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『スター・ウォーズ』は星いくつ? ファンと初心者が採点

2015/12/20
スター・ウォーズ_トップ
『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』12月18日(金)公開
解説
遠い昔はるかかなたの銀河系で…繰り広げられる壮大なSFサーガ。新たな3部作の第1作目となる本作は、『ジェダイの帰還』から約30年後を舞台とする。ヒロインは、家族を待ち続ける孤独なレイ。彼女の人生が、新型ドロイドのBB-8や、戦うことに疑問を抱く兵士フィン、フォースの暗黒面の担い手カイロ・レンらとクロスすることで一変。銀河系の命運をかけた戦いに身を投じるさまが描かれる。旧シリーズのルーク、ハン・ソロ、レイアをはじめ、ドロイドコンビC-3POやR2-D2、ウーキー族のチューバッカも健在。果たして、真のフォースに目覚める者とは。ホームをルーカス・フィルムからウォルト・ディズニーに移し、ハリウッドの寵児J・J・エイブラムス監督が描く新たな伝説が始まる。

 大室4

武田鉄矢現象

『スター・ウォーズ』新作公開は「村上春樹の長編新作発売」とか「ドラクエ○○発売」などと同じ「縁起物」として認識しています。

ファンは早くスター・ウォーズ節(?)を堪能したいと同時に、その「世界観」が維持されているか一抹の不安を持ちます。人気ゆえに無理矢理延長させられた挙句、失速していく週刊漫画のようになってなければいいなと。

結論から言うと今回のエピソードⅦ、「世界観の維持」には成功していると思いました。最初から息もつかせぬアクションで今までシリーズを観たことがない方も、まずはその世界観に参加させてしまう「バリアフリー構成」。

宇宙船はビュンビュン飛ぶし、不思議な生き物も出てくるし、ライトセーバーの決戦もあるし。「ファンが観たかった要素」は惜しげもなく散りばめられていて、その完成度が高い。

むしろ監督がルーカスからJ.J.エイブラムスに変わり「よりスター・ウォーズっぽくなった」ように思えます。

これは良く言えばエイブラムスの過去作へのリスペクトの賜物。悪く言えば「武田鉄矢はものまねの方がより武田鉄矢っぽい現象」というか。

ライブに来たら新作アルバムの曲ばかりでなく、往年のヒット曲を歌ってほしいタイプにお薦めです。

(C) 2015Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved

カイロ・レン(中央)と新ストームトルーパー
(C) 2015Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved

 中島4

エイブラムスさんの勇気とフォース

大変やと思います。こんだけファン多いと。世界中に熱狂的なファンがおられますよね、これ。濃い~ファンが。

これは何やっても突っ込まれるでしょ。しかもこのネット時代。映画の中身同様ぼんぼん炎上して当たり前。

でも恐れとったらなんもでけへん。この、「ファーストオーダー」のような巨大な圧力に果敢に立ち向かい、映画を完成にこぎ着けたのは監督の「フォース」によるもんとしか思えまへん。

J.J.エイブラムスさんの勇気とフォースをほんまに讃えたいと思います。

それはそうとあれですよね、まあこの映画の登場人物、危なっかしい状態でようギャグこいてはります。

絶体絶命のピンチの時にしゃべりっぱなしなんです、このおっさんら。七人の侍、こんなしゃべれへんでしょ。

でもあれかも。原因は「テンポ」にあるんかも、ですね。ぶんぶん飛ばす展開やし結果しゃべりっぱなしになってるんかもしれません。

全然飽きへん、眠ならへんからええねんけど、せっかくめちゃカネかけた凝りに凝った画面やねんからおっさんとしてはもうちょこっとじっくり見たいな、とはちょこっと思いました。

星3つに監督のフォースで1つ足されて星4つです。

レイ

左からレイ(デイジー・リドリー)、BB-8、フィン(ジョン・ボイエガ)

