(ブルームバーグ):米製薬会社ファイザーとアイルランドに本社を置く同業のアラガンは、株式交換による事業統合で合意した。約1600億ドル(約19兆7100億円)規模の案件となる。統合後は「バイアグラ」や「ボトックス」など多様な製品を持つとともに、税制上有利なアイルランドに籍を置く巨大製薬会社が誕生する。

両社の23日の発表によると、アラガンの評価額は1株当たり363.63ドルとなる。両社の合併協議が明らかになる前の10月28日の株価に比べ、約27%上乗せした水準だ。アラガン株主は1株につき新会社の株式11.3株を、ファイザー株主は同1株をそれぞれ受け取る。ファイザーの株主は保有する株式と引き換えに、新会社の株式に代わり現金の取得を選択することも可能だ。現金の支払い分として最大で120億ドルが用意されている。

今回の統合ではアラガンがファイザーを買収する形になる。そうすることで新会社の法人登録先をアイルランドに置くことがより容易になる。ただし業務に関してはニューヨークに本部を置く。ファイザーのイアン・リード最高経営責任者(CEO)が新会社の会長兼CEOに就任し、アラガンのブレント・サンダーズCEOは社長兼最高執行責任者(COO)として販売や製造、戦略を統括する。

統合効果は2018年から調整後利益に反映され始め、その翌年には10%の利益増が見込まれている。統合は来年末までに完了する予定。新会社はニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場される見通しだ。

ファイザーの株価は23日のニューヨーク市場で前週末比2.6%安の31.33ドルで終了。アラガン株は3.4%安の301.72ドル。

アラガン株終値が統合案での評価額を17%下回ることについてエバーコアISIのアナリスト、ケビン・キルスタイン氏は、政治的に複雑な時期で選挙シーズンと重なる中で統合が実現しないリスクが背景にあると顧客向けビデオで指摘した。統合完了までにかかる時間もリスクを高めていると付け加えた。

1600億ドルという案件は今年最大、製薬業界では過去最大規模となる。ファイザーが実際に新本社をアイルランドに置いた場合、節税目的で低税率の海外に本社を移すインバージョン(租税地変換)とよばれる米企業の動きとしては過去最大となる。

米財務省はこうした節税戦略を抑制する取り組みを強化しており、インバージョンを企てる米企業が所有する資産の評価方法で新たな指針を最近発表したばかり。ファイザーのリードCEOはインタビューで、先週発表された財務省の新たな規則を同社のM&A(合併・買収)担当チームが検証した結果、両社が以前に合意していた統合の枠組み通りに前進させることを決めたと語った。

事情に詳しい関係者1人によれば、リードCEOは既にマコネル共和党上院院内総務を含む上下両院の議員に接触し、ホワイトハウスにも23日に電話して統合計画への理解を求めているという。同CEOは統合が両社による画期的な薬品開発への投資につながる上、ファイザーの米国従業員数は統合完了時点で4万人になると説明しているという。

原題:Pfizer, Allergan to Combine in Deal Valued at $160 Billion (5)(抜粋)

--取材協力:Megan Murphy、Doni Bloomfield.

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