悲惨な幼年期、大成功、破産の危機。イーロン・マスクの知られざる素顔

2015/5/16
自動車業界が100年に1度の大変革を迎えようとしている。そんな時代にひときわ注目を浴びるのが、電気自動車(EV)を手がけるテスラ・モーターズだ。創業者でCEOのイーロン・マスクはまさに時の人。その動向や思考は、多くの人の注目を集めている。そんなマスクの人生を克明に描いた著書から、マスクの知られざる素顔に迫る。

フォード、カーネギー、ロックフェラーに並ぶ大物

「この国は家猫の国になった。疑い深い人、心配性の人、考えすぎの人たちの国だ」 。
作家デイブ・エガーズは『ア・ホログラム・フォー・ザ・キング(原題:A Hologram for the King)』の中でこう書いた。アメリカ人男性がサウジアラビアの砂漠の中でITビジネスに奮闘する物語だ。
アシュリー・バンスの著書である著名実業家イーロン・マスクの伝記には、縮こまったアメリカ人の魂について似たような記述がある。フェイスブックの初期のエンジニアはバンスにこう語った。
「私たちの世代の優秀な人たちが考えているのは、どうやってユーザーに広告をクリックさせるかだ」。
ベンチャーキャピタリストのピーター・ティールのこんな言葉も引用されている。
「私たちは空飛ぶ車が欲しかった。(Twitterの)140文字よりも」
スティーブ・ジョブズ亡き今、シリコンバレーが新たなヒーローを求めるとしたらイーロン・マスクの名が挙がるだろう。南アフリカ生まれの起業家であり発明家、エンジニアでもあるマスクは、電気自動車や宇宙開発、太陽エネルギーという“家猫”のいない分野に衝撃的な進出を果たした企業(テスラ・モーターズ、スペースX、ソーラーシティ)を率いている。弱冠43歳だ。