Kantaro Komiya

[東京 19日 ロイター] - 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した日本の無人探査機が20日、成功すれば世界で5カ国目となる月面着陸を目指す。主要各国が月探査を強化する中、目標地点に誤差100メートル以内で着陸することを目指し、狙った地点に降りる技術を実証する。

JAXAが昨年9月に打ち上げた無人探査機「SLIM」は、20日午前零時ごろ高度15キロから月面へ降下を開始し、同20分ごろ着陸を予定している。成功すれば日本初の月面着陸となる。

SLIMは特殊な航法カメラを搭載し、撮影した画像を処理してクレーターを認識。メモリーにあらかじめ保存してある月面の地図と照合し、自分の位置を測定する。

これまで旧ソ連、米国、中国、インドが月面着陸に成功してきたが、目標地点から数キロ、数十キロ外れるのが当たり前だった。水資源などが存在する可能性がある月の北極や南極は地表が複雑で、ピンポイントの着陸技術は将来的に重要になるとJAXAはみている。

「日本は物量では米国や中国、インドにかなわない」と、SLIMに積んだ観測カメラを開発した立命館大学宇宙地球探査研究センターの佐伯和人センター長は言う。SLIMはこの近赤外分光カメラで岩石などを調べる予定で、「海外のプロジェクトが欲しがるような観測装置などの技術を開発していくことが日本の生きる道ではないかと思っている」と佐伯氏は話す。

JAXAはこれまで小惑星の着陸に2度成功しているが、引力が強い月はより難易度が高い。2022年11月にはJAXAの無人探査機「OMOTENASHI(オモテナシ)」が通信を確立できず着陸を断念。昨年4月に民間初の着陸を目指した日本のispaceは月面に衝突した。ロシアの探査機も8月、月面に衝突した。

「失敗はつきものだが、日本は非常に複雑な計画を手掛けてきた宇宙開発国だ」と、宇宙政策が専門の米レスター大学のブレディン・ボウエン准教授は言う。「米国や旧ソ連は現在の中国ほど規模は大きくないが、能力とニッチな先端技術の面では存在感がある」と、同准教授は語る。

JAXAによると、誤差100メートル以内の着陸が成功したかどうかの検証には1カ月程度かかる見込み。