(ブルームバーグ): ゴールドマン・サックス証券で副会長を務めていたキャシー・松井氏は、8日の「国際女性デー」に際し、女性が活躍する社会を目指して自身が提唱した「ウーマノミクス」の実現に向けた改革はいまだ「進行中」と述べた。経営陣や管理職層で女性をいかに増やしていくかが引き続き課題だとの認識を改めて示した。

松井氏は5日のインタビューで、「リーダーシップ層に女性のリプレゼンテーションを増やしていけるかが日本が直面しているチャレンジだ」と指摘。女性の就業率は伸びたものの、非正規雇用が多いのが実情で、管理職になるのは簡単ではないとも語った。

特に、経営層に女性を増やしていけるかどうかについて、松井氏は政府が介入できる範囲は限られているとして、人材の育成や女性が活躍できる風土づくりは「雇用者側の問題だ」と強調した。

厚生労働省の統計によると、女性の就業者数は2022年度に3024万人と約40年で1.3倍に増えたが、非正規雇用が5割以上を占める。政府は30年までに個々のプライム市場上場企業でそれぞれ女性役員比率を30%以上に高める目標を掲げるが、23年はプライム企業全体の役員ポスト総数対比で約13%にとどまっている。

日本経済の原動力

松井氏は、リーダーシップ層に女性を増やす挑戦は「試行錯誤をして自社の組織に合うものをやってみるしかない」と言う。少子高齢化が進み、競争力向上に多様な人材の活用が欠かせなくなる中、「摩擦が起きるからこそイノベーションにつながり、想定しなかったリスクも察知できる」と述べた。

女性の就業増加が経済にプラスになるとして「ウーマノミクス」を提唱した松井氏。ゴールドマン在籍中の1999年に同リポートを出した当時、日本株は低迷していた。最近34年ぶりに日経平均株価が史上最高値を更新した原動力は、デフレ経済からの脱却期待だと説明。企業が収益性を高めて賃金上昇をもたらし消費拡大を促進する好循環がようやく見えてきたとみている。

また、さらなるガバナンス改革への期待が市場をけん引してるとも分析する。異なる視点を持つ人材が経営層にいることはポジティブに働くとし、女性の活躍の場を広げる取り組みも含め「ガバナンス部分はすべてに勝る」との認識を示した。

松井氏はゴールドマン・サックス証で副会長兼チーフ日本株ストラテジストを務めた。ゴールドマンを20年末に退社し、21年に同社時代の同僚らとESG(環境、社会、企業統治)を重視しながらスタートアップ企業などに投資する「Mパワー・パートナーズ・ファンド」を立ち上げ、ゼネラルパートナーに就任した。

現在、さまざまなスタートアップと関わる中で、仕事と家庭の両立などに対する「若い男性の世代の価値観は親の世代とずいぶん違う」と受け止めている。「何が山を動かすかは次世代の価値観と力だ」と述べた。

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