(ブルームバーグ): 楽天グループは26日、海外市場で新たにドル建て社債を発行すると発表した。今年満期を迎える証券の買い戻しも計画しているという。同社債はジャンク(投機的格付け)債に位置付けられるが、海外ではハイリスク・ハイリターンのジャンク債は投資家の強い需要を集めている。

発表によると、同社は期間3年のドル建て債を起債するとともに、2024年満期のドル建てシニア債最大10億ドル(約1476億円)の買い付けを開始したと発表。また、取引完了後に今年以降に償還を迎える円建てシニア債を買い戻す方針も明らかにした。

発言の権限がないとして匿名で話した関係者によれば、社債の発行額は10億ドル規模で、来週に条件が決定する見通し。楽天が最後に社債を発行したのは1年前。米国ではジャンク債の起債が活発化しており、1月これまでの発行ペースはここ3年間で最大だ。

楽天Gにとって、巨額の赤字が継続するモバイル事業の黒字化と資金調達が喫緊の課題となっている。ブルームバーグが集計したデータによると、同社では24年に約3644億円、25年に4000億円の社債が償還期限を迎え、資金の手当てが急務な同社にとってリスクを取れる海外市場は頼みの綱だ。

大和証券の大橋俊安チーフクレジットアナリストは国内外の社債市場について、「日本でのジャンク債の発行はごくまれだ。リスクに応じたリターンがあれば投資対象とする米国とは根本的に投資基準、リスクアペタイトが異なる」と指摘した。また「日本はコベナンツ(財務制限条項)を付与するなど商品性を改善すべきだ」とも述べた。

S&Pグローバル・レーティングは22年末に、投機的水準だった楽天Gの格付けをさらに1段階引き下げて「BB」とした。

同社はこれまで公募・第三者割り当てでの新株発行や、楽天銀行株の新規株式公開(IPO)や売り出し、楽天証券株のみずほ証券への譲渡などを通じ資金調達を実施してきた。

楽天Gの株価は26日の東京株式市場で続伸、一時前日比4.5%上昇、昨年5月以来の高値となる684.7円で取引を終えた。信用リスクを表すクレジット・デフォルト・ スワップ(CDS)は、27年12月償還期限のものでミッド・スプレッド(ビッドとオファーの中間値)が470ベーシスポイント(bp)と、前日の400bpから上昇している。

活況を呈する米社債市場

米国の社債市場は活況を呈している。背景には選挙や景気減速で生じかねない波乱に先立ち企業が資金調達しておこうとしているのに対し、米金利低下を見越した投資家の旺盛な購入意欲がある。

ブルームバーグのデータによると、投資家が米社債を購入する際に要求する国債に対する上乗せ金利(スプレッド)は22年1月以来の水準付近に低下。世界のジャンク債の利回りも23年12月に1年ぶりの低水準となり、その後も低位で推移している。ジャンク債の年初来の発行額は1月25日時点で220億ドルを超えている。

楽天Gの広報担当者は米国市場を選好する理由について、国内と海外市場の動向を見極め、資金調達の「キャパシティー、コスト、手段の多様化、投資家層の拡大」などを踏まえた結果、ドル建てシニア債が最適だと判断したと、ブルームバーグに電子メールでコメントした。

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原題:Rakuten Plans $1 Billion Bond Sale in Debt Extension Effort(抜粋)

--取材協力:Gowri Gurumurthy.

(株価動向、楽天Gの米市場に関するコメントを追記しました)

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