【八代尚宏】同一労働同一賃金は「雇用流動化」の切り札だ
2016/06/13, NewsPicks編集部
最後の人材バブル Part2
【八代尚宏】同一労働同一賃金は「雇用流動化」の切り札だ
2016/6/13
日本型雇用は“残酷”
──同一労働同一賃金が正社員にも導入されれば、日本も「人材流動化」が進みますか。
八代:同一労働同一賃金であれば、転職しても賃金が大幅に下がることが少なく、特定の会社にしがみつく必要もないため、雇用の流動化が進みます。
日本的な雇用慣行は一見、人に優しいように見えて、“残酷”な面もあります。実際、東京とロサンゼルスのサラリーマンの意識を比較した調査では、アメリカ人のほうが会社への満足度が高いという不思議な結果がでました。
雇用が流動化しているため、上司に評価されないなど、満足度の低い会社から転職する自由があるからです。
また、日本では、雇用保障の代償に、会社の命令で頻繁な転勤を余儀なくされることがサラリーマンの宿命です。これはしばしば家族が離れ離れに暮らすことを強いられる、欧米では理解され難い“非人間的”な慣行です。
同一労働同一賃金は、年功昇進の保障の代わりに、自分が選んだ仕事や働き場所を選べることに結びつきます。労働組合を通じた賃上げ交渉の代わりに、正当な評価を受けられなければ「辞めます」といえる。
いわば労使交渉を個人でやる仕組みで、今後の労働力減少時代にはより有効となります。
newspicks.com
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コメント
注目のコメント
人材バブル特集、今回は八代尚宏教授に話を聞きました。
すでに多くの方々がご指摘されていますが、同一労働同一賃金に関しては、以下のような複数の問題が残ります。
・「同一労働同一賃金」というときの〈同一〉なる区分をいかに、そして誰が設定しうるのか、本当にその「基準」は設定可能なのか
・若年者の賃金をいかに向上させるか
・移民労働者の処遇についていかに考えるか
・そもそも同一労働同一賃金を実現させる上での「実際的な困難」をいかに乗り越えるのか
議論はまだ始まったばかりです。
本特集を通じて少しでも、この問題を考える上での素地を提供できればと考えています。論点整理として参考になる。一方で、三上さんが整理してくださっているような側面もなる。個人的には、大筋で問題意識に対しては同意で、解決に関してはここまで楽観的ではない。
昨日下記でコメントしたが、やはり日本の流動性の低さを中心とした雇用環境は、日本の競争力に寄与しているとは思えない。なお、同一賃金同一労働をどのレベルまで、どうやって推し進めるかという部分は、現実論として困難だと思っており(昨日の記事であったよう判例が積み重なっていくことは、一方で重要)、それよりは弾力性がある報酬体系のほうが重要で、それに基づいて各人が判断すべきというスタンス。各人が判断できるような弾力性というか企業間の差が広がれば、流動性が結果として上がっていくと思う。
この論点において、スキルを持たない新卒が懸念として出てくるが、個人的にはそこはあまり問題視していない。というのは、昨日もコメントしたように数ヶ月単位の短期を見ているわけではなく(またそこに関しては、解雇規制などで一定整備できる)、現実論としても長期にわたって成果が出せなかった人より、スキルがないゆえに今成果を出せないがトレーニングによって出せる人のほうが期待値が高いとも思っている。あとは、その現実の上で、大学が増えすぎているというのは現実としてあると思い、ドイツのマイスター制度と職業訓練学校を併せたような、大卒ではなくちゃんと稼げる道(技術と評価)をもっと整備することが重要だと思っている。
https://newspicks.com/news/1603825?ref=user_375403