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第1回 グローバルで響いてる人の頭の中

【近藤麻理恵】シンプルで禅的な日本の片付けは世界に響く

2015/12/13
今、日本と世界は大きな転換期にある。そんな時代において、世界レベルで飛躍する、新時代の日本人が生まれ始めている。本連載では、ビジネス、政治、アート、クリエイティブ、研究など、あらゆる分野で、新時代のロールモデルとなり得る「グローバルで響いてる人の頭の中」をフィーチャー。経営ストラテジストの坂之上洋子氏との対談を通じて、各人物の魅力に迫る。第1回は、片付けコンサルタントとして、世界のスターとなりつつある、近藤麻理恵氏をフィーチャー。全世界で著書の販売が300万部を超えるなど「こんまりブーム」を巻き起こす、片付けの神様の人物像に迫る。
第1回:300万部突破。片付け本は、なぜ世界に響いたのか
第2回:片付けをすると、会社の業績も上がっていく

物の持ちすぎと自分を見失う

坂之上:今の先進国では、皆ものを持ちすぎてる。そして、その状態に疲れきっている。近藤さんはそう思われたんですよね。

近藤:はい。だから自分が何をやっているかがわからない。だからこそ「本当に自分にとってときめくものを選びましょう」という基準で片づけて「身軽に」なっていくことが、重要なんです。

坂之上:すると、自分に本当に必要なものや情報がはっきりしてくるわけですね。

近藤:そうなんです。

坂之上:私はインテリアデザイナーの経験もあるので、よく失恋した友達の部屋に行って、模様替えしてあげたりするのです。でも、インテリアを替えるって、実は、まずは、いらないものを捨てたり整理したりすることなんです。

近藤:そうです、そうです!

坂之上:インテリアを考えるうえで色とか家具を置くものってもちろん大事なのですけど、やはり一番大事なのは、好きでないものが目に入らないようにすることなんです。

好きなものだけを表に出していけば、暮らす人の気持ちが、ものすごくあがります。私が部屋を変えてあげた失恋した友人たち、すぐに彼氏とか彼女ができちゃいます(笑)。

近藤:よくわかります。環境を整えることで人間が変わるんです。

人付き合いも良くなる

坂之上:片づけすると夫婦関係、恋人関係も変わりますよね?

近藤:えぇ。良いほうに変化しますよ。たとえば片づけの前は旦那さんに対してストレスをためていた奥さんがいるとします。「旦那そのものを片づけたいわ」みたいなご冗談をおっしゃってた方が、実際に片づけをしてから旦那さんに触ってみたら、ときめいたと(笑)。

坂之上:それはすてき。

近藤:はい。片づけをしていくと、まわりの人まで、すごく丁寧に大切に扱えるようになるんですね。

坂之上:すごいことですよね。

近藤そうなんですよ。本当にすごいですよ、単に片づけるだけですよ。

坂之上:しみじみ、そんなシンプルだけど一番大事なことがZEN(禅)的だって世界中の人々にも響いたんですよね。

近藤:私もさすがにここまでと思うとびっくりしますけど。

近藤麻理恵(こんどう・まりえ) 幼稚園年長時からESSE、オレンジページなど主婦雑誌を愛読。大学2年時に片づけコンサルト業を始める。会社員を経て、独立。女性限定の整理収納レッスンが人気を呼ぶ。著書「人生がときめく片づけの魔法」シリーズは国内累計190万部を突破。世界30か国以上で翻訳が決定した。今年4月、米誌タイムが選ぶ「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。

近藤麻理恵(こんどう・まりえ)
幼稚園年長時からESSE、オレンジページなど主婦雑誌を愛読。大学2年時に片づけコンサルト業を始める。会社員を経て、独立。女性限定の整理収納レッスンが人気を呼ぶ。著書「人生がときめく片づけの魔法」300万部を突破。世界38国以上で翻訳が決定した。今年4月、米誌タイムが選ぶ「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。

今後は「世界を片付けたい」

坂之上:近藤さんは、これから何をされたいですか?

近藤:結論からいうと今私は本当に「世界を片づけたい」気持ちなんです。

坂之上:「世界を片づけたい」!

近藤:はい ヨーロッパでも、今いろいろなプロジェクトが進行中です。

坂之上:明日からアイルランド?

近藤:はい、ヨーロッパ3カ国をまわってきます。

坂之上:それは、お子さん残してまわりは平気な感じ?

近藤:いやいや、もう大変ですよ〜。「本当にすみません」って謝り倒しています。親も親戚も、とても応援してくれてます。

坂之上:じゃあ、仕事と子育ての両立に精神的に揺さぶられることはない?

近藤:そうですね。本当に私は小さい頃から「私はこれをやりたい」って言ったら、絶対やるっていう感じなので、皆さんあきらめてるところがあるんです。両親も「今のうちにやっておきなさい」と言ってくれている。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

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今すべきことに全力投球

坂之上:いいですね。

近藤:今は本当にやるべきときなので、全力投球したいんです。

坂之上:実は最近私の友人で、ちょうど3カ月ぐらいのまだ小さい赤ちゃんがいる女性がいて。インドに自分が苦労して設立にかかわった学校があって、そこがいよいよ開校するから、それを見に行きたい。だけど子どもを連れて行くのはまだ小さすぎて危ない。でも親も夫も「行くべき」って言ってくれたから、子どもを預けて行ったんですよ。

そしたら彼女、自分の友人たちに「まず親としての責任を果たすべきだ。行くべきじゃない」とかなり非難されたそうで、すごく落ち込んでたんですね。

近藤:あぁ。

坂之上:旦那さんと親が全力でサポートしてくれて賛成してくれてるのに友人が「?」って私は驚いたんですけど、そういうの、日本ではまだまだ理解されないみたいんですよね。

近藤:それはつらいですよねぇ。

坂之上:子育てはずっと続きますしね。子どもがかわいそうなのかどうか、まわりの人よりもその子自身が自分の親をどう思うか、ですよね。だから、たぶん20年ぐらい経たないと結果はわかんない(笑)。

近藤:そうですね。だから本当に自分が何を今すべきかは自分で真剣に考えるべきですよね。

坂之上:私は、子育てに専念したい人はすればいいし、仕事したい人はすればいい。それこそ、その家族の個性ですよね。みんな性格も違うわけだし。それぞれの家族の、それぞれのこだわった心地いい生き方をすればいい、と思うんです。

近藤:それぞれの信じた生き方を生きるしかない、ということですね。

坂之上:はい。子どもが「自分は愛されてるんだ」って実感が持てれば、どういう育て方であっても良いんじゃないかと思うんですけどね。おおざっぱですけど。(笑)

近藤:なんだか、そう聞いて安心しました。

坂之上:子育てって正解がない世界ですし。親がときめいてることをして、前を向いてるのを見て育つのって素敵だと思います。

近藤:私は今、本当に世界中の方が片づけに困っているという事実と、私の片づけの考え方が実際に世界でも響くということを知ったので、それをどうしても、いま広めていきたいと思っているんです。

坂之上:近藤さんの考え方が広まれば、世界中の多くの人の生き方がポジティブに変わることになりそうですよね。これからのご活躍、ますます楽しみにしています。

(構成:長山清子、撮影:遠藤素子) 

*続きは明日掲載します。

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