太陽フレア、3日間で5回の“Xクラス” NICT「早ければ10日午後6時ごろから影響」
AI要約(β版試験運用中)
- 15月7日ごろから大規模な太陽フレアが頻発し、NICTが注意を呼び掛けている
- 2太陽フレアによってGPSや長距離通信に障害が発生する可能性があり、10日午後6時ごろから影響が出る見通し
- 3NICTは、太陽フレアによる影響に備えて臨時ページを公開する予定
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注目のコメント
院生時代に太陽フレアの研究をしていました。少し解説します。
太陽フレアの大きさは、太陽から観測されるX線のフラックスで定義されることが多いです。X線のフラックスが大きい順にX>M>C>B>Aとランク付けされます。一般にMクラスで立派なフレア、Xクラスで激しいフレアというイメージです。
同じXクラスでも、X1, X2, X3,...とランクが細かく別れていて、数字が大きいほど大きなフレアになります(XnフレアはX1フレアのn倍のX線フラックス量があります)。今回のフレアはX1〜X2のクラスですので、最強クラスのフレアであることには間違いありませんが、その中では比較的落ち着いている方と言えるかもしれません。(観測史上最大のフレアは2003年のX28です)
フレアは地震などと同様に、小さな規模のフレアほど頻度が多く、大きな規模のフレアほど珍しいです。通常、Xクラスのフレアは年に数回程度の頻度ですので、今回のように連続してXクラスのフレアが見られることは珍しいと言えるでしょう。
Xクラスのフレアになると、人工衛星や地上の電気系統に影響を与えることがあります。フレアからの放出物は3種類存在し、それぞれ地球に到達するまでの時間が異なります。
①電磁波(8分19秒)
②高エネルギー粒子(30分-数日)
③太陽周囲のプラズマ(2日後-)
特に②と③は地球への到達時刻を正確に予測するのは難しく、盛んに研究が進められています。
なお、大規模な太陽フレアが起きた時に人工衛星がとれる対策は
・電源をオフにする
・重要な操作を行わない
などがあります。太陽フレアの放出物が到達するタイミングが正確に分かるようになれは、人工衛星が制限される時間が短くて済みます。太陽フレアが発生することで電磁波が発生します。
電波はこの電磁波の影響を受けるため、スマートフォンなどのモバイル機器が繋がりにくくなったり、その他無線機器などにも影響が出る可能性があります。(音も、電波も、光も並なので全てに影響が出る可能性があります。)
少し速度が遅くなるなどの影響が出た場合は、太陽フレアのせいかも?と思ってください。
また、オーロラなどもこういう波の影響ですので、普段見れない地域でも見れるかもしれません。こうした太陽フレア等による影響を広報し事前に対策を取る仕組みとして、宇宙天気予報という仕組みが作られつつあります。人工衛星や宇宙船への影響だけではなく、高緯度地方を中心に地上の送電線やパイプライン、また短波通信や高緯度を飛行中の航空機への影響も考慮すべきであるとしてICAOでも方式設計が検討されています。
太陽活動はGW終盤の5月5日未明から活発になっておりNICTからのメール配信もあわただしくなっていました。まさに日本時間の11日未明から地球にも影響が出始めており、NOAAでは地磁気についてG4という最大級の一歩手前のクラスで警戒を呼び掛けています。2005年以来19年ぶりのことです。
日本付近でもデリンジャー現象やスポラディックE層などといった形で一部で影響が出始めています(まだ電波異常の範囲ですが)。
現在の太陽活動周期は第25活動周期にはいっており、その中でもピークを迎えつつあります。一連の活動は、今後も少なくとも数か月にわたって活発な状態が続くことが見込まれ、特に高緯度地方では送電網やパイプラインへの顕著な影響が発生しないかについて神経質になる場面もありそうです。
ちなみに宇宙天気予報といいつつ日本においては所管は気象庁ではなく総務省の情報通信研究機構(NICT)とされています。欧米ではSpace Disasterとしてスペースデブリや天体衝突へのパッケージとして安心安全を提供するサービスとして商業化されているとのことですが、我が国では目立った存在はまだありません。天気予報を生業としている人間として何かできないかと考えています。