「5G」とは何か。「5G」で何が変わるのか
2015/07/11, NewsPicks編集部
「5G」で始まる「すべてがつながる時代」。グーグルの動きにも注目
「5G」とは何か。「5G」で何が変わるのか
2015/7/11
次世代モバイル環境を想像したとき、ウエアラブルデバイスやスマートフォン、そしてクラウドの進展に目がいきがちだ。しかし、ネットワークが増強されなければ、それらの先進的なハードウェアやプラットフォーム、そして魅力的なコンテンツを生かせない。すべてのモノがネットにつながるIoT(Internet of Things)のカギを握るのは、近未来ネットワーク技術「5G」である。
5Gは意外に侮れないテーマ
5Gに関連するニュースが増えてきたが、NECや富士通、アンリツなどのIR担当者などに取材すると、「いや~、4Gですらこれからなのに、5Gはまだまだ先でよくわからないよ」といった答えがほとんどだ。
確かに、5Gは2020年に商用化を目指すとされているが、3GPP(世界の通信方式を標準化するための組織)やITU-R(国際電気通信連合 無線通信部門)による標準化作業はまだ開始しておらず、使用する周波数帯も決まっていないため、こうした答えとなるのは仕方がない(IR担当者の勉強不足では決してない)。
今のところ、日本の株式市場の5Gに対する食いつきはよくない。
その理由はいろいろと考えられる。ひとつは過去の苦い経験だ。NTTドコモは2001年に世界で初めて3Gを商用化し、先行した強みを生かしての世界制覇を狙ったが、それは夢に終わった。加えて、そもそも「2020年ごろに商用化」というタイムフレームが株式市場には長すぎるのかもしれない。
だが筆者は、「5Gは意外に侮れないテーマではないか」と考えている(まだ、予感の段階ではあるが)。その理由は、5Gは単純に現在の4Gの延長ではなく、IoTや自動車の自動走行、リアルタイム通訳などを支えるインフラになる可能性があるからだ。
このことは、欧州の5G研究プロジェクト組織であるMETIS(Mobile and wireless communications Enablers for the Twenty-twenty information society)に、伝統的な通信キャリアや通信インフラ機器メーカーだけでなく、自動車メーカー(BMW)が参画していることからも、感じ取れると思う。
5Gのスタートは2020年ごろから
5Gの正式な標準化活動はまだ始まっていないが、日本や欧州、中国、韓国ではそれぞれ5Gのプロモーション組織が立ち上がっている。5Gの目指すべき方向性やコンセプトに関する議論が行われ、標準化に向けた準備が進行中だ。
下図に示したように、移動体通信技術は、1G(1980年代、アナログ・音声)、2G(1990年代、デジタル・音声)、3G(2000年代、モバイルブロードバンド化)、4G(2010年代、モバイルブロードバンドの発展)と10年ごとに進化してきた。このためか、5Gは2020年からということが業界ではすでにコンセンサスとなっている。
ちなみに、韓国は2018年の冬季オリンピック、パラリンピック、日本は2020年のオリンピック、パラリンピックを5G商用化開始のターゲットとしている。
5Gが目指す姿
現時点で、業界のコンセンサスとなっている5Gのキーワードは、超高速スループット、低遅延、高信頼性である。その実現のために必要な技術要件は、以下の5つにまとめられる。
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コメント
注目のコメント
比較的、いやかなり難しい分野をよくまとめていると思います。
まず、この手の議論で出てくる「速度よりも容量制限」の論調を補足しておくと、容量制限の撤廃(緩和)の打ち手は「速度アップ」が解決方法です。
電波は同一基地局内にいる人で「分け合っている」ので多くの人が長時間データを取得すると、他の人が全く「つながらない」。速度アップすれば当然、そのデータ取得時間が圧倒的に短くなり、占有時間が減るため、多くの人がつながる。結果キャリアは制限をしなくて良くなる。
ここはセットなので、5Gの効能は改めてお伝えしておきます。
【周波数】
何で高周波数帯なのか?
