2024/3/27

広がるAIによる「新規ビジネス」。これからのAIエンジニアが果たすべき役割

NewsPicks Brand Design Senior Editor
 日本語版LLM、世界各国で使われる顔認証システム、DX支援、人工衛星、さまざまな分野で社会を支えているNECが、個人資産運用アドバイス事業に進出した。
 NECは2023年9月に、個人向け金融業専門会社Painterを設立。Japan Asset Managementと「AIが個人の資産運用の悩みに答える」サービスの共同開発を開始した。
 なぜ、新たに個人資産運用相談の事業を始めたのか。新事業で求められる「AIエンジニア」の資質とは何か。
 NECの事業責任者と、NECのAI技術を研究開発するデータサイエンスラボラトリーのトップに同社の戦略と、これからの時代に求められるデジタル人材像を聞いた。

資産運用のアドバイスを行うAI

──NECがなぜ個人資産運用相談事業に参入したのでしょうか。
岩田 NECが新たに提供することになったサービスは、利用者のリスク性向や金融リテラシー、人生設計などをAIが対話を通じて確認し、資産運用に関する相談に対応するというものです。
 これまで資産運用のきめ細かなアドバイスは、限られた人しか享受できませんでした。AIの活用により、個々のユーザーに最適化した相談を幅広い方々に提供することで、NECのパーパスにもある「公平な社会価値の創造」につながると考えたことが根底にあります。
花沢 利用者の方には、まず、行動経済学に基づいた心理アンケートを受けていただき、「リスク許容度」などの行動原理を把握します。
 次に金融資産や将来に関する質問を行い、利用者の方の金融や投資に関する知識や経験をもとに金融に関するアドバイス、ポートフォリオを提案します。
──資産運用のサービスにおけるAIの役割を教えてください。
花沢 AIを活用することで、個々人からの回答内容を踏まえ、利用者に合わせたコミュニケーションをとったり、商品紹介をしたり、最適なアドバイスを提供できるのが特徴です。
 お金や健康などウェルビーイングにつながる話題は、どうしても他人と話しづらい面があります。そこでAIを活用することで、「人には相談しにくい」内容の相談、検討をはじめるきっかけにもなると思います。
 対人での資産運用の相談の場合、自分の収入や資産状況をはじめ、住宅の購入や起業など、将来やりたいことをアドバイザーに伝える必要があります。となると、“あなたの秘密はしっかり守ります”と保証されているAIのほうが気軽に相談しやすいのではないでしょうか。
 対話相手がAIであれば、利用者側は気兼ねなく相談できますし、AIは、その人に合った最適なコミュニケーションを模索してくれます。
 回答内容やデータが別の目的に利用されるのでは? という不安は、当然あると思います。このサービスで取得した個人情報は、目的外での利用を一切しないと明言していますし、それを不可能にする仕組みもテクノロジーも作っています。
岩田 我々のサービスは、あくまで「人間を支援し、協調するAI」。利用者さんには口にしづらい金融についての相談をAIが介在して言いやすくする、解決案もAIが出す。
 一方で、希望の方には金融商品の提案をしますが、最終的な商品のご提案は人間のフィナンシャルアドバイザーが行います。
 多くの人は金融リテラシーや投資運用経験がなくて当たり前。まずは気軽にAIと対話して検討を深めたあとに、最終的な商品購入の前には、人間のアドバイザーとの対話も重要だと思っています。
 今後、人々のウェルビーイングを向上させるためには、こうしたAI活用が必要になってくると考えています。
 今回募集するのは、NECが設立した個人向け金融業専門会社PainterのAIエンジニアです。AIを活用した金融サービスの事業開発を行っていただきます。
──Painterの役割をあらためて教えてください。
岩田 NECのPainter事業開発チームがデータサイエンスラボラトリーと連携して、Painter向けソフトウェア開発を行うというのが基本的な開発体制です。
 今回募集するAIエンジニアの方には、NECのPainter事業開発チームで、金融資産運用アドバイスのプロダクト開発を担当いただきます。
 何を実現したらより利用者にとって便利か、どんなサービスを作るべきかという構想を描き、研究者とやりとりをしながらソフトウェア・サービスデザイン、開発を行います。
 チームは現在、10人弱のためご自身の活躍が事業全体にとって大きな力になります。

