(ブルームバーグ): 全国の物価の先行指標となる4月の東京都区部の消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比上昇率の伸びが大幅に鈍化し、2%を割り込んだ。食料品価格の伸びが引き続き鈍化したことに加え、東京都による高校授業料の実質無償化が影響した。

総務省の26日の発表によると、コアCPIは前年同月比1.6%上昇と、前月の2.4%上昇から伸びが鈍化。プラス幅の縮小は2カ月連続。日本銀行が掲げる物価目標の2%を3カ月ぶりに割り込んだ。市場予想は2.2%上昇だった。生鮮食品を除く食料は3.2%上昇と9カ月連続で伸びが鈍化。東京都が4月から高校授業料の実質無償化を開始したことから、指数をさらに0.51ポイント押し下げた。総務省によれば、授業料無償化の影響を除いた場合のコアは2.1%上昇。

今回の落ち込みは授業料無償化という特殊要因が主因。一時的な統計の振れが日銀の政策判断に影響を及ぼす可能性は低いが、緩和的な金融環境が継続するとの見方から円安圧力が強まりかねない。同日の決定会合では現状維持が予想されている。円安の影響を含めたインフレ圧力が意識される中、円安が物価の基調に影響すれば政策変更の理由になり得るとする植田和男総裁の記者会見に注目が集まる。

明治安田総合研究所の小玉祐一チーフエコノミストは、食料品やエネルギー価格の動きからすると「円安による輸入価格の押し上げの影響は今のところ目立っていない」と指摘。全体的に基調的な物価上昇率が上がっているようには見えず、今会合で日銀が利上げすることはないと予想した。ただ、足元で為替が注目される中、「為替要因で早ければ7月にも利上げというのはあるかもしれない」との見方を示した。

生鮮食品とエネルギーを除くコアコアCPIは1.8%上昇と、前月の2.9%上昇から減速。市場予想は2.7%上昇だった。

東京CPI発表後の外国為替市場では円がやや売られる場面も見られた。現在は1ドル=155円60銭台で推移している。モルガン・スタンレーMUFG証券は、東京CPIが特殊要因で大きく低下する可能性があり、為替市場が反射的に反応するリスクがあると指摘していた。

東京CPIで為替市場が反射的に反応するリスク-モルガンMUFG

賃金動向を反映しやすいサービス価格は0.8%上昇と、前月の2.0%上昇からプラス幅が縮小し、2022年12月以来の低い伸びとなった。今年の春闘で平均賃上げ率が33年ぶりに5%を超える中、賃上げ分を価格に転嫁する動きが今後進むか注目されている。

大和証券の岩下真理チーフマーケットエコノミストは、基調的な物価の中ではサービス価格が上がっていくかを見ることが大事だが、「一般サービスをこのところ動かしていたのは宿泊費と外国パック旅行費で、それ以外に広がりが見えているかというと、まだそれほどない」と指摘。「春闘の期待以上の賃上げ率がサービス価格に十分反映されていくには時間をかけて見極めていく必要がある」と語った。

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--取材協力:野原良明.

(詳細とエコノミストコメントを追加して更新しました)

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