2024/1/3

【田内学】年始の今こそ。本当の「金融教育」の話をしよう

書籍『お金のむこうに人がいる』著者
受け取る側から、やがて手渡す側へ。お年玉は、いつの時代も日本人の年始を象徴するイベントの一つです。
ところが、お年玉を渡すとき「お金を大事にしなさい」などと声をかけることはあっても、お金を「どう使うのか」という話は、あまりされていないのではないでしょうか。
教育現場に目を向けると、2020年から小中高で段階的に「金融教育」が導入され、2022年には高校の「家庭科」にも金融教育が盛り込まれました。
一方政策においても2023年6月、岸田首相による「骨太の方針」の中で、日本は資産運用立国を目指すと宣言されました。今年1月からは新NISAもスタートし、国全体で資産運用の機運が高まっています。
それもあってか、現状の金融教育は「貯蓄」「投資」「資産運用」などにフォーカスされがちですが、これに警鐘を鳴らすのが、元ゴールドマン・サックス金利トレーダーで『お金のむこうに人がいる』(ダイヤモンド社)、『きみのお金は誰のため』(東洋経済新報社)著者の田内学さんです。
お金を貯めること、増やすことの前に理解したい、お金の本質とは。年始の今だからこそ、次世代と一緒に考えたいテーマについて、田内さんに聞きました。
INDEX
  • 社会と個人が接続されない金融教育
  • お金は「道具」でしかない
  • まず増やすべきは、お金より仲間
  • 金融教育は、キャリア教育とも不可分
  • お金を使うことも「学び」の材料に

社会と個人が接続されない金融教育

──今学校現場で行われている金融教育について、田内さんはどうご覧になっていますか。
田内 金融教育は、2022年度から高校の「家庭科」に加わったということが話題になりがちですが、もう一つ、社会科の公民科に新たに加わった必修科目「公共」でも扱われています。
僕も教科書の執筆に参加しているのですが、この「公共」では僕らが生きている公共空間における、あらゆる物事を扱います。法律や国際問題、そして市場経済の仕組みや景気の変動といった経済システムも対象です。
しかし、そこで取り上げられる経済システムはスケールが大きすぎて、自分の暮らしへの影響を実感しにくい。