ミサイル発射までの経過を振り返る
【コメントPicks】北朝鮮ミサイル発射実験。ピッカーの反応は
2016/2/8
昨日午前、北朝鮮から飛び込んできた「ミサイル発射実験」の一報。安全保障環境を揺るがすこのニュースに対して、NewsPicks上ではどのような議論が交わされたのか。ピックされたニュースとコメントをキュレーションしてお届けする。
挑発行為は看過できない
2月7日午前、北朝鮮が「人工衛星」と称する、事実上の長距離弾道ミサイルの発射実験に踏み切った。
2012年12月以来、6回目の長距離ミサイル発射。現時点で落下物などの被害は確認されていないが、安倍首相は「ミサイル発射を強行したことは断じて容認できない。国際社会と連携して毅然(きぜん)として対応していく」との声明を発表した。
12時過ぎに第一報が報じられて以来、NewsPicksでも多くのコメントが投稿され、経済制裁の是非、国際情勢の変化、憲法改正への影響など、数々の視点が提示された。
こうした北朝鮮の挑発行為を看過できないだろう。発射は既定路線、今後も続けるだろう。政府は制裁強化と繰り返すが、実効ある制裁を行うためには日米韓の足並みをそろえることが第一、そのうえで金融制裁、軍事的な圧力を強めるしかない。
2007年以降、6者協議(日米中韓露+北)が行われていない。その後、北朝鮮の動きはわかりにくく、潜在リスクは高まっている。北朝鮮にとって、日・中・韓の足並みがそろっていないここ数年は、プラス材料になってしまっている。北抜きの5カ国が早急に足並みを揃わせるべき。
いまの経済情勢なども考えれば、これが日本の「国防」や「憲法改正」に向けた大きな節目になるのは、間違いない。
本記事ではピックされたニュースとピッカーのコメントから、北朝鮮がミサイル実験に踏み切るまでの経緯を振り返る。
背景には核能力の向上
北朝鮮にミサイル発射実験の可能性があるとのニュースが伝えられたのは1月27日。政府筋によれば、衛星写真による画像分析から、北朝鮮北西部の東倉里にあるミサイル基地で発射準備が進めていることが確認された。
その動きを受けて政府は、NSC(国家安全保障会議)の閣僚会合を開き、海上自衛隊のイージス艦などによる警戒・監視を強化する方針を固めた。
2月2日には北朝鮮政府が、IMO(国際海事機関)に「今月8日から25日の間に地球観測衛星を打ち上げる」という通告を行い、ミサイル実験が初めて公式に明かされた。
このニュースはNewsPicksでも反響を集め、国際情勢が専門のプロピッカーからも「北朝鮮の核能力の向上」について懸念や、「日米・米韓の安全保障体制の試金石となる」との指摘があった。
北朝鮮が核開発や弾道ミサイル開発を「本気」で進めていることをあまり過小評価しない方がいい。一回の核実験、ミサイル発射実験で得られるデータは、その後の開発にとって非常に貴重なものであり、政治的、外交的なパフォーマンスという以上に、開発をさらに進めるためのステップでもあるからだ
今回の通告内容は2012年12月のミサイル実験(衛生打上げ)と類似しており、技術的な新規性よりも信頼性の向上を狙った実験といえる。今回注目すべきは、2014年12月に締結された日米韓情報共有体制がどのように機能するかだ。
現状は日米・米韓それぞれに存在する軍事情報包括保護協定(GSOMIA)をもとに得られた情報を、米国を経由して日韓が情報共有できるようにする仕組みとなる。これが危機時にも運用できるかどうかを測る絶好の機会となる。
米中の意図を読み解く
翌3日には防衛省が、ミサイルが通過する可能性がある東シナ海などに海上自衛隊のイージス艦を配備することを発表。また、自衛隊にミサイルの「破壊措置命令」が発令された。
出典:【北朝鮮ミサイル予告】日本は迎撃態勢、イージス艦・PAC3を配備
5日には、発射台の燃料貯蔵庫にタンクローリーが配置された動きが確認され、燃料注入が開始された可能性がある、と報じられた。
出典:発射台にタンクローリー=北朝鮮ミサイル基地、最新画像-米研究所
6日には、米中首脳が電話会談をし、北朝鮮の行動を「挑発」と表現し、「国連安保理決議を含む、断固とした国際的な対応が必要」との姿勢を明らかにした。
この動きについては以下のような、米中の意図を読み解くコメントも投稿された。
米国からすれば北朝鮮に対してというよりも厄介なのは中国が北朝鮮と手を組まれることでしょうから、けん制の意味でも国連安保理を名目として中国を積極的に北朝鮮への制裁措置に加えようとしている、というのが本当の意図ではないかと思います。
大国のエゴにだまされてはいけない。北朝鮮を怖い国だとしておいた方が米中などは利益があるのだ。北朝鮮を抑えるには米中が必要だろう、だから米中に対しもっと金を出せと言える。また北朝鮮の核武装阻止の話し合いをしながら日本の核武装は言い出しにくくなる。
気象条件が影響?
同6日には、北朝鮮政府によって発射予定が1日前倒しされ「7日から14日の間に打ち上げる」と通告された。
このニュースに対しては、気象予報士のピッカーから、ユニークな視点が示された。
明日は朝鮮半島上空の風が弱く天気も良いので、いわゆるロケットの打ち上げには向いている気象条件です。来週は低気圧の通過が見込まれており、打ち上げに絶好とは言えない日が続きそうということもあります。
「騒ぐ必要はない」との声も
そして本日、北朝鮮はミサイル発射実験に踏み切った。これについては、日本の安全保障環境に対して危惧する声が多い一方、「通常の発射訓練にすぎない」「とりたてて北朝鮮の衛星打ち上げを『ミサイル実験』と呼ぶべきではない」との反論も見られた。
これで何事かおきることはない。安心していい。これは通常の発射訓練だ。それぞれの国の思惑があって大騒ぎしているだけだ。
日本も年に何発もロケットと言う名の長距離弾道ミサイルを発射してわな。それを北朝鮮のものだけミサイルだと決めつけるのは単なるポジショントーク(原文ママ)
核実験との関連性は
ミサイル発射に対しては、光を当てる側面によって何通りに解釈できるが、気がかりなのは1月に行われた核実験との関連性である(北朝鮮政府は「水爆実験」と発表)。この時も中国・北朝鮮関係の変化、また北朝鮮の技術力の向上について指摘する声が上がった。
信頼できる筋の話として、北朝鮮が水爆を保有したことが習近平主席に報告され、激怒した習主席が北朝鮮の歌劇団の席につかず、歌劇団は帰国。その延長線上に今回の実験があると聞いた。すでに中国は北朝鮮を見切った可能性がある。それに備えて中韓は接近していると考えて良さそう。
水爆は原爆を起爆装置として使う爆弾。原爆はつくろうと思えばウランさえあれば比較的ローテクの力技でできるが、水爆はかなり精密な設計やシミュレーションが必要だ。もしミサイルに搭載可能なw88のようなテラーウラム型熱核弾頭が開発されてしまえば、世界のパワーバランスが変わってしまうだろう。
今回のミサイル発射についても、数々のピッカーが指摘するように、アメリカ、中国、韓国、日本と北朝鮮の関係の変化、そして北朝鮮の技術力向上が見て取れる。
そうであれば、1月の核実験と同じストーリー上で行われたことになり、アジア太平洋の国際情勢が、依然として北朝鮮に振り回されていることが、改めて顕在化したかたちだ。