「下請け」は差別的?改名案浮上 公取委、20年前は見送り
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下請けは英語でも「Subcontractor」という言葉が存在しますが、本来は、下請けのポジションが必ずしも高収益を得られないわけではありません。
競争戦略のフレームワークでは、「事業の中心」と定義した企業から見て、(1)原料やサービスの供給者を売り手、川上、上流などと呼び、(2)商品を販売する先を買い手、川下、下流などと呼びます。
「事業の中心」から見て売り手は下請けのポジション、買い手から見て「事業の中心」は下請けのポジションです。お客様から見て、商品・サービスの販売者は弱いかというとそうでもなく、条件次第で強くも、弱くもなります。
売り手は常に弱いかというとそうではありません。売り手が強くなるケースは以下にあげる条件を満たすときです。
・売り手市場が数社で寡占されている
・売り手企業から見て、取引先企業は重要な買い手とみなされない
・売り手の製品には競合する代替品が少ない
・売り手の製品が差別化されている
・売り手製品が買い手製品の品質に大きな差をもたらす
・買い手が最終ユーザーの意思決定を左右できない
買い手が売り手(下請け)より弱くなる例としては、
・ダイヤモンド原石企業に対する宝飾品メーカー
・自動車メーカーに対する自動車販売会社
・PCの部品であるCPUメーカーやグラフィックボードメーカーに対するPCの完成品メーカー
などがあり、必ずしも買い手が弱いわけではありません。
以前、日本のカーエレクトロニクス企業の海外工場見学に招待いただいたことがあります。自動車の電装と自動化に大きく貢献していると自負し、「自分たちなくしては車は作れない」と聞いたので、「自動車メーカーに代わって、電気自動車をつくれば?」と尋ねました。その質問で即座に顔色が変わり、「自動車メーカーさんとの関係が崩れる。あり得ない」と叱責に近いコメントをもらいました。
その後テスラやアップル社の自動車販売が本格化しました。日本の多くの企業は、大手企業でも関係構築を最も重視するようです。一方で、欧米は違うという印象を持っています。競争戦略を理解すれば、下請けという言葉がナンセンスであることがわかります。