ネット生保の先駆、ライフネット苦戦の理由
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「ライフネットは実は安くない」と、オリックス生命などネット生保他社が比較広告を打ったり、保険ブロガーが比較記事を出すので、価格重視の層や、金融リテラシー高い層は他社に逃げているため新規契約者が減り続けてる。震災のせいではない。
ライフネット生命は保険料を日本国債で運用しているので、ライフネットの顧客と株主は、日本の財政悪化リスク(国債下落)をモロにかぶる。
メガバンクは国債を減らし終えてるし、大手保険会社は運用先を多角化しているが、ライフネット生命は日本国債一本。業績悪化だけでなくこのあたりが余りにハイリスクすぎるとプロ投資家から嫌気されている現実がある。
創業以来一貫して赤字なのは、単年の顧客1名当たり収益よりも顧客獲得コストが高い逆ザヤの事業構造だから。保険は解約自由なので、長期契約を前提にしたEVは机上の空論となる。
プロはそれを知っているので、アベノミクスの相場好調に逆行して、ライフネットの株価は上場以来、一貫して右肩下がりトレンドだった。志は好きだが、商品性は必ずしも高くないと思う(後述)。あと、シンプルであることが重要というマーケティングが受け入れられる層が、爆発的に増えなかった(スマホつかっていない=ダサい、くらいにならなかった)。既存プレイヤーの存在が大きい場合には、印象論が重要で、そのためにトップが広報活動やるのはわかるが、それでも十分に増えなかった印象。
自分はライフネットと悩んだが、ソニー生命の逓減保険にした。今死んだ場合と、20年後では、家族が必要な金額は違う。死亡時一括X万円より、死んでから子供が成人するなりまでの期間に毎月Y万円という形態のほうが合理的(早く死ぬと給付総額が大きく、逆も然り)、それが逓減保険。契約期間が異なるライフネット生命の商品を組み合わせることも考えたが、そしたらコストが全然高かった。また、就業不能保険の「働く人への保険」は、あくまで就業不能であって死亡した場合には対応していない。「就業不能および死亡時」であれば相当いい商品だと思う。
なお、逓減保険は、ソニー生命の方によると「儲からない」とのこと。だからあまり宣伝もされない。でも、家族持っていて、万が一のために最低限のコストで安全担保のための保険入りたい場合は、一番オススメ。
生命保険の「儲からない」は、団体保険などもそうだが、商品性としては実は一番いい。ライフネット生命の規模とか固定費の軽さを考えると、他社がやって儲からない商品をどんどん売り出すに限ると思う。ライフネットは株価が冴えずダメなのですが、当社のPL赤字について必ずしも正しく説明されていないピックがある模様なので、下記にて生命保険会社のPLと、併せて価値評価指標について補足。
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日本では、生命保険会社の会計上、顧客獲得費を獲得時に費用処理する。生命保険は保険契約が長く(定期保険でも10年など)、収益たる保険料収入は中長期に亘って発現するにも関わらず、費用は一括処理されるのである。したがって、生命保険会社は生命保険契約を獲得すればするほど、会計上の利益が減少する仕組み。ライフネットは現在この状態で、新規に獲得した契約が保険期間を通じて通算赤字という訳ではないが、足元では会計上赤字が計上されている。
ちなみに、アメリカでは、顧客獲得費 = Deferred acquisition cost ("DAC")について日本とは異なる会計処理が採用されており、DACを将来期間に亘って期間按分して収益・費用を対応させる。したがって、顧客獲得が進捗している局面でもPLが一時に痛むことはない。保険契約獲得と会計上の利益のトレンドは、アメリカ基準の方が直感的に合う。
なお、日本、アジア、欧州では、生命保険会社の本源的価値を示す指標としてエンベディッド・バリュー("EV"。ざっくりとした説明だと、保険数理計算処理を経て算出された、株主に帰属する生命保険会社の割引現在価値ということ)がある。EVで見ると、ライフネットは上場来一貫して成長している。
2010/3末のEV = 96億円
2014/3末のEV = 229億円
2015/3末のEV = 252億円
(EVが成長しているから株価が下がっても良いと言っている訳ではありません。ライフネットの成長実績は投資家の当初の期待値よりも低かったのは事実でしょうし、足元で保険の新契約マージンは下がり気味のようです。誤解を招くとアレなので、念のための補記です)