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【LINE×iQON】最高のプロダクトを生み出すチームづくりの秘訣

2015/10/26
最高のプロダクトをつくる企業には、最高のチームをつくる企業文化がある。規模の大小を問わず、チームのパフォーマンスを最大限に引き出すために、どんな役割分担をし、どんな意識決定プロセスを構築しているのか。月間アクティブユーザー数(MAU)が世界で2億人を超えるコミュニケーションアプリ「LINE」の企画室のトップを務める稲垣あゆみ氏と、CTOとしてファッションアプリ「iQON」の技術開発を統括している今村雅幸氏は、ともに開発現場を引っ張るリーダーの役割を担う人物だ。そんな両者の対談の前編をお届けする。

ゴールを決めるのはトップ。大切なのは「現場が納得すること」

──CTOとプロダクトマネージャーという、それぞれ重要なポジションに携わるおふたりですが、プロダクト開発のなかで具体的にどんな役割を担っているのでしょうか。

今村:僕はVASILYの取締役CTOとして、エンジニアチーム全体を見ています。ファッションアプリ「iQON」は3年前にリリースしたアプリで、現在のユーザー数は200万人ほど。VASILY創業当初は受託開発なども手がけていましたが、現在はiQONの開発だけにリソースを絞り、全社をあげてワンプロダクトをつくり上げています。

稲垣:私は ネイバージャパン(後のNHN Japan、現LINE)に入社して5年になりますが、入社以来ずっとLINEのメッセンジャー本体の企画全体を担当しています。あとは「LINE STORE」( https://store.line.me )や、ファミリーアプリとLINEが連携するプラットホーム部分も見ています。LINEも当初は20人くらいのチームで開発していた小さいプロダクトでしたが、今では日本だけでなく、海外のエンジニアチームも含めて相当な人数が開発に関わっています。

──多人数のチームでひとつのプロダクトをつくっていくうえで、ゴール設定はどのように決めているのでしょうか?

今村:VASILYの場合、プロダクトの大きな方向性を決めているのは経営陣です。iQONをどんなサービスに発展させていくか、次にどんな機能を加えるか、目指す方向をざっくりと固める。そのうえで、下にいるマネージャーたちと全員でディスカッションします。経営陣が決めたゴールに対して、各チームがどう貢献できるかをすり合わせていく。

マネージャーとの会議は定例で週2時間とっていますが、何か決定しなくてはいけない事案があるときは、3倍以上になることもある。現場が納得するまで徹底的に話し合います。

稲垣:そこが一番コアになる部分ですよね。現場のみんなが納得しないと、絶対にいいパフォーマンスは出てこない。でも、それが開発者やデザイナー、プランナー、事業開発者、マーケッターといった役割によって、納得できる落としどころがみんな違うので。

よく私が言うのは、各パートの人たちの言語を覚えなきゃダメ、ということです。役割が違うと、使う言語が違うんですね。同じ結論だとしても、たとえば新しい機能のUIをつくるとして、エンジニアには「このモジュールを使うと工数が減るよ」と伝えて、一方でデザイナーには「UIの統一性が大切だから」と伝える。

逆にデザイナーに「開発の工数が減るから、UIは統一して」と説明したところで、彼らは納得できません。個別のデザインをつくったほうがいい、という話になってしまう。各パートごとのメンバーが納得できる言語で会話して、同じゴールを目指すことが大切です。

稲垣あゆみ(いながき あゆみ) LINE株式会社 LINE企画室 室長。大学時代に数々のIT企業でインターンを経験した後、韓国系ベンチャーの立ち上げに参加。その後、中国系IT企業にて検索サイトの企画を手がける。2010年5月にネイバージャパン(後のNHN Japan、現LINE)に入社し、2011年より『LINE』の企画開発に携わる。2015年5月より現職。

稲垣あゆみ(いながき あゆみ) LINE株式会社 LINE企画室 室長。大学時代に数々のIT企業でインターンを経験した後、韓国系ベンチャーの立ち上げに参加。その後、中国系IT企業にて検索サイトの企画を手がける。2010年5月にネイバージャパン(後のNHN Japan、現LINE)に入社し、2011年より『LINE』の企画開発に携わる。2015年5月より現職

意思決定は、常に現場からスタートしている

──パートごとの意思疎通や、モチベーションの共有はどうしているんですか?

稲垣:会社が小さいうちは全員が自然とコミュニケーションするから、それは難しくないんです。ひとつの文化を共有していける。ただ、規模が大きくなっていくにつれてチームが育っていくと、どうしても個別の文化が生まれてきます。その点、VASILYさんは勉強会で補足しているイメージですね。

今村:勉強会はかなり頻繁にやっています。社内では週2回、各チームが月に数回は登壇することにしています。われわれは「VASILYのエンジニアはこうあるべき」というマニフェストを徹底していて、それを社内外で積極的にアウトプットしたり、外部からインプットしたりすることを推奨する社内文化をつくっています。

それに加えて、やはりプロダクトの目指す世界観を明確にしていることが大きいです。iQONの世界観は「トレンドが見つかる、買える、ためられる」というフレーズに集約させているんですが、迷ったときはこのフレーズに立ち返るということをメンバー全員の共通認識にしています。

