【基礎から解説】イランのイスラエル攻撃で、次に起きること
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イランは今回の攻撃について、事前に米国に通告し、トルコなど近隣諸国にも72時間前には通告し、「限定的なもの」だと説明していたようです。
イランは、イスラエルに対して、直接攻撃できる能力と意志があることを示し、「報復しなければこれ以上の攻撃はしない」旨通告することで、イスラエルに自制を促しているようです。
しかし、被害は軽微だったとはいえ、本土を攻撃されたまま何もしなければ、”イスラエルがイランに抑止された形”になってしまいます。このまま力の均衡が固定化されることをイスラエルは許容できないはずですので、何らかの報復攻撃をするものと思っています。
今後のイスラエルの出方に注目です。まず、大前提として、1979年に起きたイラン革命と、その後のイランの西進があります。
イラン革命は、シーア派の中では、長く途絶えていた「イスラームの統治」をイスラーム学者のホメイニーが復活させた出来事です。
革命の後に軍事的大行動が始まるのは、フランス革命の後のナポレオンによるヨーロッパ席巻、ロシア革命の後のソ連の東ヨーロッパ席巻など、歴史を通して繰り返されてきたことです。
「イスラームの統治」とは7世紀にアラビア半島で始まったムハンマドの革命のことで、彼と後継者たちの軍事的大行動は、スペインから中央アジアまでを席巻しました。
イラン革命の翌年、1980年にイラン・イラク戦争が勃発しました。
以後、イランは、西進を開始し、40年かけて、イラク、シリア、レバノン、イエメンまでを影響下に置くようになりました。
この西進は、メッカを占領し、イスラエルを絶滅させるという歴史的大事業を達成した段階で、「イスラームの統治」の完全復活といえます。
その時に、イランは少数派のシーア派ながら、イスラーム世界の盟主と仰がれるようになるでしょう。世界の原油生産も3分の1程度は掌握できます。
イラン革命防衛隊は、この西進大事業の尖兵です。
ナチスでいえば親衛隊のようなもので、体制のイデオロギーを体現し、国内国外のその遂行を進めていくための機関であり、今やイランの政治、経済、外交を牛耳っています。
日本でいえば、革命防衛隊は、1941年の時点の陸軍よりも権力が集中しています。
イランの国連代表部を含め、イラン外務省やその他の役人たちは、イラン体制内の力学でいえば、重要な決定には関与できません。
革命防衛隊は、西進し、イスラエルとサウディアラビアを滅ぼすに至る、そのために40年間牙を研いできたのであり、中東各地に配下を育成し、兵器を開発してきました。
核兵器開発も、当然、実質は革命防衛隊の管轄下ですが、これを切り札にするつもりでしょう。
革命防衛隊はイデオロギー集団なので、イラン国民に犠牲が出るのは必要な犠牲としか考えません。
もちろん、イスラエルとやるからには勝たねばなりませんが、イデオロギー集団というのは、楽観的な見通しをしたがるものです。
これからイスラエルの攻撃を迎え撃ち、中東各地で長期の戦いを繰り広げた先の悲願達成を、彼らは夢見ています。世界で一番中が悪い国同士を挙げろと言われたら、個人的には真っ先にイランとイスラエルが浮かびます。建国以来、イスラエルを極端に敵視してきたイランの徹底ぶりはすごく、国際大会でイスラエルの選手と当たると棄権するほどです。(国として存在を認めていないから戦わない)
そのイランが、史上始めてイスラエルの領土を直接攻撃しました。イスラエルは去年来ずっとガザでの戦争を続けてきましたが、昨日で局面が変わった感があります。
そして問題は、ここからです。イランの攻撃に対してイスラエルはどう反応するのか。それに伴う「最もあり得るシナリオ」「日本にとっての最悪シナリオ」とは。ポイントを絞って基礎から解説します。