【社長直撃】再生医療のサンバイオ、新薬で悲願達成も株急落の理由
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注目のコメント
脳梗塞や外傷性脳損傷の治療薬として注目を集めてきた再生医療のスタートアップ、サンバイオの製品がついに製造販売の承認を受ける見通しになりました。
しかし、そこには異例の「条件」がついていました。この条件に落胆した投資家は、サンバイオ株を一斉に売っています。
せっかく薬が世に出るはずなのに、なぜこんなことになっているのか。経緯とともにこの事態を受けての社長のコメントを紹介します。記事中でコメントさせていただきました。本当に異例の対応です。厚労省の部会後の記者レク直前に送付されてきた資料を見て目が点になりました。
承認するが、通常出荷は認めない事例は抗インフルエンザ薬のアビガンの時にもありましたが、これは催奇形性(妊娠中の服用で胎児に奇形が生じる)という重大な副作用が予想されたための対応。
その意味で今回のアクーゴは「形式上承認、実質承認保留」です。
そして記事中の森社長のご発言には厳しいようですが、メディアに対する責任転嫁が過ぎると感じます。
「8カ月から10カ月後に準備していこうという(当社の意向が)すっぽり抜けて」とありますが、そもそも一昨日夜の厚労省による記者レク後、昨日の市場が閉まるまで同社からこの情報は一切開示されていません。
異例の承認ゆえにいつ出荷可能になる見込みかをサンバイオ側が即座にリリースしていれば、必ず記事に盛り込まれたと思います。
もっともそれがあったとしても、あくまで「異例」の承認で不確定要素が残るため、投資家の多くが売り判断した可能性は十分にあります。
そして今回に限らず、同社の情報発信にはやや課題があると感じています。
過去に何度も承認取得目標時期を変更し、今年3月に厚労省の部会でアクーゴについて「承認の可否は議論せず、今後の方向性を話す」と明言していたにもかかわらず、部会直前の決算会見では記者やアナリストの質問に「異例のことなので何が起こるかわからない」と、直前に公表していた「2024年3月承認目標」を変更しませんでした。
昨日朝の一報目のリリースも条件付き期限付き承認のみを公表し、当面出荷はできないことは不記載でした。マーケットや患者さんを誤解させる情報発信で、率直に言って不誠実です。
記事中にある「ベンチャー企業にとって、承認(のための要件など)が非常に見えづらく、不確定要素が多い中で経営を続けるのは困難」はわかります。同社はMSワラントを中心とした資金調達をしているので余計そうでしょう。ですが、もう少し情報発信を考えるべきです。
同社株価の乱高下のチャートは、投資家からすればゲームの結果にすぎないかもしれませんが、この薬を待つ患者さんにとっては落胆と期待の心理変化そのものです。上から目線で恐縮ですが、もう少し患者さんの気持ちに寄り添った対応をして欲しいと思います。株価はさておき、臨床試験の結果で最も注目すべき主要評価項目では、たしかに「統計学的な有意差」が見られているものの、統計学的な有意差はあくまで机の上の話であって、診察室の話ではありません。
試験で用いられた評価方法で8点の差というのは、患者さんレベルでの意味のある差とは必ずしも言えず、それで本当に株価が急上昇するほどの期待をかけられて、現場で使用されていいのかという疑問が残ります。
いまだに「国産だから」優遇されているのであれば、グローバル視点では、日本のサイエンスは取り残されていくことになるのではないでしょうか。治療薬が求められている領域であることに間違いはありませんが、だからといって何でもかんでも使ってよいわけではありません。