(ブルームバーグ): 外国為替市場で円相場が一時1ドル=153円台まで下落し、約34年ぶりの安値を更新した。神田真人財務官は11日午前、「足元の動きは急」だとし、「行き過ぎた動きに対してはあらゆる手段を排除せずに適切な対応を取る」と市場をけん制した。介入への警戒感から発言後に円は下げ幅を縮小し、足元は152円台後半で推移している。

神田財務官は「必ずしも特定の水準を念頭に置いて判断しているわけではない」とする一方で、「過度な変動は国民経済に悪影響を与える」との考えを改めて示した。「年初からの動きはかなりの変動幅」との認識も示した。財務省内で記者団に語った。

10日の米消費者物価指数(CPI)の発表後に円安が進んだことについて、「ひと晩で1円くらいをどう判断するかというのはファンダメンタルズの関係と総合的に見ながらやっているが、過度な変動かと判断するかは私からは申し上げません」と説明。為替介入に関する質問に対しては、「為替介入かどうかは別にして、あらゆる事態に常日頃から備えている」と述べるにとどめた。

円が対ドルで34年ぶり153円台、介入警戒高まる-適切に対応と財務官

10日の米国市場では一時153円24銭と1990年6月以来の円安水準に達した。米CPIが3カ月連続で市場予想を上回る強い伸びとなったことを受けて、利下げ観測が大幅に後退した。金利スワップ市場では米連邦公開市場委員会(FOMC)の年内利下げの織り込みが2回以下に低下。最初の利下げも完全な織り込みは11月会合まで後退した。米国債利回りも短期ゾーン主導で急上昇し、10年金利も4.5%台に乗せた。

【米国市況】ドル153円台突入、CPI予想上振れで-国債利回り急伸

鈴木俊一財務相も省内で記者団に対し、神田財務官とは頻繁に連絡を取り合い、情報共有しているとした上で、「われわれが見ているのは152円、153円という数字だけではなく、その背景についても分析をする。そうした背景も含めて高い緊張感持って動きを見ている」と説明。「行き過ぎた動きに対してはあらゆるオプションを排除することなく適切に対応していきたい」と語った。

鈴木財務相は参院財政金融委員会でも円安の経済影響について問われ、「円安はプラスの面もあればマイナスの面もある」と指摘した。物価高騰の中で「円安が物価高に与える影響というものに常に関心なり懸念をしている」と述べた。

米国金利の大幅上昇が国内金利にも波及し、長期金利は昨年11月以来の0.835%まで上昇。金融政策に反応しやすい2年金利も2009年以来の高水準を付けた。円安進行で輸入物価が上昇すれば、日銀が注目する基調的物価が2%を超えて上昇するリスクが高まるため、早期の追加利上げが警戒される。円金利スワップ市場は、10月の金融政策決定会合までに政策金利が0.25%に引き上げられることを100%織り込んでいる。

農林中金総合研究所の南武志主席研究員は、為替介入はいつあってもおかしくないとする一方、直ちに動かない要因として岸田文雄首相の訪米が影響しているかもしれないとの見方を示す。訪米中の為替介入によって「米国からもし批判が起きると、米国で岸田首相が矢面に立たされる可能性がある」と指摘する。

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--取材協力:青木勝、藤岡徹、船曳三郎.

(鈴木財務相の発言や国内金利の動き、チャートを追加して更新しました)

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