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アフリカ市場を攻略せよ 第5回(最終回)

【亀山敬司×牧浦土雅】まずは「やる」ことが重要。「一回だまされてからすべてが始まる」

2015/10/31
DMM.comの次の目標を「アフリカへの進出」と定め、手を挙げた社員をアフリカに送り込んだ亀山敬司氏。ルワンダで農業・流通などのビジネスを展開する、牧浦土雅氏。異色の起業家2人が、アフリカのビジネスチャンスについて語り尽くす。
第1回:死んでも文句言わないようなやつだけ、アフリカに行かせた
第2回:ルワンダを選んだからこそ、希少価値につながった
第3回:海外に行っても帰国前提の日本人。それでは成功しない
第4回:アフリカビジネスは「対政府」にチャンスあり

先進国のほうが治安が悪いことも

亀山:ちなみに今回、アフリカに行って感じたのは、思っていたよりも安全だったということ。もちろんヤバい場所もあるんだろうけど、案外危険な臭いがしなかったんだよね。

俺はいろんな国に行ってるけど、先進国のほうが格差などで治安が悪かったりする。でもみんなが平等に貧しいと、意外に治安は安定したりするんだよ。ニューヨークのほうがよっぽど怖かったからね。

そして、物価も意外と高かった。コーラだって100円ぐらいする。行く前は10円ぐらいで買えるだろうと思っていたから、全然お金が足りなかった。だから「これを飲めるぐらいの経済力があるんだから、意外にビジネスができそう」って思ったね。

牧浦:やっぱり現地にいると、感覚がまひしますよね。たとえば東京の都心で、銃で肩を撃たれたら「あーっ!!!」と叫んで大騒ぎしますよね。でもアフリカの都市で撃たれても、「あ、痛ってえ、まいっか」という気がする。でももちろん、そうして調子に乗っているときが一番危ないから、用心を忘れてはいけませんが。

亀山:若いうちは死なない程度に、ヤバいところに行ったほうがいいんだよ。死んじゃったら元も子もないけど、ギリギリを生き延びると、修羅場を経験した分だけタフになれる。

牧浦:僕が忘れられないのは、内戦が続いているルワンダとコンゴの国境付近に泊まったときのことです。両国の国境は大きなバーで分かれているのですが、夜、コンゴ側にいたお母さんたちが、子どもを抱えてルワンダ側に渡ってくるんです。

なぜかといえば、コンゴは四六時中銃声や爆撃の音がしているため、うるさくて眠れないから。彼女らは朝になると、再びコンゴ側に帰っていきます。もちろん不法な越境なんですけど、「夜に寝るだけならいいか」とルワンダ側も了承している。あそこまで紛争を身近に体験したのは初めてでした。

亀山氏が訪れたアフリカのサファリ

亀山氏が訪れたアフリカのサファリ

安心な国に生まれたチャンスを生かしたい

亀山:俺も20年以上前に、内戦中のボスニアに行ったことがある。「男だったら戦場ぐらい行かなきゃ格好悪いだろう」ということで、自転車で回ったんだよ。途中スパイ容疑で捕まったりと、それなりにひどい目に遭ったけど、しょせん俺たちは旅人だからいつかは国に帰るよね。

でも、現地の人はそこで暮らしているんだ。砲撃の音が聞こえるなか、黙々と農業にいそしんでいる。そうした光景を目にしたからこそ、自分は安心な国に生まれたチャンスを生かさなければと思ったよ。

牧浦:価値観変わりますよね。だから、非行少年を更生させたかったら、少年院や刑務所に入れるのではなく、みんなアフリカに送ればいい。むしろ高校に入ったら全員1カ月、新興国に行くとか。そうすれば絶対に引きこもりとかなくなりますよ。

亀山:それいいね。水が出たとか電気がついたとかで感動できるから。自殺だって減るよね。アフリカに行くと「死んでる場合じゃないな」って思うもん。

牧浦:どこかの学校がやってくれないですかね。留学プログラムがある学校でも、オーストラリアとかイギリスとかに行かせていては、ありきたりでつまらない。

亀山:『ライオンキング』とか見せて、「アフリカはいいぞ」ってその気にさせて、送ってしまえばいい。で、一度行ってしまったら、しばらく帰れないみたいな(笑)。

牧浦:アイマスクをつけたままアフリカに送ってもいいですね。現代版の「電波少年」みたいに(笑)。

亀山 敬司 株式会社DMM.com 取締役会長 石川県のレンタルビデオ店からアダルト、IT、太陽光発電、FX、英会話、3Dプリントと節操なく事業展開をする実業家。めったに人前に姿を現すことがなく、その正体は謎に包まれている。

