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Weekly Briefing(デザイン編)

新しい職種の誕生はチャンス

2015/4/24
Weekly Briefingでは毎日、ビジネス・経済、メディア・コンテンツ、ワークスタイル、デザイン、スポーツ、中国・アジアなど分野別に、注目ニュースをピックアップ。金曜日は、デザインに関わるニュースをコメントとともに紹介します。

データ・サイエンティスト、インターフェース・デザイナー、グロース・ハッカーなど新しい職種が生まれるときは、キャリア転換の大きな機会です。従来の職種でカバーしていた仕事が、中途半端な知識や業務内訳では、成果につながらないほど専門化したとき、新職種は誕生します。

新職種は、Webデザイナーから派生したインターフェース・デザイナーのようなスピンオフ型、それまでも専門職として存在したものが名称新たにして、仕事内容が高度化されたアップグレード型、いくつかの職種の一部が合体した守備範囲の広い統合型があります。

新職種誕生の黎明(れいめい)期は、ニーズに合致する人材が少ないことから、未経験者にチャンスが生まれる一方で、関連実績をもつ人材が各所で引っ張りだこになります。今回のWeekly Briefingでは、その一例として、メディアで存在が高まる統合型職種「グラフィック・エディター」を取り上げます。

Pick 1:「デザイナー」ではなく「エディター」

ニュース解説メディア「Vox」が初となるグラフィックエディターを採用” メディアの輪郭(2015年4月3日)

『Vox.com』へ移籍したのは、『Los Angeles Times』のグラフィック&データ・エディターだったJavier Zarracinaです。

Javier Zarracinaのポートフォリオサイト

Javier Zarracinaのポートフォリオサイト

データをビジュアルコンテンツに落とし込み、新たな体験(たとえば数字の羅列では気が付かない発見がある)を生むのが彼の仕事です。表現手法には、静止画、アニメーション、インタラクティブなビジュアライゼーションなどがあります。

「グラフィック・エディター」に該当する職種は、「ビジュアル・エディター」「ビジュアル・ジャーナリスト」とも呼ばれ、『The New York Times』や『The Washington Post』でも活躍しています。この新しい職種が生まれた背景は、いくつかあります。

データ報道へのシフト
データの収集・処理が以前よりも容易になり、報道の透明性を高めるために用いるケースが増えてきました。ところが、データの関係性は多くの場合、複雑でそのまま文字や数字を並べただけではポイントがわかりにくいため、相手にわかる表現に翻訳するのにビジュアルが用いられます。

ビジュアルコンテンツへのシフト
細切れの隙間時間に見てもらいやすく、興味をひくビジュアルコンテンツは、メディアの情報発信に最適です。ソーシャルメディアを使ったPRとも相性がよく、欠かせなくなっています。

モバイルへのシフト
ユーザーとコンテンツの閲覧距離がPCと比べて近くなり、ブラウザやアプリのナビゲーションだけではなく、コンテンツ自体もインタフェースの一部になってきました。テキスト以上に体験(エクスペリエンス)をつくり出しやすいのがビジュアルです。

この3つのシフト対応を最低限行ったうえで、他メディアとの違いを出していくために、「グラフィック・エディター」の需要が高まっています。

データの中からどれを際立たせ、どれを削るかを見極めて、メッセージ構築・文脈形成を行うには、編集の視点が必要です。デザイナーとエディター、一部データ・アナリストの統合職種が「グラフィック・エディター」です。

スキル統合が新たな価値を生む

デジタル化やソフトウェアが業界の垣根を越える汎用技術であるように、個人スキルの中で「デザイン」も職業の垣根を越えて生かせる汎用スキルのひとつです。

それは、「デザイン」×「他の知識・スキル」に展開しやすいためです。なぜかと言うと、「デザイン」の本質は、グラフィックを描画することにあるのではなく、ものの捉え方であり、考え方にあるからです。

考え方なので、他分野へ応用しやすいわけです。何と組み合わせたらいいかは、メディアの例で挙げたように「シフト」に気が付くことです。

社会の動きに目を凝らし、変化を感じたら新職種を想定した準備を始めることです。他展開できるのはもちろん「デザイン」だけではないので、チャンスは多くの人に開かれています。

※Weekly Briefing(デザイン編)は、毎週金曜日に掲載する予定です。