 佐倉2.5

萌えるオヤジ

前3部作、エピソードI「ファントム・メナス」から続くエピソードⅡ、Ⅲまでが、壊滅的に見るに堪えない作品だったし、オリジナル旧3部作をCGでしょーもないものにした「特別版」のせいで、私自身がダークサイドに堕ちかけたりもしたので、今回は少しほっとしました。

この「フォースの覚醒」は、日本でいえば歴代仮面ライダー大集合、ウルトラ兄弟勢揃い、ゴジラ映画のオール怪獣総進撃のよーな感じかなぁ。

私のよーなおっさんが支持してきた旧3部作のエピソードⅣ、Ⅴ、Ⅵ 好きには、とてもコンフォタブルな作品かも。松本隆さんの作詞活動45周年記念「風待ちレジェンド」のコンサートに萌えっぱなしのノリに近い。

で、たぶん70ミリのフィルムで撮ってます。それにCGより実写主義というか爆破や実物大の船やら、クリーチャーもアニマトロニクスが多く、個人的にはアガりました。

あとは生な描写。ストームトルパーの白い装甲に人の真っ赤な返り血がべったりついたり。ディズニーに売っ払っちゃったのでどーなるかと思ってましたが杞憂でした。

ハン・ソロがミレニアムファルコンに乗り込んだときのセリフで、「チューイ、我が家だ」というのがあるのですが、エイブラムス監督に一言、「J.J. ちょっと我が家だ」。

ハン・ソロ(ハリソン・フォード)とチュー・バッカ

ハン・ソロ(ハリソン・フォード)とチュー・バッカ

 北野5

家族の絆と愛

父と暮らした経験がない私は、それゆえ欠けている(と思われる)感情を映画で醸成してきました。

スター・ウォーズの旧3部作(エピソードⅣ、Ⅴ、Ⅵ)で描かれる家族の物語に対しても思い入れが強く、とくに不在という形で息子の人生に介在する父性に強く惹かれました。

でも、続く3部作(エピソードⅠ、Ⅱ、Ⅲ)に対しては、残念ながらその限りではありませんでした。ハリウッドという巨大なシステムに翻弄され、描きたいテーマから軸足をずらされてしまったジョージ・ルーカス監督の無念が伝わってくるように思えたのです。

それが本作では、旧3部作を凌駕するほど濃密に、家族の絆と愛が描かれている。

ジョージ・ルーカス監督に代わってメガホンをとったJ.J・エイブラムス監督の想いと技術。クリエイティブとプロデュースの才能を両輪でまわすことで成し遂げた偉業を、死ぬ前に拝めた幸せを感じました。

要所に物語を前に進めるための新しい芽もまかれていますが、その一つひとつに、旧3部作の文脈を感じることができたのもうれしかったです。恥ずかしながら、涙がとまらなかった。

人生に映画があって良かったと、あらためて感じることのできた作品です。

カイロ・レン

カイロ・レン

 ナオミ1

一見客の熟睡

『スター・ウォーズ』を一度も観たことがないが、魔が差して観た。

公開初日、なぜか最前列の席が空いていた。視界いっぱいに広がる少々古いタッチの宇宙。これはシリーズのトーンなのだろうか。

ジェダイ、ダース・ベイダー、スカイウォーカー…基本用語らしきものの意味がわからない。「フォースの覚醒」のフォースって何?

予備知識がないと楽しめず、疎外感を覚え、最前列で寝てしまった。これはファンクラブのための映画だ。

ラストも「続く」といった雰囲気で終わり、ファンに甘えてやしないか。何年でも待って観てくれるはずだと。2時間完結で一見客も楽しませてほしい。

私が唯一“覚醒”したのは、ヒロイン(レイ)のシーンである。すっぴんで豪快に全力疾走し、剣を持って勇ましく戦う。その美しさに本人は気づいていない。

世の多くのヒロイン像は「一生懸命で健気」だが、キャラ自体に媚びがある。このヒロインには一切なく新鮮だった。もし新しい女性像を狙っているなら成功だ。

ただ、黒人男性(フィン)とのほのかな恋には違和感を覚えた。もしファンの多様性を狙う戦略で意図的に設定したなら、不自然さを感じさせた時点で配役ミスだろう。ま、一見客の難癖である。

