2020年のソフトバンク:冷静(負債負担)と情熱(投資意欲)の間で
2015/07/13, NewsPicks編集部
「寝たフリ」のソフトバンクは何を考えているのか
2020年のソフトバンク:冷静(負債負担)と情熱(投資意欲)の間で
2015/7/13
世界トップレベルの通信環境が日本に整備された理由に、ソフトバンクの存在がある。NTTドコモとKDDIが牛耳っていたマーケットをディスラプトし、品質の底上げ、サービス内容の充実、低料金化にチャレンジ。ライバルが追随せざるを得ない状況をつくってきたからだ。通信業界の風雲児は新たな激動の前夜と言える今、何を考えているのか。通信・IT業界を長らく調査・分析し続けるアナリスト集団、ロンジンの椎名則夫氏が徹底分析する。
「2020年のソフトバンク」——。あまりに難しいテーマを引き受けてしまったと、正直に言って、後悔していないとは言えない……。私とソフトバンクとの付き合いは長く、往時のイー・アクセスは私の好きだった会社だ。しかし、筆者自身がソフトバンクの動向のすべてを細かにフォローできているわけではないし、「5G」が始動する2020年というのはやや先の話になる。
とはいえ、私なりにソフトバンクを外から見てきて考えるところを少し自由に述べ、ほかの記事とは違う観点が浮き彫りになればいいと考えている。見識のある読者に筆者の不足を補ってもらえるのがNewsPicksの良さだ。今回は、そこに甘えることにしよう。
ソフトバンクが「寝たフリ」を決め込む理由
ソフトバンクの孫正義社長は、国内通信事業について「寝たフリ」だと繰り返している。確かに、ADSLモデムを街頭で配布していた頃、ホワイトプランと端末の割賦販売を進め移動体通信事業で価格訴求をしていた頃、iPhoneを独占的に販売していた頃と比べると、今のソフトバンクは、すっかりおとなしくなってしまった。むしろ、国内の通信事業は投資フェーズから回収フェーズに移ったと言われることが多い。
ソフトバンクが「寝たフリ」を決め込む第1の理由は、やはりスプリント買収の誤算だろう。
公式に認めたわけではないが、スプリント買収は「T-モバイル」との統合が前提だったはずだ。4社体制から3社体制に寡占化を進めることができれば、見通しがかなり楽になったかもしれない。だが、現実にはそのT-モバイルと顧客を争う展開になってしまった。
スプリントが厳しいと感じる理由は2つある。第1に、ネットワークの品質改善の投資がまだかかりそうだということ。第2に、価格訴求によって顧客基盤の維持強化を図っていることだ。
その結果、営業キャッシュフローに上限がある中で、投資キャッシュフローが嵩高になる構造が続いている。ソフトバンクは「自力再建の長期戦」と称しているが、業界再編が進みホワイトナイト候補が減る中で、設備投資を続けなければならないスプリントの覚悟を物語っている。
旺盛な投資意欲。狙うは、“次なるアリババ”発掘
ソフトバンクが「寝たフリ」を決め込む第2の理由は、旺盛な投資意欲だ。
newspicks.com
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コメント
注目のコメント
椎名さんが読み物としてお楽しみ、と仰られていますが、非常に的を得ていると思います。
まず国内通信事業。これは完全に寝たふり。ソフトバンクが仕掛ければ、旧電電系の2社も仕掛ける必要がない。彼らも次の収益の柱が全くないですし、連載でやってきたようにMVNOは魅力的ではありますが、既存キャリアを脅かす存在になるにはまだまだ足りない事が多すぎる。
ひとつ見解が違うのが、スプリントの事業で資金が必要になったから、寝たふりではなく、もともと寝たふりをする予定だったと私は考えています。
威勢良く既存を壊す、と高らかに宣言して、ある一定の収益ラインは決めていたと思います。で、価格破壊を仕掛けてイメージをあげて、一定の規模まで立て直す。
安定したら、あとは次への投資のおサイフとして使い続ける。これは固定回線の参入→安定でも同じ事をしましたよね。
孫さんがソフトバンクモバイルにPepper以外最近全く言及しないのは、発表会すら出てこなくなったのは、もう国内通信の戦いが終わったと判断したから。
端末、通信設備と差別化がないため、これ以上価格競争を仕掛ける必要がない。
そしてソフトバンクは次の成長戦略は記事にもあるよう、投資戦略の企業なので、他の2社と違い、国内で狭々と国内向けのサービスを陣頭指揮取ってまでやる魅力を感じていないからでしょう。
孫さんはあくまで「投資家」で企業を成長させる人で、特定の分野を攻め込み、ひと段落したら収益源として新たな分野に行く。
NP的に言うと業界を「ディスラプト」しているようで、破壊するのは限定的にしてコントロールしていますよね。
個人的にPepperは面白いし魅力も感じますが、まだ時間はかかると思います。ハードもソフトも発展途上。ただ、クラウドに集めて学習を共有する仕組みは攻殻機動隊のタチコマの理論で、そこの部分はワクワクしてしまいました(笑)
今日は私も読み物。
私なりの見解としてまとめると、孫さんは「破壊者」ではなく「投資家」で、参入すべき分野を少しだけルールチェンジさせ、自らのプレゼンスをあげ、安定したら次へ、という経営スタイルの方なのでしょう。読み物としてお楽しみ(?)いただければ幸いです。ひとつ書き忘れたのは2020年にはHQがシンガポールにあることでしょうか。
追記:
スプリントと国内寝たふりの関係は柴山さんのおっしゃる通りですね。もっときちんと書くべきでした。
Kasakawaさんのおっしゃるように、通信料はどうかと思います。本文ではさすがに触れることはできませんでしたが、カルテル疑惑をMVNOにそらすという業界全体の老獪さには恐れ入ります。ソフトバンクさんは「事業会社の皮を被ったバイアウトファンド」でしょう。いきおい、活動は機会主義的にならざるを得ません。「情報革命」に紐づけられるテーマでありさえすれば成長領域に張り続けると言う以上に、5年も先のことを言い当てるのはそりゃ難しいお題でしょうね。
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