(ブルームバーグ): 中国の国家新聞出版署は22日、オンラインゲームを巡る新たな規制案を発表した。市場にとっては予想外の展開で、中国当局が国内インターネットセクターを再び標的にしている可能性があるとの懸念が再燃した。同日の香港株式市場では、テンセント・ホールディングス(騰訊)やネットイース(網易)、ビリビリの株価がいずれも急落。3銘柄は一時、計800億ドル(約11兆4000億円)相当の時価総額を失った。

国家新聞出版署は規制案で、ゲームの支出や利用時間の拡大を促す慣行にメスを入れる方針を示した。利用者が一つのゲーム内で使える金額に上限を設けるほか、頻繁なログインへのリワード提供制限や国家安全に反するコンテンツ禁止なども含まれた。

クリスマス前最後の取引日に発表された今回の広範な制限措置は、ゲーム業界関係者や投資家を驚かせた。2021年のテクノロジーセクターへの締め付けを多くに想起させた。

2年前と同様、今回の規制案はほとんど前触れもなく公表されたほか、あまりに曖昧で包括的だったため、投資家はその意図や潜在的な影響を読み解くことができなかった。

ソーシャルメディアの微信(ウィーチャット)で何百人もの開発者や設計者が参加するグループには、怒りと困惑の投稿が集中。特に、具体的には分からない利用者の支出額上限に不満を漏らす人が多かった。中国のゲームはアバターを飾ったり、磨いたりすることを促す設計やプロモーションで知られており、テンセントなどにとっては主な収益源となっている。

22日のテンセント株は一時16%安と、取引時間中としては08年以来の下落率を記録。ネットイースは同28%安。ゲーム好きに人気のソーシャルメディアサービスを手掛けるビリビリの株価は14%下げる場面があった。また、中国関連の売上高が大きいネクソン株が12%下落した。

中国当局はゲーム依存への対応を進めており、若者の近視も増えているとしてオンラインエンターテインメントを批判。失業や出生率の低迷などの問題をゲームの台頭と結び付ける向きもある。政府によるテクノロジーへの締め付けがピークだった際には、新しいゲームタイトルの認可が凍結されたほか、コンテンツに関する複数の調査も行われ、テンセントを含む開発者側は一部のゲームで修正を余儀なくされた。

ニコ・パートナーズのバイスプレジデント、ゾン・シアオフェン氏は「中国の圧倒的多数のゲームに打撃を与えるだろう。各社はさまざまな層の利用者への課金方法を含め、収益化モデルを見直す必要がある」と語る。

中国政府は今年、ゲームセクターに対する姿勢を和らげていると考えられていた。例えば、当局者はここ数カ月、新型コロナウイルス禍後の中国経済のけん引役の一つとして、eスポーツを後押ししていた。

データプロバイダーのCNGによると、中国の23年のゲーム市場は約14%増の3029億元(約6兆円)と、10%減だった22年から拡大に転じる見通しだ。

今回の規制案は海外で事業を展開するゲーム販売会社に対し、中国の法律や文化を尊重し、国家安全を脅かすことをやめるよう求めた。テンセントは世界最大規模のゲームパブリッシャーで、米国のエピック・ゲームズや欧州のスーパーセルなどに出資している。

国家新聞出版署は1カ月間、規制案に関して意見を公募する。規制の発効時期は明らかにしなかった。

EFGアセット・マネジメント香港の運用担当者、デイジー・リ氏は「現段階で影響を数値化するのは難しいが、今回の規制案によって、ゲーム会社の収益化見通しに懸念が生じる」と指摘。「規制が導入されれば、ゲーム利用者の行動が変化し、各社の日次アクティブユーザー数が打撃を受ける恐れがある」と述べた。

原題:Tencent Leads $80 Billion Rout as China Rekindles Crackdown Fear、Tencent Sheds $54 Billion as China Unveils Latest Gaming Curbs(抜粋)

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