(ブルームバーグ): 神田真人財務官は、29日の外国為替市場で円相場が急変動したことに関して、投機による過度な変動で看過できないと述べた。為替介入についてはコメントしなかった。円が1ドル=160円台と34年ぶりの安値を更新し、日本による円買い介入への警戒感が高まる中、市場では覆面介入を指摘する声が一部で出ていた。

神田財務官は、週末以降の円の動きは「投機がもたらす過度の変動だと見える」と指摘。「投機による激しい異常とも言える変動が国民経済にもたらす悪影響には看過しがたいものがある」と語った。その上で、為替介入の有無については「ノーコメント」と言及を避けた一方、「24時間365日、平時であっても対応できる準備をしている」と語った。省内で記者団の質問に答えた。

円相場は午前に対ドルで一時1ドル=160円17銭を付けた。その後は日本市場が休場で流動性が低下し値動きの幅が大きくなりやすい中、159円台での動きがしばらく続いていたが、午後に入り急反発。夕方には154円台まで断続的に上昇幅を広げる場面があった。財務官の夕方の発言前後は155円台後半で推移している。

野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは同日付リポートで、「覆面で為替介入が行われた可能性は比較的高い」と指摘。28日の衆院補選で自民党が全敗し、政府は「円安対応を行ったとの証拠づくりを国民向けに行い、支持の回復を狙う必要が出てきた可能性もある」との見方を示した。ただ、介入効果は時間稼ぎでしかなく、早晩160円を超える円安に戻るとしている。 

日米金利差に着目した円売り・ドル買いが続く中で、26日の金融政策決定会合で日本銀行が金融政策の現状維持を決めたことも円買いを加速させていた。会合後の会見で植田和男総裁は、円安の物価への影響について、2024年度物価見通しの上方修正に円安の影響が若干含まれるが、「今のところ大きな影響を与えているということではない」などと発言していた。

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--取材協力:テソ由美、間一生、占部絵美、伊藤純夫.

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