(ブルームバーグ): 第一生命ホールディングスは8日、企業向けの福利厚生サービスを手掛けるベネフィット・ワンへの株式公開買い付け(TOB)を9日から開始すると発表した。最終的には完全子会社化を目指す。

発表資料によると、TOB価格は1株当たり2173円。当初予定していた2123円から50円引き上げた。TOB期限は3月11日まで。買収総額は2921億円となる。

ベネフィトは同日、同社取締役会が第一生命HによるTOBに賛同し、株主への応募推奨を決議したと発表した。ベネフィト親会社のパソナグループも、第一生命Hの提案がベネフィトの企業価値向上に資するとの結論に至ったと発表した。

     ベネフィトを巡っては医療情報サイト運営のエムスリーが先にTOBを実施していたが、これに対抗する形で第一生命Hが昨年12月にTOBの実施方針を表明。より高い価格を提示し、親会社パソナGの同意を得たことで、国内では異例となる大手金融機関による対抗的TOBが成立する可能性が高まった。

第一生命Hは、ベネフィト買収で非保険事業の強化を目指す。人口減少による国内生保市場の縮小で収益源の拡大を迫られる中、企業の従業員との接点を持つベネフィト買収により生保関連の収益上乗せや付加サービスの拡大を見込む。

TOBの買い付け下限は15.44%で上限は設けない。ベネフィト株51%超を保有するパソナGは、今回のTOBには応募せず、ベネフィトが実施する自社株買いに応じる形で株式を売却する。これに伴い2024年5月期決算で1136億円の株式売却益を計上する見込み。

エムスリーはTOB価格を1株当たり1600円として、昨年11月15日から買い付けを実施。買い付け期限を今月15日まで延長していた。エムスリーによるTOBに応じる予定だったパソナGはこれを撤回。第一生命Hがより高いTOB価格を提示したためなどと説明した。

エムスリーは同日夜、実施していたTOBについては買い付け価格など条件変更は行わず、代替提案についての検討も終了すると発表。その上で、第一生命Hとベネフィトとの3社間で協業の可能性について検討を進めるとした。

     シティグループ証券の山口秀丸アナリストは、ベネフィトに対するTOBの発表以降、エムスリーの株価は下落傾向にあったとして、買収から撤退することは短期的には株価にとってプラスとの見方をリポートで示した。

対象会社の同意なき買収提案は、日本の企業文化の中で「お行儀が悪い」として敬遠されてきた。そうした慣行を破った今回の第一生命Hの対抗的TOBの行方は、国内のM&A(企業の合併・買収)市場を一層活性化させる試金石として市場関係者などからの関心を集めていた。

関連記事:

  • 第一生命の決断、M&A市場の転換点となるか-老舗企業が異例の策
  • 第一生命H、ベネフィトへのTOBを2月中旬めどに開始目指す
  • 第一生命、ベネフィトTOB価格2123円に決定-税務メリット反映 

More stories like this are available on bloomberg.com

©2024 Bloomberg L.P.