日本交通川鍋会長「ライドシェアは企業の責任を果たしてない」

2016/3/15
各国で交通のあり方を変えつつあるライドシェア。しかし、規制産業であるタクシー業界からは「我々がルール内でビジネスをするなか、グレーゾーンのライドシェアが賞賛されるのは不公平だ」との声が挙がっている。業界団体、東京ハイヤー・タクシー協会の会長を務める、日本交通の川鍋一朗氏が、ライドシェアの法的・道義的な問題点を指摘する。
「おカネだけでは解決しない」
──2015年10月、安倍首相が「過疎地での自家用車活用」の検討を指示するなど、ライドシェアに対する期待感が高まっています。この状況をどうご覧になりますか。
川鍋 ライドシェアの推進派と反対派、どちら側にも言い分があると思いますが、タクシー側の大義をしっかりと示す必要があります。流行だからといってなんでも取り入れていいのか。私の役割はそこに一石を投じることです。
タクシーもライドシェアも、「人が車を運転して、お客さまを目的地までお送りする」という点は変わりません。問題は企業としての社会的責任です。事業を営み利益を得るには、必ずリスクとリターンがあります。しかし、プラットフォーマーと称してマッチングだけをする事業者は、リターンに見合うだけのリスクを取ろうとしていません。
たとえば、事故の際の責任です。交通事故が起こった場合、プラットフォーマー側は「法的な責任を取らない」と明言しています。事故が起きた際はドライバーと乗客の自己責任で、起きた損失は保険でカバーすればいいとしています。
保険が下りておカネは入ってくるかもしれませんが、万が一乗客が亡くなったときに、遺族は「安い交通手段を使った方が悪かった」と自分たちを責めるのでしょうか。どこに心のやり場をもっていけばいいのでしょう。
それで本当にいいのでしょうか。
「おカネだけでは解決しない」というのが、88年間、旅客自動車運送事業を営む中で、時には残念ながら事故を起こし、そのたびに誠心誠意対応してきた私たちの思いです。
ライドシェア側は、バックグラウンドチェックや相互のレーティング(評価)によって安全性が高められると主張しています。しかしこうした仕組みは、タクシーでも取り入れていますし、取り入れることができます。どんなに安全性が高まろうが、事故がなくなることはないでしょう。問題なのは、事故が起きたときの議論がきちんとなされていないことです。
プラットフォーマーが責任を取らないのは、日本のビジネスの慣習や国民的感情を鑑みると、受け入れにくいと思います。私はシェアリングエコノミー自体に文句があるわけではありません。企業の社会的責任という点で疑義を呈しているのです。
社会保険も最低賃金もない