5Gは様々な技術が組み合わさって最大10Gbpsですが、やっぱり速度を出すために有効なのは電波の中でも周波数の「帯域幅」。いわゆる「道路の広さ」です。10Gbpsが先行していますが、10Gbpsを出すためには「1000MHz幅」(LTEは現行最大20MHz)が必要で、こんな広い道路は通常の周波数帯では空いていません。
20MHz幅をそれぞれ割り当てるために、MNOが3社しかない、というのもそういった事情背景からです。
なのでその解決手法が「超高周波数帯」。こちらは比較的まだ空いているのと、単純に数値が大きいので、大きな幅が取りやすい。とはいえ、1000MHz幅はちょっと現実的ではないので、どこまでの幅をどのように割り当てるかによって速度が変わります。
【難しくて申し訳ありませんが、続いて「基地局の設計」】
まず、もう一つ誤解を解きたいのが、5G=高周波数帯のサービスではありません。既存の電波に近いところでも、帯域幅以外の5Gならではの技術的恩恵が受けれるので、比較的低い周波数帯でも5Gは提供される見込みです。単純に「ものすごい速度」ではないですが、今のLTE(4G)より何倍も早くなりますし、1基地局の収容ユーザー数も増えるため、4Gよりはるかに速度制限の可能性は減ります。
とはいえ、超高速の高周波数帯。こちらは高周波数帯になると「電波の届く範囲」が極端に小さくなります。これって、デメリットではありますが、キャリアの努力によりメリットにも返れます。
方法としては「小さな基地局を大量に設置」。方法はフェムトセルや光張り出しなどがありますが、とにかく小ゾーン、大量基地局。コスト削減したシステムが必須にはなりますが、この方法をおそらくキャリアはとるでしょう。
上記のユーザーメリットは「1つの基地局に入る人数が減る=基地局シェアする人数が減る」ので、速度は出やすいですし、結果的には通信料制限の緩和に繋がりやすいです。
デメリットは基地局の移動が多くなるので、電池消耗など諸々。。。もちろんコストも。
そして、同一周波数の基地局間は「電波の干渉」が起きるので、そこの整備やキャリアの設計の難易度も高いのは事実としてあります。ただ、キャリアは乗り越えてくれるでしょう。
【3Gのくだりの世界基準について】
これはちょっと語弊があるように思いますが、長文になるので割愛。
確かにサービス当初はW-CDMAの推進役としてドコモが少しだけ日本仕様にしましたが、もうそれはとっくに解消されています。
日本のメーカーが海外に展開できないのは、ちょっと理由が違うのが私の見解です。
【OTTへの見解】
たぶん、OTTはNPの皆様は好きでしょう。GoogleやFacebookなどの参入を期待するでしょう。しかし通信網整備の最大の壁は実は「基地局を置く場所(置局)」の折衝。いわゆる置く場所の確保で、これは当然アナログの交渉なので、膨大な人と時間が必要です。なのでそれほどOTTが参入するメリットはGoogleなんかは感じていないように思っています。
何にしても難しい技術。2020年を目標にしていますが、そこから基地局の全国展開(当初は限られた地域からスタート)、端末が2020年に発売されるとすると、だいたい多くの人が享受できるのはそれ以降の新機種になるので2~3年はかかること、5Gはようやく2020年に「スタートラインに立つかも」ということですね。
(追記)
小室さん、みなさま>
確かにネットワークって専門分野過ぎるので、なるべく専門用語を使わないようにしてますが、それにしても私のコメントは複雑怪奇で伝わらないですね。。。
明日からも出来る限りコメントはしますが、なるべく記事を汚さないよう、シンプルに各論をついたコメントを心がけます。周波数の話など,柴山さんが非常に詳しくまとめて下さっているので,ちょっと違った視点の理系的なコメント.
こんな便利な周波数帯がなぜこれまで空白だったのか?に関する技術的な話.うちの研究室でテラヘルツ波の研究をしていた助教が言っていて,なるほどなぁと思ったのでご紹介.
通信で使うマイクロ波も可視光も電磁波です.ところが両者は特性が違うので扱い方が変わります.マイクロ波はアンテナで送受信しますが,光でアンテナというのは聞いたことが無いかと.逆に,光は鏡で反射したりガラスで屈折したりしますが,マイクロ波については,そういう対応する材質のものはありません.
で,この10GHzくらいからテラヘルツくらいまでの領域は「光として見るには波長が大きすぎて,逆に電波などの回路として見るには波長が小さすぎる」ということだったわけです.
電波として見た場合には,これまでの回路を小型化すれば良いはずですが,数ミクロンの長さのズレが大きく効いてきてしまう世界です.また減衰が大きく,なかなか既存のものの小型化で対応できる話ではなかったのだと思います.逆に波長の長い光として見ればいいかというと,LEDのような仕組みで電磁波を発生させることが難しいと.そういうことで,このあたりの周波数帯は使い勝手が悪かったということのようです.
近年の回路の微細化技術等の進歩により,精密な回路の小型化ができるようになってきたことで,徐々に周波数帯が上にシフトし,利用できる通信帯域が広がってきているという理解です.
ただし,物理的な法則は変えられません.2.4GHzに比べたら減衰は大きくなりますし,直進性は高くなります.そこは,柴山さんやKasakawaさんが指摘されているように,運用でカバーすることになるんだと思います.IoT考えたときに、容量大きいこと・低消費電力と、届く範囲が狭いことのトレードオフが気になる。つながることが前提でIoT自体は数が増加するが、個々のデータ量はそこまで大きくないのではという気もする。
LTEという言葉、10年弱前に聞き始め、2012年のiPhone 5で搭載され、10年弱経った今、先進国では普及した。その時間軸考えると、2020年に幾つかのモデルが出始め、2025年頃に普及してる感じだろうか?
こういった進化、改めて考えると物凄いことであり、技術開発や普及に関わられてる方に敬意。
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