【クルーグマン】私が「4%のインフレ目標」を訴える理由
2016/05/25, NewsPicks編集部
イノベーターズ・トーク Part3
【クルーグマン】私が「4%のインフレ目標」を訴える理由
2016/5/25
予告編:ノーベル賞経済学者クルーグマン、黒田日銀に物申す
第1回:日本は「デフレの重力」から抜け出していない
第2回:2000年代、日本は何をすべきだったのか
日本が陥る「不快な均衡」
──次に黒田氏は「デフレ均衡のもとで、予想インフレ率も低水準にとどまっていた。その結果、名目金利から予想インフレ率を差し引いた実質金利が高止まりすることになった」と説明しています。あなたは「デフレ均衡」をどう捉えますか。
クルーグマン:景気の不振がデフレを引き起こし、そのデフレが実質金利を高止まりさせるので、経済は不振のままになります。ただ興味深いことに、日本の場合は経済状況がどんどん悪化したわけではない。単にtrapped(ある状態に陥って身動きができない状態)の状態に陥ったのです。
いま、世界全体で似たような動きが起きています。自然利子率よりも高い金利がデフレにつながり、そのデフレが金利を高止まりさせている。それが「デフレ均衡」(deflation equilibrium)です。
私はしばしば、この現象を”sour equilibrium”(不快な均衡)と呼びますが、日本はまさに教科書的な実例です。
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コメント
注目のコメント
確かに完全雇用にはなっていないし、賃金も上がっていない。でも金融政策、財政政策よりも必要なのは規制緩和。
雇用の話は全体として、の話であって、産業ごとに細かく見たらどうだろう。ITに関しては明らかな賃金上昇が見られる。この要因は2つあって、企業のIT投資予算が増えている事、ITを使った新しいサービスが生まれている事。シンプルに言えば、ITエンジニアになれば給料は上がる。
ただし、IT分野は競争も激しいので、産業に従事する人間の数が事業のスピードに追いついていないため、コストダウンの観点よりもリソース不足の観点から海外へのアウトソーシングが増えている。これでは国内の雇用は増えません。
もっとIT分野に人を送り込むべきです。若手ほどそうすべきでしょう。
そのために政府がなすべきは規制緩和です。「アベノミクスのパッケージの欠陥は、財政出動という形で日銀に十分なサポートを与えていない点」というのはその通りで正しいと思います。ここでECBもアグレッシブな金融緩和を実行しているのに財政政策のサポートがないことが指摘されていますが、ユーロ圏は金融政策をECBに一元化、財政政策はユーロ圏内の各国ごとにしているので、構造上致し方ない部分が大きいです。それに引き換え日本は財政金融政策を一体化して実行できる状態にあるわけですから、早く実行すべきというのは当然の話ですね。
それと日本は完全雇用に近づいているのはたしかですが、完全雇用にあるわけではないでしょう。「失業率の数字は労働市場の状況を知るにはあまりいい指標ではない」と指摘されていますが、少なくともこの失業率の数字ですらまだ低下余地があると思います。
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