2024/4/7

ノースフェイスの「廃棄を減らせる服」が、地味にすごい

NewsPicks 記者
全産業の中で、石油産業に次ぐ2番目に環境に悪い産業として問題視されているアパレル産業。
対応策として、原材料や製造工程に切り込み、より地球に優しいエコなデザインへと変わっていこうという流れがある。
このエコデザインについては、欧州ですでに規制化まで進んでいる。
打ち手の1つとして有効なのが、製造工程で生地の廃棄が出ないパターンメイキングだ。
衣類の製造は、デザインをもとにパターン(型紙)と呼ばれる服の設計図を起こし、身頃や袖などパーツごとにパターンに沿って布を裁断していく。
洋服のパーツには曲線部分もあるので、布を全て使い切ることはできず、余りが出てしまう。多くのブランドは30%ほどの廃棄が出る。
この廃棄率を30%からゼロにしようとしているのが、スタートアップの「シンフラックス(Synflux)」だ。
廃棄が出にくいパターンをはじき出す独自のAIを持っている。
同社はサステナビリティに関わる技術やアイデアを表彰し、「ファッション業界のノーベル賞」と称される、H&M財団グローバルチェンジアワードのアーリーバード特別賞を2019年に受賞するなど、その技術は海外からも注目を集めている。
このシンフラックスと手を組んだのが、日本で「ザ・ノース・フェイス(THE NORTH FACE)」を運営するゴールドウインだ。
スパイバーなどファッションのサステナビリティに関わるベンチャー企業を中心に出資するゴールドウインは、シンフラックスも出資、協業に取り組んできた。
2024年3月、シンフラックスとゴールドウィンは、製造工程の中で出てくる生地の廃棄を減らす服を、初めて通常の量産品として発売した。
廃棄率を9%まで削減した商品ができるまでには、AIらしからぬアナログな課題が大きな壁となって立ちはだかったという。
その壁は何か。いかにして、廃棄率9%が実現できたのか。
プロジェクトを主導したゴールドウインの大坪岳人ニュートラルワークス事業部長とシンフラックスの川崎和也CEOに話を聞いた。
INDEX
  • 洋服の廃棄率約30%という根本問題
  • 量産品に必要な「再現性」
  • 必要なものは、ダサくならない
  • 図面から3Dに起こすAIの汎用性

洋服の廃棄率約30%という根本問題

──両社の協業のきっかけは。
大坪 我々が川崎さんたちが作った、直線で構成された服を見たのがきっかけです。
我々はスポーツウエアを作っているので、防水加工などが施された高機能素材を多く使います。当然、高度な加工が施されている生地はとても高価です。
経済的な観点から歩留まりを改善しようとしてきたのですが、究極的によくしようとすると、パーツを全て直線で構成した服になります。
着物は直線で構成されているのでそれでいいのですが、洋服はそうではないので簡単にいかず、落としどころに悩んでいました。