亀山敬司
DMM.com取締役会長
石川県のレンタルビデオ店からアダルト、IT、太陽光発電、FX、英会話、3Dプリントと節操なく事業展開をする実業家。めったに人前に姿を現すことがなく、その正体は謎に包まれている

失敗は最初にしたほうが、ダメージが少ない

亀山:「DMMはアフリカをやる」と言ってから、結構「何をやるのか?」と聞かれるんだけど、行き当たりばったりで考えているから、何のビジョンもないんだよね。

ただ、さっきも言ったように、どんな仕事でも現地の人間と関係性をつくってやるしかない。時にはだまされることもあるだろうけど、痛い目に遭って初めて、本当に信頼できる人が見つかるものなんだよ。

いったん信頼関係が結べたら、あとは日本の先端テクノロジーをもっていけば、大きなビジネスになる。だからまず「何も考えずに行ってこい」と、社員を送り込んだわけ。

牧浦:そう、一回だまされてからすべてが始まると思います。最初にだまされておけば、次からはだまされなくなる。安全な道ばかり選んでいると、アフリカに対する免疫ができないから、大きな金額を投資したときに、持ち逃げされたりする。失敗は最初にしておいたほうが、ダメージが少ない。

亀山:送り込んだやつには「何回ぐらい日本に帰れるんですか?」と聞かれるんだけど、「旅費分を稼いだら日本に帰してやる」って言ってる。「お前が稼いだ金なら、ファーストクラスでもなんでも使っていいよ」と。

牧浦:稼ぐまでは帰れないんですね(笑)。

亀山:うん。そのあたりはアバウトでやってる。アバウトな国だから、こっちもアバウトにやらないと何も始まらない。

もちろん「この事業がやりたいから金が必要です」と言ってきたら、送ってやるよ。どんな使い方をしても、それで道が開けるんなら、別にいいんじゃないかな。投資にもいろいろあるよね。

牧浦:僕みたいな若者でも、「俺はすごいやつだ」とアピールすれば、結構政府は歓迎してくれる。だから、ハッタリをかませばいいと思いますよ。もちろん、嘘をついていいわけじゃないけど、言ったことはあとからやればいい。そうしているうちに、向こうもどんどん高官が出てきて、やれることのスケールが大きくなる。

亀山:だからまず、若いやつにはやってみろといいたいね。イキがったりビビったりしながら。その中から、DMMアフリカも形になっていくんじゃないかな。(終わり)

牧浦土雅 Needs-One Co.,Ltd. 共同創業者 1993年生まれ。東アフリカ、主にルワンダで国連と一緒に農村と市場をマッチングする事業を牽引。TED『世界の12人の若者』、NewsPicks Paper『40歳以下の日本人イノベーター』に選出。輸送用ドローンを開発するベンチャー立ち上げの経験を生かし、内閣府では、国家戦略特区でのドローン利活用についても議論を重ねている。最近では新たに教育サービスの世界展開にも従事。著書に『アフリカ・奇跡の国ルワンダの『今』からの新たな可能性』(DBS社)がある。

牧浦土雅(まきうら・どが)
Needs-One Co.,Ltd.共同創業者
1993年生まれ。東アフリカ、主にルワンダで国連と一緒に農村と市場をマッチングする事業をけん引。TED「世界の12人の若者」、NewsPicks Paper「40歳以下の日本人イノベーター」に選出。輸送用ドローンを開発するベンチャー立ち上げの経験を生かし、内閣府では、国家戦略特区でのドローン利活用についても議論を重ねている。最近では新たに教育サービスの世界展開にも従事。著書に『アフリカ・奇跡の国ルワンダの『今』からの新たな可能性』(DBS社)がある

(構成:野村高文、撮影:遠藤素子、協力:DMM英会話)

*本対談はDMM英会話との連動企画であり、亀山氏の旅の秘話や新企画についての話が盛りだくさんの「裏・アフリカ対談」が同社公式ブログに掲載されています。