軽自動車は過当競争。国全体のリソース最適化を目指せ
2016/05/17, NewsPicks編集部
特集「もし、カルロス・ゴーンが三菱自動車を経営したら」第2回
軽自動車は過当競争。国全体のリソース最適化を目指せ
newspicks.com
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注目のコメント
特集第2回はローランド・ベルガー日本法人代表取締役社長・長島聡氏のインタビューです。
欧州調査機関による世界の業種別R&D費用ランキングを見ると、自動車・自動車部品業界の1社平均はダントツトップの約5億6540万€(2013年)で、2位の通信業界(3億9850万€)を大きく引き離しています(ちなみに3位が航空・防衛業界、4位が石油・ガス業界、5位が医薬品・バイオテクノロジー業界と続きます)。
それもそのはず。自動車業界は近年、自動運転から燃料電池車・ハイブリッド車といった各種パワートレイン、「つながるクルマ」など、実に多方面での開発を迫られており、これらは超先端技術の開発が求められます。それだけに莫大な研究開発費用を必要としているわけです。
こうした中、研究開発費が年間1兆円を超えるトヨタですら、開発リソースが逼迫し、設計手法の改革(TNGA)を迫られました。ましてや開発費が10分の1以下の三菱自動車は、開発車種の取捨選択が、そもそもできていないように見受けられます。
今回はそういった文脈で、三菱自動車による燃費不正を読み解きます。個人的な見解に過ぎないが、今回の軽自動車燃費不正の動機は非常に解りやすい。リーマンショック後の世界経済の後退の中で、国内軽市場へ回帰を目指したメーカー間の過当競争が生まれた。その中で、古い「i」のエンジンを改良・流用することで収益性を伴った軽自動車事業拡大を目論んだ日産と三菱の合弁、NMKVの戦略は大きく狂ったのだ。二律背反する収益性と燃費性能の両面が求められる中で、三菱は不正に逃げ込んだのだ。不正に逃げる企業文化が根底にあり、自浄能力が不在であったことは疑うところは無いだろう。
しかし、未だ謎は多いのである。25年にもわたり法令違反を続けてきた動機は未だよくわからない。軽を超えて、国内モデルでは「RVR」への疑惑が拡大している。益子会長が記者会見で強調した、海外販売モデルには不正はなく、疑われる9モデル全てが国内モデルであるということ。何故、国内モデルだけに不正文化が受け継がれていったのか。ここには、問題本質が隠されている可能性が高い。
メディアはすっかり「日産-三菱提携」の行方に目を奪われてしまった。不正の本質に切り込んだ報道が既に不在である。今回の不正というより、開発のなかでも規制対応という見えにくい部分について分かる良記事。なお、職業柄、多くのレポートに目を通しているが、自動車や製造工程の具体論についてローランドベルガーや三菱総研は、やはりすごいと思う。
本題に戻ると、規制が各国で異なるため、様々な対応が必要。細かく対応する部分もあれば、一番厳しい国に対応させて横展開(コスト高というマイナスサイドもある)、またはマツダは米国でディーゼル投入していないがそういった意思決定をする場合もある。そのなかで、規模・プラットフォーム・ブランドのバランスは重要で、何度もリンクを張っている気がするが、下記記事も必見。
プラットフォームという言葉は昔からあるが、VWのMQBが車台だけでなくレゴブロック的に組み合わせるという発想で、一段変化した。ただ、トヨタと世界で生産台数トップを争うVWの規模でも、結果論としては利益率はトヨタよりだいぶ低く、想定したほどうまくいかなかったというのが実態ではないだろうか。むしろ、スバルやマツダのように、ブランドコンセプトを明確にして、そこに対応できるプラットフォームを開発して横展開するくらいの「サイズ感」が今のところ成功している印象はある(定量的に検証したものではないが)。
なお、規模の経済は自動車では一定ある。ただそれが明確に優位に効くのは肌感覚で2兆円くらいではないだろうか?そこまでいくと、逆にモデル数や開発ポイントを絞り込んで一定対応はでき、むしろもっと規模が大きいところと比較して開発費ゆえに固定費比率が高い部分を、ブランディング(車だけでなく販売・サービス含め)などで対応することのほうが戦略としては筋が良い印象(そこで成功している富士重の売上が過去数年で2兆円→3兆円と成長したので、そこから上記の2兆円が肌感覚として出てきた)。そのなかで軽もやってというところが三菱は厳しかったのかなぁと事後論ではあるが思う。でもそこで何をやらない・やるを決めることこそが経営であり戦略。
https://newspicks.com/news/1444796?ref=user_100438