進撃の中国IT

「勝ち」の秘訣は価格だけではなかった!

「西へ西へ」、インドを目指す中国スマートフォン

2015/6/30
4月末にシャオミはインドでスマートフォン「Mi4i」を発表した。記者会見の席上、雷軍CEOは「準備はいいかい?」と、インドのシャオミのファンに呼びかけた。最近はいつものようなネットプロモーションではなく、新聞6紙に広告を掲載するというさらなるキャンペーンを仕掛けている。そして、国際事業を担当するヒューゴ・バラ副社長も自身のツイッターアカウントで、現地の英字紙「ザ・タイムズ・オブ・インディア」のトップページに掲載されたシャオミの全面広告を披露した。

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サムソン、iPhoneを経たインド青年の目を釘付けにするシャオミ

「お願いがあるんだけど、中国でMi4を手に入れてもらえない?」

数日前のことだ。フェイスブックを開くと、長らく音沙汰がなかった友人のワリスからこんなメッセージが届いていた。2年前に知り合ったとき、彼が使っていたのはサムスンの携帯電話で、何度も写真を撮ってあげた。その半年後、「商売がうまくいったので自分へのごほうびにiPhone 5SとiPadを買った」とフェイスブックに書き込んでいた。そのインド人青年が、今度はシャオミに夢中になっているらしい。

昨年7月にインドのスマートフォン市場参入を果たしたシャオミは、すでに4%のシェアを獲得。ブランド別シェアで第5位にランキングしている。バラ副社長も雷軍CEOも、「2015年、シャオミ最大の海外市場はインドだ」と繰り返し公言している。

もっとも、インドを狙う中国スマートフォン・メーカーはシャオミだけではない。中国市場が飽和状態になり、「魅族」「クールパッド」「レノボ」「OPPO」などの中国メーカーも目を海外に向け始めた。そしてそのほとんどが、まずインドに目をつけた。たんに隣国だからではない。インドが持つ巨大な市場の潜在性に引きつけられてのことだ。

英国の市場調査会社、バーンスタイン・リサーチが先日発表したリポート「インド:スマートフォン市場で中国の次に来る国」には、今後5年間でインド市場のスマートフォン出荷台数は倍増し、米国を抜き、中国に次ぐ世界第2位のマーケットになると示している。これは決して大げさな予測ではないとアナリストのマーク・リー氏は指摘。「インドのスマートフォン普及率はわずか30%で、成長の余地はまだまだ膨大だ」と述べる。

もちろんすべてのメーカーがインド市場の潜在力に注目している以上、激烈な競争が展開されることは間違いない。

シンプルかつ粗暴な価格競争へ

目下、インド市場のシェアで一二を争うポジションにつけているのはサムソンだが、中国メーカーの突き上げのプレッシャーをひしひしと感じている。6月19日にシャオミが、モデル「Mi4」の価格を5000ルピー(約1万円)引き下げると発表すると、サムスンもただちに追随。「Galaxy Grand Max」の価格を6000ルピー(約1万2000円)引き下げると発表した。

インド市場のシェアは、現時点ではサムスンとインド企業のマイクロマックスがトップ争いを繰り広げているが、3位のポジションはめまぐるしく入れ替わっている。「ザ・タイムズ・オブ・インディア」紙によると、その地位を巡ってシャオミとモトローラが最大の競争を続けているという。

一方で、インドのスマートフォン市場は平均単価が安いという明らかな特徴がある。一般に100ドルを超える製品はほとんどない。ゆえに、低価格機はインド市場攻略戦略のトップ候補だ。

このインド市場の特性は、「コストパフォーマンスの高さ」が売りのシャオミにとっては明らかにプラス要因だ。だが、さらに続々とインド市場に参入した「ZTE」「クールパッド」も無視できない競争相手である。

ポイントのひとつはリアル店舗展開

シャオミはネット販売を中心にインドに進出したが、インドの市場ではオフラインのリアル小売店が販売の主要ルートになっている。ネット普及率が低く、人口の約70%がネットの普及が進んでいない地域に住むインド。リアル店舗以外の選択肢がない人も多いのである。

そこでシャオミは、宣伝スタイルを転換し新聞やテレビに広告を出したほか、販売モデルの修正にも取り組んでいる。米メディア「ウォール・ストリート・ジャーナル」によると、インドの大手携帯電話販売チェーン店の数社と販売提携の交渉が行われているという。

小売店が販売の中心というインド市場の特徴は、「OPPO」や「GIONEE」など、主に小売店や携帯電話キャリアを販売ルートとする中国携帯メーカーにもビジネスチャンスとなる。OPPOやGIONEEの一部機種はここ数年、ランキングトップ10に食い込む人気を見せている。

「思わぬ成功」を収めたワンプラス

インドは、中国の廉価スマホブランド「一加 OnePlus」(ワンプラス)にとって海外出荷台数最大の市場に躍り出た。そのことは同社の創始者である劉作虎CEOにとっても意外だった。上述した「低価格」「実店舗販売」というインド市場の特徴をフォローしていなかったにもかかわらず、思わぬ成功を収めることになったのである。

劉CEOによると、ワンプラス成功の秘密はアマゾンとの独占契約というかたちでインド市場に参入したことだった。実際にはそれ以前に、米国や欧州でブランド基盤を確立していたことによるブランドセールスの結果だ。

劉CEOは以前、「インドは重要な海外市場ではあるが、ワンプラスの価格ポジションは明確で、インドでも(売れ筋とは違う)ミドルレンジからハイエンドを狙いたい」と語っていた。

いかなる姿勢で市場に臨むにせよ、中国携帯メーカーはほぼみんな「インド進軍」のスローガンを叫んでいる。そこからインド国民は、最後にどのメーカーを選ぶのか。じっくり眺めていようじゃないか。

(執筆:高晨/ifanr.com、翻訳:高口康太)

※「進撃的中国IT」は今回をもちまして連載を終了いたします。ご愛読ありがとうございました。

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