2024/3/21

【DX】そろそろ生成AIの実装を本気で考えてみよう

NewsPicks Brand Design Editor
 生産性、人口減などの課題から、生成AIを活用したDXに取り組む企業が増えてきている。
 しかし、多額のコストと手間をかけて生成AIの導入に取り組んでも「導入に成功した」と自信を持って言える企業はいまだ少ないのではないだろうか。
 こうした状況に対して生成AIのポテンシャルを最大限に活かしたDX支援を進めているのが、生成AIスタートアップGenerativeXだ。
 同社は、2023年6月の創業からわずか9カ月足らずで、製薬会社や金融機関、通信企業などの日本を代表する大手企業から、生成AIによるDX支援のパートナーとして選ばれている。
 なぜ多くの企業は生成AIの導入に苦戦しているのか。導入を成功させる鍵は何か。そして数々の超大手企業からGenerativeXが選ばれる理由とは。
代表取締役CEOの荒木れい氏に聞いた。
INDEX
  • 生成AI活用の「誤解」
  • 生成AI活用に必要な「3つの問い」
  • 技術力より「現場との伴走」
  • 超大手企業に選ばれる強さ

生成AI活用の「誤解」

──OpenAIが2022年11月にChatGPTを公開して1年以上が経ちましたが、ビジネスシーンでの生成AI活用はどのように変化してきたのでしょうか。
荒木 いま多くの企業で、“試しに触ってみよう”という段階から、いよいよ本格的な業務への実装フェーズに入っています。
 ただ、その多くの企業が生成AIの導入に苦戦している状況があります。
 見る限りその最大の要因は、生成AIの活用方法を根本的に「誤解」していることにあると思うのです。
──生成AI活用の「誤解」というのは。
 いま生成AI勃興の勢いに押されて、多くの企業が「ChatGPTを使って何か新しいことをしなければ」と考え、ユースケースの洗い出しをしています。
 ただ企業はこれまでも現在も数々の課題に直面しており、本来解決したいのは「何か新しい課題」ではなく「既存の問題」のはずです。
 つまり、「生成AIで解ける問題は何か?」をベースにして「新たな問題」を探すのではなく、企業がこれまで向き合ってきた「既存の課題」に対して生成AIをどう使うか、という思考プロセスにしなければならない。
 新しい技術に合わせて新しい問題を探すのではなく、古い問題に対して新しい技術を使うことでできることが増える。生成AI活用の本質はそこにあると思うのです。
──生成AIといっても、あくまでこれまでの課題を解決する手段の1つであると。
 その意味で、あまり構える必要はないんです。
 もはや、“AI”であることも忘れて向き合った方が、時代の煽りを受けて焦燥感に駆られることもないかもしれません。
 新しいHOWに対して新たな問題を探す、というアプローチではうまくいきません。
 あくまで既存の問題に対して生成AIが使えるかどうかが重要です。
 もっと言えば、生成AIを「使う」ことを前提にする必要すらないと思っています。
 たとえば、スマートフォンが登場したタイミングです。
 おそらく人々は「これを適切に使うために新たな問題を見つけないと……」なんて考えていなかったでしょう。あくまで「自分にとって便利だから」「生活しやすくなるから」使うようになったはず。
 企業で言えば、社内でデータ整理ができていない、システムが古くリプレイスできていないといった従来からの問題に、ここであらためて光を当ててみることで、生成AIで解けるか解けないかが浮かび上がってくると思います。
 その解決手段として生成AIが向いていないなら、それも1つの答えです。
 企業は生成AI側に合わせて新たな切り口を探すのではなく、自社に蓄積されてきたものをきちんと活かす方が重要です。

生成AI活用に必要な「3つの問い」

──こうした誤解を踏まえたうえで、企業はどのように生成AI活用を推進すれば良いのでしょうか。
 まずは繰り返しですが、「生成AIを使いこなさなければいけない」という発想に囚われないことが大切です。
 あくまで業務や業績改善といった課題への手段ですから、Excelやパワポなどの従来のツールと同じレイヤーで考えて、適したものを選ぶこと。
 そのうえで必要だと判断し、導入に舵を切るとなれば、大きく3つの問いが必要です。
 生成AIの導入に成功している企業は、この3つができています。
 成否を分けているのは、組織として「現場の理解」を得ているかどうか。
「他の会社が使っているからうちも」では誰にも響きません。
「生成AIを使えば業務がこれだけ簡単になる」「早く対応できるからお客さまに喜んでいただける」など、生成AIを使う「必然性」を説明できることが重要です。
 これさえできれば、生成AIの導入はほぼ成功していると言えます。
──理解した後、現場が使いこなすまでにはどのように進めればいいのでしょうか。
 生成AIといっても、結局は日本語で指示を入力して何かしらのアウトプットが出てくるというものなので、さほど難しいものではありません。
 現場の問題を正しく認識できていれば、そこにどういった指示を与えればいいか見えてきます。
 つまり「言語化」がポイントです。
 そこにどんな課題があるか? その業務を言葉にするとどういう作業だと言えるか?
 こうして改善したい業務や解消したい問題を、少しずつ分解して言葉にして言い換えていけば、もう使えるはずです。
 そこに「プロンプト」と呼ばれる、AIへの指示のテクニックや考え方があるわけですが、これも一言でまとめてしまえば「明瞭な指示を与えましょう」ということです。
 自分のやっている業務を正しく日本語で説明してくださいと。
(写真: PrathanChorruangsak / Getty Images)
 新卒1年目の人にもわかるような言葉で、わかりやすく説明することができれば、生成AIは必ず使えるようになります。
 それができる人をまず1人立てる。そこからは2人、3人と徐々に増やしていくことができます。

