片付けコンサルタント、近藤麻理恵氏(2)
【近藤麻理恵】片付けをすると、会社の業績も上がっていく
2015/12/12
今、日本と世界は大きな転換期にある。そんな時代において、世界レベルで飛躍する、新時代の日本人が生まれ始めている。本連載ではビジネス、アート、クリエイティブなど、あらゆる分野で新時代のロールモデルとなりえる「グローバルで響いてる人の頭の中」をフィーチャー。経営ストラテジストの坂之上洋子氏との対談を通じて、各人物の魅力に迫る。第1回は、片付けコンサルタントとして世界のスターとなりつつある、近藤麻理恵氏と対談。全世界で出版され、著書が300万部を超えるなど「こんまりブーム」を巻き起こす「片付けの神様」の人物像に迫る。
第1回:【近藤麻理恵】300万部突破。片付け本は、なぜ世界に響いたのか
すごいのは片付け。私ではない
坂之上:近藤さんは、最初に『人生がときめく片づけの魔法』を出版されるときに、100万部は売れるだろうと言ってたって本当ですか?
近藤:そうですね、売れるだろうと言っていたというのとは少し違うかもしれません。片づけについての決定版の本を書くからには100万人くらいの人に読んでほしい、私の中ではそれくらいの意気込みでした。
でも、正直に言うと、100万部という数字がどれくらいすごいことなのか、よくわかっていなかったから、口にしたんだと思います。
坂之上:これば、初めて書かれた本ですよね? 1万部売れたら大ヒットという世界で、100万部売れてほしいって言えるのがすごいです。
近藤:無謀だったということもありますけど、薄っすらそう思ってました。でも出版社の人はそうは思っていなかったみたいです(笑)。
坂之上:でも本当にそれを上回るどころか、世界的な大ベストセラーになってしまった。その自信はどこからくるのですか?
近藤:片づけに対する信頼ですね。これを書く前に片づけ歴10年の蓄積もありましたし。私の中には、「とにかく片づけをすることによって、必ず人生がよくなる」という確固たる信念があるんです。私がすごいのではなく、片づけがすごいんだと思います。
指導した人で起業した人多数
坂之上:今まで指導された人の中で、人生に大きな変化が起きた人はいらっしゃいますか。
近藤:会社を辞めて起業するっていう方は、たくさんいらっしゃいますよ。
坂之上:片づけしたら、会社を辞める?
近藤:片づけをすることによって、本当に自分がやりたいことがわかってくるんです。
坂之上:あぁ。
近藤:特に本棚を片づけると、自分の興味・関心がはっきりします。たとえばある方はIT企業に勤めていたんですけど、福祉関係の仕事に移るべきかどうか迷っていた。でも、その方、本の片づけをしたら福祉の本しか本棚に残らなかったんです。
坂之上:本棚に残った本で自分の好きなことが何かはっきりと見えてくる。
近藤:それで「自分はやっぱりこの仕事がやりたい」と確信して、会社を辞めて、今福祉関係のビジネスをなさっています。
坂之上:本を片づけるだけですごいことですね。
本や書類の整理はていねいに潔く
近藤:そうです。本を片づけるときは、とにかく家中にある本を一気に1カ所に出してください。そこから1冊1冊手にとって選んでいきます。それが自分にとって、今ときめくものかどうかを基準に選んでいく。そうでないものは感謝の気持ちを込めて、潔く捨てていい。
坂之上:そんなにときめかなくても、後で読むかも、って思ってしまうんですが。
近藤:それは、読まないですよ〜(笑)。本当に読みたいと思ったらもう一度買えばいいんです。
坂之上:確かに。後でやるかもって、たいていはやんないですよね(笑)。なんだか、この手法でデスクを片づけると、いきなり仕事ができる人になりそうですね。
近藤:それはもう確実です! 実は私、一時期、経営者の方向けに、デスクの片づけのレッスンをしていたことがあるんです。すると、皆さん会社の業績が上がっていくんですね。
坂之上:会社の業績まで上がっちゃうんですか?
近藤:はい。机を片づけると、仕事のスピードが速くなるんです。書類とか必要なものをすぐ取り出せて、物理的に早くなるということもありますけど、やっぱり判断がすごく速くなってくるんです。
坂之上:それはそうだと思うんですが……。でも机が煩雑でも仕事ができる人っていると思うのですけど。
近藤:たとえばですね、なにか新しい案件が来たときに、「それは自分にとってときめくか?」と問いかけることで、正しい判断を素早く下せるようになるんです。
坂之上:案件も「ときめくかどうか」なんですね。
近藤:書類もやり方は同じです。全部出して積み上げます。積み上げた状態から一枚一枚見ていって、いらないもの、全部捨てる。
坂之上:本と同じように後で読むかも、は考えてはいけない、と。
近藤:そうですね。書類は基本的に全部捨てることを前提とします。
坂之上:全部……。でも勇気が要ります。
近藤:もちろん、契約書とか捨てちゃダメですよ(笑)。でも本当に必要な書類がどれか、皆さん自分でわかってるんですね。
坂之上:確かに。
近藤:コツは一枚一枚手にとって見ることなんですよ。束でバサッと見るんじゃなくて、ちゃんと書類一枚として見ていくと、実はいらないものが多い。
坂之上:はい。
近藤:書類だって、自分にとってときめくかどうか、ですよ。でも、たまに「ときめく」っていう感覚がわからないという男性がいらっしゃるんですけれど、その場合は、別の言葉に置き換えてもいい。
坂之上:ときめきって確かにちょっと女性っぽいワードですよね。
近藤:たとえばある経営者の場合、それを持っていて「儲かるか」という基準に置き換えたことがあります。その途端、どんどん選べるようになった。
坂之上:(笑)。
近藤:「それを持っていて自分が上がるかどうか」「わくわくするかどうか」と言い換えてもいいかもしれません。自分にとってポジティブなキーワードであることが大事。それを持っていることで前向きな気持ちになれるのであれば、それが残すべき書類なんです。
坂之上:そして、「わくわく儲かるもの」だけ残したら、確かに仕事がすごいことになりそう。
近藤:そのやり方で片づけをしていくと、自分のやりたいことが見えてくるだけでなく、まわりのものや人を、すごく丁寧に大切に扱えるようになるんですね。
坂之上:人を大切に扱う?
近藤:そうです。ものを大切に扱うようになったら、もちろん人も大切に扱える人になれるんです。
坂之上:なんだか深いですね。
(構成:長山清子、撮影:遠藤素子)
*続きは明日掲載します。