──日本人には、捨てることへの罪悪感もあります。
使わないでいるのは、捨てているのと同じです。
──とはいえ、捨てることに踏ん切りがつかない人も多いのではないか。
わたしは現在、だいたい2週間使わなかったモノは、どんどん捨てます。また、物置に仕舞うモノは、確実に1年以内に使う機会があるものだけにしています。具体的には雛人形とクリスマスツリーですが、物置もそれ以外のモノはすべて捨てました。
モノは溜め込んでも、デザインも性能も、どんどん陳腐化します。昔のガジェットなど持っていても、いいことありません。

汚部屋の住人は内面も汚部屋

──勝間さん自身、捨てて後悔したモノはあるか。
モノを捨てる踏ん切りがつかないなら、まずは過去3か月使わなかったモノを捨てたらいいと思います。それでも、名残惜しいときいうなら、2週間くらいは特別なスペースに置き、踏ん切りがついたらゴミ箱へ直行させることです。
私の場合も、特別な鍋とエプロンは、やっぱり使いたいなと後から思い、そのスペースに掘り出しにいきました。いったんは、別のどこかに溜めればいいわけです。そうすれば、迷う時間も減り、生活も効率化します。後悔もしません。
捨てることのデメリットはありません。いまわたしの家は、大好きなホテルのようにキレイです。
──自分が書いた本も捨てて、未練はなかったのか。
ないですね。自分が書いた本は国会図書館に行けばありますから。もっとも、本はすべて捨てたのではなく、20~30冊は残してあります。
ちなみに、捨てた洋服にも未練はないです。昔、お気に入りでも、もう価値は下がっていますから。
繊維は数年たつと弱ってきて、価値も下がる。すぐには変えられないでしょうが、古い服には価値がないと考えを変え、少しずつ捨てていけばいいのです。
──汚部屋を脱出し、「恋人もできた」と本(『2週間で人生を取り戻す! 勝間式汚部屋脱出プログラム』)にある。円満ですか。
おかげさまで、仲良くやっています(笑)。以前は人を呼べるような部屋ではなかったので、どうしてもお付き合いに積極的になれませんでした。みんな部屋が汚いと、無意識にお付き合いを遠ざけてしまうものです。
そして、人を部屋に呼べない人は、ふだんからどこかオドオドしている。だから、ますます人からお呼びがかからない。汚部屋の住民は、どことなく自信がないと感じます。内面も汚部屋なんですね。
──汚部屋の住民は、心の中も汚部屋、だと。
心の中が整理されていないという意味です。つまり、優先順位がつけられない、捨てていいものと、そうではないものの区別もつかない。
その内面が態度に現われてしまうのです。男女関係なく、どことなく態度に現われます。たとえば、洋服選びでも、組み合わせがごちゃごちゃになっていたりします。  
中編へつづく。
(聞き手:佐藤留美、野村高文、構成:栗原昇、撮影:遠藤素子)