技術力より「現場との伴走」

──いま生成AI支援ビジネスに取り組む多くの企業が登場しています。AI市場にはどのような変化が起きているのでしょうか。
 生成AIが登場する以前のAIは、業務に合わせたモデルの作成やデータ整備などが必要だったため、開発に膨大な時間とお金がかかりました。
 それがいまでは、ゼロからモデルを作る必要がなくなり、乱雑なデータであっても汎用的に解釈することができるため、データ整備も不要になっています。
 たとえば以前は1つのAIモデル開発に数千万円ものコストがかかっていたのが、いまは生成AIを使って数円で作れてしまう。
 この変化に対してまだ追従できていないのが、AI開発企業たち自身です。
 いまや誰もがAIを「短期間で」「簡単に」使えるようになっているはず。
 それにもかかわらず、“技術力”や“独自性”を売りにしては、いたずらにPoC(Proof of Concept:製品技術が実用可能か検証する作業)を繰り返し、支援期間を引き延ばすAI企業が多いという現実があるのです。
 もちろん技術も大事です。
 ただ技術がコモディティ化した時代にあっては、生成AI導入に向けた現場の要件定義をすることや、実作業で生成AIを「使いこなす力」を身につけることの方がよほど重要になります。
 そうした考えから我々は「無駄なPoCにサヨウナラ」と掲げ、生成AIの実装に本気で取り組む企業に対して、スピーディかつ無駄なお金を払っていただかない形で支援をしています。
──具体的にはどのような支援を?
 以前に高いお金と長い期間を費やしたにもかかわらず、生成AIの実装に失敗している企業は多くいます。
 そうした「次こそは何としても成功させたい」と考えているお客さまから、ご依頼をいただいています。
 確実に生成AIを実装させるため、我々が重視しているのは3つです。
 プロジェクトは1〜2カ月程度。まずはプロジェクトを小さく開始し、そこからコードやプロンプトの仕組みなどを説明しながら少しずつ構造を理解していただきます。
 その後、メンテナンスやカスタマイズを一緒にやってみたうえで、ときには“半常駐”で伴走しつつ、ディスカッションを重ねて作っていきます。
 重要なのは、支援側がレクチャーして満足しないこと。外部の人間だけでは本当の解決はできません。現場の課題を100%解決するには、現場の当事者となる方々が使いこなせるようになるまで伴走する。
 最後は我々がいなくても、お客さまが自走し、次々に課題解決できるようになること。
 ここを最も重視しているからこそ、確実に生成AIを実装できるのです。

超大手企業に選ばれる強さ

──創業からまだ半年ですが、国内の大手企業に数多く選ばれています。要因はどこにありますか。
 まずマクロな要因としては、まだ生成AI市場ができて間もないため、業界全体として供給が追いついていないことが言えるでしょう。
 ただ、それ以外で言えば、一つひとつ確実に企業の現場へ実装してきた実績があること。これに尽きると思っています。
 実績の理由は、まず圧倒的な早さ。
 多くのAI支援企業が1つのプロジェクトに半年から1年ほどかけるところ、私たちは1週間から1カ月程度でプロジェクトを終え、次に取り掛かるというスピード感で動いています。
 無駄なPoCはしない。プロジェクト1つに1年もかけていたら、次々と生まれる問題を解決しきれません。
 初めから大きな問題に着手せず、小さなタスクからスピーディに取り掛かり、徐々にレベル2、レベル3と活用レベルを上げていく。だからこそ、着実に実装を進められます。
 そしてもう1つ大きな強みを挙げると、私を含めた経営陣全員がビジネスサイド出身であることです。
 膨大なExcel、PowerPointを使った業務の大変さ、ステークホルダーの多さによる推進の遅滞、大企業特有の縦割り組織における情報共有の難しさ、パッケージのシステムやSaaSなどでカバーしきれない複雑な業務……。
 お客さまが抱えているこうした問題を、全員が経験してきました。
 こうしたことから経営陣全員がビジネスとテクノロジーに強いバックグラウンドを持っており、ビジネスを理解したうえで、課題に合った解決方法や仕組みを提案できる。
──大手から次々と選ばれるなか、どのような成長を描いていますか。
 我々は昨年の創業ですが、まずは今年(2024年)中で20〜30社の支援をしていく見込みです。生成AI導入に成功した先進的なモデルケースを蓄積し、提供できる会社の母数を増やしていきたいと考えています。
 生成AIのビジネス活用は、“作って終わり”では使われない。
 使えるまで一緒に走ることが基本です。
 私たちの支援を通じてあらゆる企業のビジネスが強くなっていけば、日本企業の組織力、現場力を、テクノロジーの武器で飛躍させることができると信じています。
 まだ創業半年ではありますが、お客さまのビジネス変革に向き合うなかで、業界ひいては社会が変革するきっかけを生み出していきたいと思っています。