稲垣:それでいうと、今、LINEは幾何学級数的にメンバーの人数が増えているので、「教育」という部分で明文化されているものはないんです。パートごとに一緒に働きながら、現場のなかで伝えていくというかたちです。

いまは同時並行で数百のプロジェクトが走っていて、企画チームのなかだけでも毎週のようにやるプロジェクトが変わっています。そのたびにメンバー同士でディスカッションをして、みんなが同じトピックに興味をもてるような場をつくることは意識的にやっていますね。

──意思決定のプロセスはどうなっているのでしょうか。

稲垣:それは本当にケースバイケースです。マネージャークラスがOKを出して動く案件もあれば、役員の承認を取ってから進めるべきこともあります。逆に言えば、どこまで上の承認を取っておくべきかを判断するのが私の役割です。

私たちの仕事は、上層部のオーダーを受け取って、現場で考えるところからスタートすることがほとんどです。現場レベルで複数のアイデアを練って、選択肢として提示しながら、「私はこれがベストだと考えています」という提案をする。立場や役職にかかわらず、それが意思決定、というより仕事の基本プロセスだと思います。

今村:その流れはわれわれも同じですね。サービスの方向性を考えるのは経営陣の役割ですが、マネージャーたちが自分のミッションを100パーセント理解したあとは、ゴールだけは共有して彼らにまかせます。

今村雅幸(いまむら まさゆき) 株式会社VASILY 取締役CTO。大学時代に学生向けポータルサイトの運営や情報システムの研究などを行い、新卒でヤフー株式会社に入社、数々のシステム開発やサービス立ち上げを担当したのち、09年5月に株式会社VASILY設立し、取締役CTOに就任。

今村雅幸(いまむら まさゆき)
株式会社VASILY 取締役CTO。大学時代に学生向けポータルサイトの運営や情報システムの研究などを行い、新卒でヤフー株式会社に入社、数々のシステム開発やサービス立ち上げを担当したのち、2009年5月に株式会社VASILYを設立し、取締役CTOに就任

数字を分析するのは当たり前。そこからどう改善するか

──プロダクトを大きく成長させていくために、個々の案件に対してどんなKPI(重要業績評価指標)を設定していますか?

今村:パフォーマンスを数字で見られるようにすることは大事ですね。最終的に目指すところは、どうしても漠然とした言葉になりがちですが、それを実現するためには、定量化できる数字を計測し続けることが必要です。

数字という絶対的な指標があれば、プロダクトに関わる全員が同じように結果を判断できます。どれだけできたか、もしくは、なぜできなかったかをその数字から判断して、ずれを調整する。

稲垣:そういう数字は現場の人たちも見ているんですか?

今村:わりと見ていますね。特にエンジニアは意味のない作業を嫌うので、自分がやった施策の数字をかなりチェックしています。データドリブンという点では、ベンチャーだろうが大企業だろうが、もうやっていて当たり前ですね。

VASILYでは専任のデータサイエンティストを配置して、数字を追いかけやすい環境を整えています。定量化したKPIを設定することで、パフォーマンスを上げるための施策で現場が迷わない仕組みをつくっています。

稲垣:LINEの場合はグローバルで展開していることもあって、何かをひとつ変えたから数字がボンと動くということは、今はもう見えづらくなっています。むしろ各国のトレンド事情に左右されることのほうが多かったりする。

もちろん数字を分析する専門の部署はありますし、それぞれの部署のメンバーが個々で数字を意識してやっています。

ただ、私の担当しているプロダクトでは、数値化できない仕事もあります。たとえば、春先にLINEの背景画面に「桜の花びら」を降らせたんですが、これは何かの数字とはまったく関係ない。これをやったら面白いんじゃないか、という発想だけで実現したものです。

こういう数値では測定できない案件が複数並んだとき、個々にどうプライオリティをつけるか、みんなが納得して気持ちよく働けるように展開していくかは、常に考え続けていることです。
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優れたチームは、メンバーの目が「生きている」

──いいチーム、悪いチームという組織の見分け方のようなものはありますか?

今村:僕はまずエンジニアの目が生きているか、死んでいるかを見ますね。自分たちで本当にいいものをつくろうという気持ちがあるのか。エンジニアの目を見て、発言を聞いていれば、そのチームの動かしているプロジェクトのよしあしは見えてきます。

エンジニアが仕事を楽しんでいなければ、それはパフォーマンスに大きく影響してくる。やっぱりモチベーションが大事ですね。

稲垣:LINEの場合は、企画、開発、デザイナーの3つのパートですね。仕事を進めるときは、この3つが意見をぶつけあって、ものすごくバトルをする。でも、その根底にあるのは同志的なつながりです。純粋に「いいものをつくりたい」という気持ちがあふれている。それが足りない人は組織のなかでハッキリと浮くし、警戒心を持たれます。

今村:同志だからこそバトルができる。いろんなぶつかり合いのなかで、「ユーザーにとってベストな選択」という落としどころを探す作業の繰り返しです。だからこそ、プロダクトマネージャーは共通のゴールをしっかりと握って、みんなを引っ張っていかないといけません。

最高のプロダクトを目指してわれわれは集まっている。メンバー全員がその思いを共有しているということが、最高のチームづくりに不可欠の条件だと感じます。

【※本記事の後編は来週公開予定です】

(構成:工藤千秋、編集:呉 琢磨、撮影:福田俊介)