(ブルームバーグ): 3月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比上昇率は2カ月ぶりに鈍化した。日本銀行の金融政策決定会合を来週に控え、政策金利を引き上げる時期を巡る市場の関心が高まる中、経済・物価情勢を見極める局面が続きそうだ。

総務省の19日の発表によると、コアCPIは前年同月比2.6%上昇した。市場予想では2.7%上昇が見込まれていた。政府による電気・ガス代負担軽減策の影響が一巡しているエネルギーが、資源価格の上昇などを背景に0.6%下落とマイナス幅が縮小し、指数の押し上げ方向に働いた。一方、生鮮食品を除く食料は4.6%上昇と7カ月連続で鈍化した。

コアCPIは24カ月連続で日銀が掲げる物価目標の2%以上で推移している。植田和男総裁は10日、物価見通しのリスクは「ダウンサイドリスクの方が低くなり、基調的な物価上昇率が2%に収束していく可能性が高まった」と指摘していた。今月25-26日の決定会合で現状維持が予想される中、経済・物価情勢の展望(展望リポート)で示される物価見通しのリスクバランスの判断に注目が集まる。

明治安田総合研究所の小玉祐一チーフエコノミストは、円安の長期化に加え、「中東情勢の不透明化に伴い原油価格などに上昇圧力がかかっており、先行き食品価格が上昇するリスクがある」と指摘。「円安・物価高のトレンドが大きく崩れない間に少しでものりしろを確保しておきたいという気持ちは日銀にあると思う。意外に動くのは早いのではないか」と述べ、次回の利上げを7月会合と予想した。

円安による輸入物価上昇、基調物価に反映なら政策変更-日銀総裁

生鮮食品とエネルギーを除いたコアコアCPIは2.9%上昇と7カ月連続でプラス幅が縮小した。3%を下回るのは2022年11月以来、16カ月ぶり。市場予想は3%上昇だった。

ブルームバーグ・エコノミクスの見方

「われわれは、日銀が7月会合で政策金利を現在の0-0.1%から0.15-0.25%に、10月会合で0.4-0.5%に引き上げると予想している。これはインフレが今後勢いを失った場合に政策の余地を与えることになる」

木村太郎シニアエコノミスト

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賃金動向を反映しやすいサービス価格は2.1%上昇。前月(2.2%上昇)からプラス幅が縮小したが、9カ月連続で2%以上を維持している。総務省によると、外食などコストに占める財の比率が高い分野のプラス幅が縮小しているが、一部の外食の価格改定では人件費への言及もあった。今年の春闘で平均賃上げ率が33年ぶりに5%を超える中、今後は賃上げ分が価格に転嫁されるかが鍵を握る。

植田総裁は3日の朝日新聞とのインタビューで、「夏から秋にかけて春闘の結果が物価にも反映されていく中で、目標達成の可能性がどんどん高まっていく」と発言。 元日銀理事の門間一夫みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミストは、日銀の金融政策運営を占うための最重要指標に4-6月のサービス価格を挙げ、「ここに今年の賃上げが反映されてくるか」を注視している。 

ブルームバーグの最新調査では、76%のエコノミストが今回の展望リポートにおける物価見通しのリスクバランスの判断が従来よりも重要になると回答した。24年度のコアCPI見通しについては予想中央値が2.6%と、前回1月リポートから0.2ポイントの上方修正が見込まれている。

総務省の説明

  • 前年・今年ともに政府の電気・ガス価格激変緩和対策事業が無かったと仮定した場合、総合の前年比は2.2%上昇、コアは2.1%上昇
    • 3月の同事業のコアに対する押し下げ効果は0.51ポイント
  • 3月のエネルギーが前月からプラス寄与となったのは、資源価格の上昇を受けて電気代と都市ガス代の下落幅が縮小したため
  • 生鮮食品除く食料では、鶏卵が需給の緩みから鈍化傾向にあり、前年比でマイナス3.6%と下落転換。外食のフライドチキンは昨年3月の価格上昇の影響がはく落
  • 宿泊料は27.7%上昇とプラス幅が縮小。1年前に実施されていた全国旅行支援について、昨年3月は2月と比べて適用日数が少なかったことも要因
  • 今年の春闘の結果がこれから出てくるが、サービス価格に反映されるのはさらに後になる。今後の動向を注視したい

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--取材協力:氏兼敬子.

(エコノミストコメントを追加して更新しました)

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