コーヒー_トップ
『ア・フィルム・アバウト・コーヒー』12月12日(土)公開
解説
私たちの暮らしに欠かすことができなくなったコーヒーはどこからくるのか。本当に美味しいコーヒーとは、どのようなものか。本作は「Seed to Cup(種からカップまで)」の物語を綴ったドキュメンタリー。手がけたのは、CMクリエイターであるブランドン・ローパー監督。美しい映像、主役級の音楽、印象的なナレーション。コーヒーギークのひとりとして愛情をこめて、世界のコーヒーカルチャーを牽引するプロフェッショナルの哲学とコーヒー・ムーブメントの現在を鮮やかに浮き彫りにする。自主制作映画でありながら、世界30カ国108都市のコーヒー愛好者が上映会を開催したことでも話題になった。琥珀色の一杯の奥深い世界へ。鑑賞後は、コーヒーがいっそう愛しく感じられるだろう。

 嶋3

TED以上のプレゼン

この映画はスペシャリティコーヒーを生産する人から販売する人まで多くの人たちの物語を抽出しているのだが、一番おもしろかったのはバリスタのパート。

バリスタ世界チャンピオンってよく聞くタイトルで、きっとコーヒー業界の重鎮たちがムズカしい顔をしながらコーヒーカップをすすったり、コーヒーを口に含んだりしながら静かに審査がすすむものなんだと想像していた。

でも、全然違った。もちろん美味しいコーヒーを淹れるっていうのは大前提なんだろうけど、カウンター越しにコーヒーを淹れながら自分のコーヒー感を審査員にプレゼンすることがスゴく重要なんだってことがわかった。

しかも、今淹れているコーヒーの作り方の説明というよりは、自分の生き様も含めた個人のコーヒー感をしゃべりたおすわけです。

こんなにコーヒーに思い入れがある自分が淹れるコーヒーが美味しくないわけが無いでしょという感じ。インカムマイクをつけてまるでTEDのプレゼンのごとく。

いや、手元で最高のコーヒーを淹れながらプレゼンするわけだからきっとTED以上のプレゼンテクニック。

テクノロジーも大事だけど、ものづくりは結局人ってことなんだろうけど、あのプレゼンテクは全ビジネスマンが学ぶべきだね。

世界バリスタ・チャンピオンシップの様子 (C) 2014 Avocados and Coconuts.

世界バリスタ・チャンピオンシップの様子
(C) 2014 Avocados and Coconuts.

 佐倉5

コーヒーをめぐる冒険

私は、かなりコーヒーを飲む。ただ30数年前までは、本作に出てくるようなたおやかな時間を愉しむためのものではなかった。

しかもその一杯につながる遙かなる物語になどに思いを馳せたこともなく、たとえばそれはジャームッシュの映画「コーヒー&シガレッツ」のような時間との付き合い方というか、コーヒーと時間の潰し方に近かったかもしれない。

それが、ドラスティックに変わったのは、246沿いにあった大坊勝次氏のお店のコーヒーを飲んでから。どミーハーな私は、人づてに某有名作家が通う大坊珈琲店のことを聞きつけて伺ったのが最初だった。

氏の、まるで茶道のような所作。表千家を思わせる静謐で凛としたコーヒーをいれる一連の姿と、そのおいしさに触れてから考え方が少し変わった。

それからは、表参道の交差点にある山陽堂書店で文庫本を一冊だけ買い、あのカウンターに向かうことが小さな楽しみとなった。

今回の作品に出てくる、珈琲をめぐる様々な冒険者たちの言葉は、どれも興味深い。

もしかすると「サード・ウェイブ」などと呼ばれることは、本意ではないのではないかと思えてくる。日本独特の喫茶の文化が、この新しい流れの一翼を担っているのは間違いないと思った。

