人口6億人の巨大なASEAN市場。2020年には世界5位へ
2015/08/20, NewsPicks編集部
第2回:ASEANのマクロ経済
人口6億人の巨大なASEAN市場。2020年には世界5位へ
2015/8/20
第1回ではASEANと日本の関係を中心に説明した。第2回ではASEANの経済力について、人口とGDPを中心とした基本的なマクロ経済データを用いながら、筆者の現場リサーチでの体験も交えて、数字には現れない視点からも解説したい。
予告:なぜ今、日本はASEANに注目すべきなのか
多様な6億人が集まる大市場、しかし高齢化の足音も
東南アジア諸国連合(ASEAN)全体では約6億人と中国、インドに次ぐ規模となる。個別の国ではインドネシアが世界第4位となる2億5000万人の人口を有し、1億人のフィリピン、9000万人のベトナムが後に続く。タイ、ミャンマー、マレーシアは約3000万〜5000万人台と中程度の規模であり、カンボジアとラオスはやや小ぶりの国である。
さらには、ブルネイのように日本の地方都市並みの国や、550万人の人口のうち約3分の1が外国人の都市国家というシンガポールもある。
6億人の人々が信じる宗教も多様である。大まかに大陸部は仏教徒(上座部仏教)が多く、島しょ部はイスラム教徒とキリスト教徒が多い。このほかにも、ヒンドゥー教や儒教など多数の宗教が根づいている。
ASEANの人々の年齢は全般的に若く、20〜30代が中心である(下図)。
2030年の国連予想を見ると、平均年齢の上昇が比較的緩やかな国はインドネシアとフィリピンであり、カンボジアとラオスはまだ20代と若い状態が続く。一方で高齢化が始まりつつある国もある。シンガポールは先進国水準に達しているため想像がつきやすいが、気になるのはタイである。
タイの平均年齢は2015年の段階ですでに38.0歳と、中国の37.0歳よりも高く、2030年には44.8歳と現在の日本並みになる。平均年齢の上昇は、一般的に労働力の減少を意味する。とすれば、新興国の成長性をうたい文句として頻繁に強調される「若く、豊富な労働人口」という強みは、賞味期限付きの話である。
また経済成長が続けば、賃金も上昇する。実際、ASEAN各国に進出している日本企業に取材すると、賃金上昇への対応が重要課題のひとつとして挙げられる。
労働力が減少し、賃金が上昇しても経済成長を維持するには、移民受け入れの強化や、生産性の向上といった政策対応が必要となる。長期的な成長を維持するには、産業の高付加価値化もしなければならない。年齢の上昇ペースは、政策対応のタイムリミットとも言える。
この課題は、ASEANだけでなく、新興国全般の将来を考えるうえでも重要な論点である。
経済規模はG7クラス、インドネシアは2050年に世界4位に
次に、ASEANの経済規模を名目GDP(国内総生産)で見てみよう。
newspicks.com
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コメント
注目のコメント
(追記1、2あり)
「ざっくりASEAN」の第2回を公開です。ごく基本的な数値のみですが、マクロデータを利用した解説です。成長率は「予告編」でASEANをまとめてですが、IMF予想として新興国平均を上回る約5%と記載しました。
インドネシア推しにも見えるかもしれませんが、私としてはASEANは各国ごとの多様性こそが長所であり、それぞれの良さを生かしていくことが重要だと考えています。
マクロデータだと人口が効きますので、インドネシアは目立ちます。一方で、人口3千万のマレーシアは、日本ではあまり良いことを言われませんが、クアラルンプールの所得の高さは注目点です。その他、書き切れない話でしたが、カンボジアやラオスといった国々にも長所があります(国別編で触れたいと思っています)。
もちろん、こうした違いがリスクにもなりますので、期待は込めながらも、注意してみる必要があるポイントでもあります。
例えば、タイの高齢化は気になりますよね。移民が既にかなり入っていますが、移民との関係をどうするか、などの課題も生まれています。
なお、昨日の1回目に対する皆さんのコメントに対して、追記をしました。
より理解を深めるために、再度、ご覧頂けると嬉しいです。
https://newspicks.com/news/1114716
Daitaro Shiraiさん、ご指摘をありがとうございました。大変助かりました。本文修正しました。より慎重に確認作業をいたします。また、記事を前向きに評価してくださって感謝です。
(追記1)8/20 ジャカルタ時間10:50
「質」の話題が出ていますので、先にそれだけコメントします。「質」については、本連載の4回目で触れます。2回目はあくまで基礎的な数字の整理です。インドネシアの数字が大きいことは事実であり、それをどう解釈するかが「質」の問題と思います。
それをもって、インドネシアが何でもかんでも良い、とは私も思っていません。新興国にすぐに高い「質」を求めるとなると、新興国は永遠にダメだしを受け続けてしまうのではないでしょうか。連載の後半でも触れますが、東南アジア諸国の殆どは、列強から100年単位の植民地支配を受けています。
そのくびきは、現在の東南アジア経済に無視できない影響があります。先進国である日本人の目線で、質が伴わないよね、という語りよりも、東南アジア各国の目線から考えて、日本人はビジネスや投資を考えることが生産的だと思います。東南アジア以外の新興国でも当然、よい進出先・投資先はあります(究極的に新興国のリスクが高いと思えば、日本国内でのビジネスで生き残る戦略を考えることも正しい選択だと思います)。本連載は、東南アジアを推薦する、というよりは、日本にとって重要な隣接地域について、良いも悪いも知っておくこと、それを主眼に置いています。
新興国は先進国とは違う発展モデルを歩む可能性があると思います。インドネシアについて私は「遅々として進む国」だと捉えています。大なり小なり、新興国はそうだと思います。方向性がまともかどうか、そこが長期的な判断の基準かと思います。
(追記2)ジャカルタ時間 8/20 16:20
小川さん 大丈夫です!そうした意味合いではありません。こちらこそ、失礼致しました。小川さんの書き込みは、詳しい補足情報や、独自の見方を提供して下さっていて勉強になりますし、本連載の補完もしていただいています。引き続き、よろしくお願いします。日本 平均年齢 46.5歳、インドネシア28.4、インド26.6
一人当たりGDPではシンガポールが日本の2倍近くに
首都だけ見ればタイ、バンコクも日本の半分まできている
というASEANの成長を実感させる冷静な数字の分析と 一方で
「さまざまな階層の人たちに入り込むことで見える実像」を
フィールドワークから見ていく観察眼。アジアはこのどう都市に
所得差が20倍以上の開きが混在していて同居しているところが魅力。
実際バリも高給ホテルで日本並みの価格を楽しめる年収1000万以上は
日本の同所得人口と同じくらいになっている一方 バリ島の平均給与は1.5万円
平均に騙されず、この混在をしっかり捉えて成長を掴んでいくが本当に大事ですインドネシアは個人的には疑問。不動産価格はついに上げ止まり、人々の景気感も下むいてきました。不動産担保ローンのデフォルトがドミノ倒し的にクレジットクランチを引き起こす可能性があります。今後数年間については、かなり個人的には悲観的です(離島の貧しい人の生活はさておき)。まさに肌感覚でいえば、「そろそろうちらやばくね?」と言っているのがインドネシア人。
そして、長期的にどうかというと、人口という強力な資源はありますが、教育水準はかなり低い。数学・理科学力テストランキングも76カ国中69位です。
http://www.bbc.com/news/business-32608772
人口は多いので、上澄み層のクオリティは高いけれど、そういう人たちはグローバルな世界で働いているので、海外で働いていたり、自国で働いていても国境とは関係のないところで働いています。
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