(ブルームバーグ): 日本銀行がマイナス金利解除を巡り、一歩踏み込んだ姿勢を示す中、為替市場で特に人気があるキャリー取引が輝きを失いつつある。

日銀の高田創審議委員は2月29日、2%の物価安定目標の実現が見通せる状況になってきたとし、強力な金融緩和からの出口対応に向けた検討が必要との見解を示した。同氏の発言を政策変更の前兆とみる資産運用会社にとって、円で資金を借り入れて高金利通貨で運用するキャリー取引の魅力は薄れ始めている。昨年はコロンビア、チリ、メキシコの各通貨に対する円キャリー取引のリターンは35%を超えたが、今年はこれまでのところわずか4.5%にとどまっている。

物価目標実現が「見通せる状況」、出口の検討必要-高田日銀委員 (3)

トレーダーは日本と世界各国・地域との金融政策の差が狭まる可能性を視野に入れている。資産運用会社が円に対するポジションを再考するのもこれが理由だ。

フィデリティ・インターナショナルのサルマン・アーメド氏は「道筋をどう示唆するのか、その最初の動きが非常に重要だ」と指摘。「ネガティブショックが起きた場合、かなり激しい巻き戻しとなる可能性がある。円下落を見込んだポジションが多いためだ」と続けた。

日銀が政策路線を変更するとの見方が強まるにつれ、円が上昇する可能性も高まる。高田氏の発言後に円は一時急伸した。

この円高はキャリー取引トレーダーおよび円弱気派のリスクを象徴している。つまり円が急伸した場合、円下落を見込んでいた投資家がそのポジションを解消することで円高がさらに進む可能性がある。

2月20日時点の米商品先物取引委員会(CFTC)データによれば、資産運用会社が見込む円下落を見込むポジションが2022年終盤以降で最大だった。

原題:Yen’s Carry-Trade Reign Is in Flux as BOJ Hints at Policy Shift(抜粋)

--取材協力:Robert Fullem.

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