美しいカフェの店内

美しいカフェの店内

 中島3

コーヒー道

見終わってまず、どんな人が見に来てるんやろ?ということがすんごく気になった。エンドロール開けにきょろきょろと満員のシネマカリテを見渡す。

ぼくも編集長の指令がなかったらまず見に来てへん。そんくらい、なんちゅうか、狭ーい世界でのお話たち。でも深い。

こんだけ狭い世界を深掘りすると地球的テーマに辿り着くことになるんやなあ。道やね。コーヒー道。

食器棚にいつもあるお手軽なあれ、あれはコーヒーではない。一口一口のコーヒーにちゃんとお金を払うことによって地球の反対側にいる生産者を助け、生産の質を高め、ええ豆が生まれる。

そうして初めてコーヒー求道者たちの高い要求を満たしていけるという、産業と文化の循環が生まれるんやね。その循環を胸に秘め、今ここにある一口に全神経を集中するんがコーヒー道や。

というと厳しさだけが前面に出てまうけど、それはそれはおしゃれな映画。一滴一滴落ちるコーヒーがめっちゃ心地よい音楽を奏でてる感じ。完璧にアートディレクションされた画面。

美しくレイアウトされた文字(若干、日本語字幕が邪魔してるけど)美味しーいコーヒー飲みながら上質な写真集をめくる休日の昼下がり、ゆう感じやね。

パッケージ

焙煎したコーヒー豆のパッケージ

 北野3

浅煎り

まさに浅煎りのコーヒー! 素材に対する敬意のもと、監督の視点という味づけを排除した点が印象的でした。

泥臭い部分にはフォーカスせず、美しく描き切ったところは、CMクリエイターとしての強みが活きているとも感じます。

だからこそ、一点だけ気持ちがついていかない部分が。生っぽい生産工程を映し出し「コーヒーは生きている!」と訴えるシーン。

両親の夜の営みを目撃してしまった子供が、「父さんも、母さんも、男と女なんだ!」と言われた状況を思い浮かべてしまいました。

大量生産、大量消費で突き進んできたアメリカの贖罪という見方もでき、自分を省みるきっかけにもなりました。

というのも本作に登場する大坊珈琲店は大好きな喫茶店でしたが、閉店前の2年ほどは足が遠のいていました。理由はパソコンが使えなかったため。

大好きな一杯より、慌ただしく仕事をする場所代としての一杯を選びがちな自分に対し、本当に大切なものに消費という一票を投じ続けなければという思いが募ったのです。コーヒーカルチャーの盛り上がりがブームに終わらないことを祈る気持ちとともに。

大坊珈琲店のコーヒーとチーズケーキが味わえない悲しさを胸に、劇場を後にしました。

コーヒー豆の生産地ルワンダの生産者たち

コーヒー豆の生産地ルワンダの生産者たち

 ナオミ3

麻薬

「エスプレッソは、麻薬なんだ」。映画に登場する東京・下北沢のカフェのオーナーの言葉に「やっぱり」と頷いた。

といっても、私はスタバのハウスブレンドをガブ飲みする程度の“コーヒー好き”にすぎない。

だが本当に好きで飲んでいるのか、いつも疑問だった。朝イチで飲まないと頭も体も起きないし、日中も飲まないと禁断症状が出てくる。コーヒーなしには生きられない中毒。こんな依存体質にした“相手”を憎むことさえあった。

この映画を観て、“相手の過去”を何も知らなかったことに気づかされる。

コーヒーは3回生まれるという。「生産」「焙煎」「抽出」。私が知っているのは最後の「抽出」のところだけ。精肉にたとえるなら、スーパーに並んでいる肉しか知らず、牧場で飼育され、と殺されるプロセスを知らないまま食べているようなものである。

観終わると「生産者の方々ありがとう」と頭を下げたくなる一方で、ほろ苦い気持ちにもなった。

遠くにいて見えない大勢の人々への負い目。生産管理、とくに衛生面に対する漠然とした不安。コーヒー一杯が急に重たく感じられるようになる。

とはいえ“麻薬の中毒患者”なので、これからも飲み続けるしかない。

ベアボンド・エスプレッソオーナーバリスタ田中勝幸氏

東京・下北沢「ベアボンド・エスプレッソ」のオーナーバリスタ・田中勝幸氏