国連安保理、ガザ即時停戦決議案を採択 米は棄権
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国連安全保障理事会では、ガザ地区での停戦要請案が繰り返し提出されてきましたが、繰り返し否決されてきました。
最近だと、米国案が3月22日にロシアと中国の拒否権で否決されています。
今回可決されたのはアルジェリア案で、14か国が賛成、1か国(米国)が棄権で可決されました。
米国案と今回のアルジェリア案の違いは、
両方とも停戦を求めていますが、
・米国案には「即時」という文字が無く、
・アルジェリア案は「即時停戦」を求めている
ということです。
なお、ロシアは、「恒久的」停戦であるべきとして、「恒久的」という文字をアルジェリア案に入れようとしましたが、「ラマダーン月(残り2週間)中の停戦」ということになっています。
このあたりは、米国が受け入れるように、ということと、現実的に可能な線、ということのバランスを配慮したものです。
イスラエル政府は、米国がアルジェリア案に拒否権を使わなかったことに深い失望を示すとともに、安全保障理事会の停戦要請には従わない、と明言しました。
アルジェリア案の決議は、単に要請なので、従わなくても何か罰則があるわけではありません。米国はこれまでイスラエルの報復の権利を尊重して「停戦(ceasefire)」という言葉には反対し続けてきました。一時的な休戦(pause)という用語を使ってきましたが、イスラエルのネタニヤフ首相が、バイデン政権の意向をきかずにラファへの地上侵攻作戦を進めようとしているため、バイデン政権は最近「停戦(ceasefire)」という言葉を使って、イスラエルに圧力を与えるようになりました。
そして今回、遂に国連安保理の「停戦」決議案に「反対」しませんでした。バイデン政権は、イスラエルによるラファ侵攻作戦に対して米国の考えを伝えるため、両政府高官同士の協議を進めようとし、24日にイスラエル政府代表団はワシントンに到着していましたが、ネタニヤフ首相は同代表団を帰国させると発表しました。
国連安保理で停戦を求める決議案が採択されましたが、停戦要求に応じないイスラエルに対して強制力を使う、つまり国連軍を結成してイスラエルに攻撃を止めさせるとか、イスラエルに経済制裁を科すといった措置をとることはないでしょう。米国はそこまでは賛成しません。
しかし、停戦を求める安保理決議に拒否権を投じないという行動を通じて、バイデン政権はイスラエルに対する不満を明確に示し、「これ以上米国の意向を無視して戦争を続けるのであれば、国連でも守ってあげられないぞ」というメッセージを発しているのです。
米・イスラエル関係がさらに悪化し、バイデン政権がここまで反対する中、イスラエルが大規模なラファ地上侵攻に踏み切った場合、どうなってしまうのか。中東情勢はさらに危険な状況に近づいています。拒否権を持つ国の棄権は、その国としては反対しているが拒否権は行使しない、という意味だと一般には解釈されます。
賛成はしていないので、国として協力することは期待できない訳です。
しかし、他の国が何か動くなら止めはしない、ということになり、これで国際社会の建前としてラマダン(断食月)の間は停戦すべきという意思表示がようやく出来たことになります。
これで止まるとは思ってはいません。止めるにはイスラエルが止めないと成立しないからです。
ただこれで、国際社会は意思を表明していないから、という状況よりは止める交渉がしやすくなる手掛かりになったことは確かです。
イスラエルは人質を取られている形なので、停戦とは人質を返してもらう交渉とセットになります。
平和的に交渉して人質が返ってくる目処が立たないのであれば停戦に応じる可能性は限りなく低いことは疑いようがありません。
この背景にはイスラエルの「反撃」は組織ハマスの壊滅目的と称して実際には、ガザ地区全てのパレスチナ人を殺しかねない程の大虐殺と化しているからであり、本来なら「民族浄化」レベルの非難をされても仕方ない段階に至っている、ということがあります。
国際社会としては停戦を求めたにもかかわらず、ということになります。ネタニヤフ首相が直ちに退陣することは考えにくいでしょうが、将来的に退陣したあと、国際的な訴追の根拠ができることになり、イスラエルとしては反発するという形で、他国へ移動することはし難くなることは予想できます。
但し、実際はともかく本当に停戦して欲しいのは確かです。