(ブルームバーグ): 1月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年比上昇率が3カ月連続で縮小したものの、22カ月連続で日本銀行の掲げる目標の2%を維持した。今回の結果を受け、3月か4月にも日銀が金融政策の正常化に踏み出すとの観測がさらに強まりそうだ。

総務省の27日の発表によると、コアCPIは前年同月比2.0%上昇と3カ月連続でプラス幅が縮小した。市場予想(1.9%上昇)を上回った。エネルギーは電気代と都市ガス代のマイナス幅拡大で12.1%下落。生鮮食品を除く食料は5カ月連続、宿泊料は3カ月連続で伸びが鈍化した。

一方、外国パック旅行費は62.9%上昇とデータをさかのぼれる2001年以降で最大の伸びとなり、大きな押し上げ要因となった。新型コロナの感染拡大に伴う海外旅行需要の減退を反映した代替措置から、通常の価格収集方法に戻したことなどが影響した。

原材料高の落ち着きに伴う消費者物価の伸び率縮小は日銀の見立て通りだ。植田和男総裁は22日、政策決定で重視する基調的な物価上昇率は今後高まり、2%目標実現の鍵を握る賃金・物価の好循環が強まっていくとの見通しを示した。早期の正常化観測が市場で広がる中、今回の結果は好材料となる。日銀は来月中旬に大手企業の集中回答日を迎える春闘の動向などを見てタイミングを計ることになる。

SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、外国パック旅行費の特殊要因が市場予想から上振れた最大の要因と指摘。今回の結果は数カ月内の日銀の正常化を後押しする方向であり、「日銀は物価目標に近づいている。特殊要因とはいえ2%を割らなかったのは日銀には良かった」と語った。

昨年2月以来、物価の押し下げ要因となっていた政府の電気・ガス代負担軽減策の影響が一巡することから、2月のコアCPIは2%台後半になるとみている。

エネルギーも除いたコアコアCPIは3.5%上昇と5カ月連続で伸びが縮小。市場予想は3.3%上昇だった。

 

鈴木俊一財務相は閣議後会見で、CPIのプラス幅縮小について、エネルギー価格下落の影響や政府のエネルギー激変緩和措置が一定程度効果を及ぼしていると指摘。金融政策への影響については日銀の独立性があるとした上で、「われわれとしてしっかり見ていきたい」と述べた。

CPIの結果を受けた東京外国為替市場は、日銀の金融正常化につながるとの見方から円買いが優勢となり、対ドルで一時150円51銭と前日比0.1%上昇した。足元では150円52~53銭の水準で推移している。

賃金を反映しやすいサービス価格は前年同月比2.2%上昇。宿泊料の伸び縮小などが影響し、7カ月ぶりに伸びが鈍化した。昨年11月と12月は2.3%上昇と、消費税率引き上げの影響を除いて1993年10月以来の高水準だった。

住友生命保険の武藤弘明エコノミストは、3月の春闘で賃上げが昨年よりも上振れるというのは既定路線とした上で、CPIの中でも「サービス価格がじわじわと上がってきている。早ければ3月会合で政策修正という期待は今でも維持されていると思う」と指摘。修正予想の市場コンセンサスである「4月にやるのが一番きれいだが、3月に政策修正があってもマーケットはそれほど驚かないだろう」と語った。

詳細(総務省の説明)

  • 外国パック旅行費は0.15ポイントの押し上げ要因
    • 今回の結果は実質的に20年1月との比較で、外国パック旅行の上昇寄与がなかった場合のコアCPIは1.9%上昇
  • 電気・ガス価格激変緩和対策事業はコアCPIを0.51ポイント押し下げ。同事業がなかった場合は2.6%上昇
    • 同事業は昨年1月に導入、価格には2月分から反映され、前年比での押し下げ効果は2月分ではく落する。同事業は総合の前年比を1%程度押し下げていた
  • エネルギーの前年比マイナス幅拡大は、昨年料金が上昇傾向にあったことの反動。都市ガス代の22.8%下落は比較可能な1971年以降で最大の下落幅
  • 最大の押し下げ要因になった宿泊料は、昨年1月に全国旅行支援の補助額が減額された反動

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--取材協力:氏兼敬子、横山桃花、占部絵美、藤岡徹.

(詳細とエコノミストコメントを追加して更新しました)

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