超一流の研究者と働ける職場

──AIエンジニアにとって、NECで働く魅力は、どこにありますか。
花沢 NECの研究所には、世界で一流の研究者が数多く在籍しています。世界トップレベルを常に意識して開発を行っている研究所のメンバーと一緒に働けるのは、大きな魅力です。
 NECの技術レベルについて言及すると、顔認証システムでは世界ナンバーワンを取り続けていますし、2023年には大規模言語モデルで日本語の最高性能を最速で出そうと目標に掲げて開発を進め、発表しました。
 Painter事業開発チームも本研究所も同じ新事業部門に属しています。新事業開発チームと、AIに関わる研究所が密に連携できる組織設計は、ほかの会社にはないユニークな点だと自負しています。
岩田 今回、採用するAIエンジニアの主な仕事は、事業開発と研究開発の間で、最先端の技術に一緒に触れながら、お客様のニーズを解決すること。
 AIってどんなアウトプットが出てくるかわからない面がある。ということは、開発過程である程度の不確実性を許容する必要がある。
 この不確実性をマネジメントする力は、世の中に出回っている技術やAPIを組み合わせて使いこなしているだけでは、なかなか身につきません。
“最高レベルの成果が出ればこういうことができるが、最低限レベルはここまでのアウトプットを出そう”と上限と下限を決めて、試行錯誤を繰り返すことがAIエンジニアに求められます。
花沢 NECには、アルゴリズムそのものを作っている超一流の研究者がいるので、彼らとの対話によって少しずつ技術と事業開発のすり合わせができるようになっていく。
 AIエンジニアとして、世界トップレベルの研究者が両輪となって開発が進められるようになるのは、大きく成長できる職場なのは間違いありません。

必要なのは「顧客体験」を作れる人材

──AIエンジニアには、どのような資質が求められるのでしょうか。
岩田 必要となるのは、顧客をあっと驚かせるようなWOW体験を作るために、試行錯誤していく能力です。本質的なことに興味を持ち、toCの顧客体験を創意工夫して作ることができる人材にぜひチャレンジしてほしいですね。
 現状に満足せず「もっと知りたい」「もっといいユーザー体験を作ってみたい」と、さらに一歩踏み出せる人が活躍できる場所です。
花沢 研究者と技術を議論する知的好奇心、AIの特性についての理解を深める意思がある人は、必ず成長できる。
 強い意志とパッションを持って行動を起こす人であれば、世界最高レベルの研究者がアイデアの実現に全力で協力します。
──求められる資質のレベルが高いように感じますが、具体的にどういった経歴の方を求めていますか。
岩田 あまり構えなくても大丈夫です。当社の場合、具体的な前提知識や経験は問いません。入社時点でのデータアナリティクスの経験も求めませんし、金融の知見や経験も問いません。
 日頃から研究者と議論していますが、研究の深い世界はわからないことのほうが多いですから(笑)。
 普通のコミュニケーション能力と知的好奇心があり、かつ、知ったつもりにならない人であることが大切です。
花沢 どちらかというと、一人で何でもできる人よりは、周囲とコミュニケーションを取りつつ、自分のやるべきことをきちんとやる人のほうが望ましいですね。
 研究者も実は同じなんです。研究者側も事業開発のことを一生懸命勉強しようとしていますが、やっぱり事業開発についてはその専門家に任せたほうがいいな、と。NECは大きい会社なので、役割分担ができる。
 なので、「相手の専門領域に対する知見」よりも「理解しようとする姿勢」や「コミュニケーション能力」を持った人のほうが、活躍しやすいかもしれません。

AIを通じて作る、カラフルな社会

──入社後の流れや、キャリアのステップアップについて教えてください。
岩田 まずは、ビジネスニーズの優先順位を整理して、AIで検証をし、実装していくのが仕事になります。
 新事業なので、全て計画が決まっているわけではありません。新しいアイデアや機能案があれば、それも含めてみんなで優先順位を決めて、チームで開発していきます。
 仕事に習熟してきたあとは、成長に応じて、本人の希望によって複数のキャリアパスを選択できます。
 収益責任を持ってプロジェクトを担当する、プロダクトマネージャーに行くコースも選べますし、AIのエンジニアとしてのキャリアを歩みたいなら、データAIエンジニア、データアナリストに特化して行く道も選べます。
──「人間を支援するAI」を通じて、NECが実現したい社会はどのようなものでしょうか。
花沢 身近なレベルでいえば、人間の暮らしが少しずつ良くなっていくことを目指しています。
 NECのパーパスともつながりますが、AIの活用によって、安全・安心・公平・効率、つまり、事故を防いだり病気を予防したり、業務を効率化して残業を減らすなど、そういうレベルでの「良さ」を向上させていきたいですね。
 世間では「AIが人の仕事を奪う」といった話題が出がちですが、NECはAIを「生活を豊かに、便利に、楽にしていくもの」という観点で開発を続けています。
岩田 Painterのキャッチコピーは“We color tech and finance.”です。カラーという言葉には、近年、人の豊かさの色がどんどん様々に、カラフルになっているという実感が込められています。
 働き方の面でも、大企業に就職して定年退職するのが王道という前提が崩れ、みんなが同じテレビを見て家族団らんを過ごし、価値観を共有することもなくなってしまった。
 それぞれがカラフルな人生を、自分らしく生きることができる一方で、どこか窮屈に感じることもあるかもしれません。
 そういった窮屈なところ、透明化しすぎて息苦しいような、ネガティブな面を取り除き、個人が本来もつそれぞれの色の豊かさや、身近な幸せを1つずつ増やしていきたいですね。
 そうした社会づくりをAIで共に切り開く人材と、ぜひ出逢いたいと思っています。