日本で前例のなかった大型破産のM&Aを引き受ける

2015/8/25

負債額1兆2000億円

私のM&A人生のエポックメイキングとなった案件が起きたのは1997年4月1日。日本債権信用銀行(現あおぞら銀行)子会社のリース会社、クラウン・リーシングが負債額1兆2000億円を抱えて破産したのです。当時、戦後最大の破産でした。
発端から説明すると、ある会社から、クラウン・リーシングの子会社であるクラウン・オートリースを買収したいという相談を受けていました。クラウン・リーシングが4月7日に破産管財人が三宅省三弁護士に決まると、アポなしで若手と二人で新宿御苑前の三宅先生の弁護士事務所を訪れました。
M&Aを手がけるような弁護士事務所は、だいたい大きくきれいなビルにあることが多いのですが、当時の三宅先生の弁護士事務所がある新宿御苑のビルは1階が薄暗かった。私たちが当時、抱いていた倒産のイメージは、いろんな債権者がどっと押しかけて、倉庫からあれこれ持ち出し、そのスジの人が来てわめいたりする。普通の人が入っていってはいけない世界でした。
その薄暗いビルに入ったものの、そもそもわれわれが破産案件を手がけるべきではないのではないか、帰ろうかという話もしたくらい雰囲気がこれまでと違いました。