時差ぼけや暴飲暴食の特効薬? 休暇中に点滴を受ける人が増加中
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点滴は、医療者と非医療者の認識のギャップが最も大きいものの1つだと思います。「点滴は魔法の薬」と思っている方もいるかもしれませんが、入っている中身は水、塩分、ビタミン剤程度です。腸が普通に機能している人であればそれらを口から飲むのと何ら変わりありません。また、ビタミン剤が二日酔いや時差ボケに効くという十分なエビデンスはありません。そればかりか、高容量のビタミンなどが注射されることにより十分にわかっていない副作用が起こる可能性もあります。
二日酔いや時差ボケに共通しているのは「時間が経てば自然に良くなる」という点です。点滴を開始してから終えるまでに数時間かかるため、その間横になって寝ていれば、それらの症状は自然に軽快するのです。点滴を受けた多くの人は「効果があった」と感じるというからくりです。ビジネスの観点でいえば良い点に目をつけたとも言えますが、医療者からすればただお金を溝に捨てている行為だと感じます。医師の立場からは、明らかに時差ボケや暴飲暴食に点滴が良いとは言えません。
まず、点滴療法は、適切な医学的評価と診断に基づいて行われるべきです。健康な個人に対して不必要な点滴を行うことは、リスクとベネフィットのバランスを考えると、必ずしも推奨されるものではありません。特に、感染症のリスクやアレルギー反応など、点滴には潜在的なリスクが伴います。
次に、暴飲暴食や時差ぼけの対策としての点滴は一時的な対症療法に過ぎず、根本的な解決にはなりません。健康を維持するためには、バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠が基本です。これらの生活習慣を無視して一時的に点滴に頼ることは、長期的な健康維持にはつながりません。
また、点滴療法を気軽に受けることが、健康に対する自己管理の重要性を軽視することにつながる懸念もあります。旅行中の健康管理は、適度な飲酒と食事、十分な水分補給、そして規則正しい生活リズムを維持することが基本です。
最後に、旅行者が点滴療法を受ける場合でも、必ず信頼できる医療機関で、医師の診断のもとで行うことが重要です。自己判断での点滴療法は避けるべきです。
以上の点を踏まえ、旅行者の健康を守るためには、基本的な健康管理を徹底し、必要に応じて適切な医療機関で相談することをお勧めします。中身がなんであれ、それらが点滴をすることによって時差ぼけに効果をもたらすというメリットは知られていません。
一方、点滴を受けることには一定の確率でのリスクを伴います。以下はリスクを説明した記事の文章の引用です。
「点滴を打つのは多くの場合、看護師や資格を持つ専門家だ。ただ、(病院のような)厳格な規則のない環境での点滴は、滅菌の不十分な器具を使用することによる感染症や、副作用や合併症を引き起こすリスクがあるとして、カクテル点滴の流行を懸念する医療関係者もいる。たとえば、高濃度のビタミン注射は場合によっては腎臓に大きな負担をかけてしまう恐れがある。人体に必要なビタミンは微量だと主張する声も多い。」
日本でも同様のビジネスが存在し、喜んで高額を支払う消費者もいますが、口からものを何も取れない状況でなければリスクベネフィットの天秤がベネフィットに傾く可能性は低く、残念ながらコスパの極めて悪い、医療行為に見せかけた非医療行為だと思います。