2023/12/23

【ドキュメント】世界の覇者を決する「AI競争」の全内幕(中編)

米ニューヨーク・タイムズ紙が、80人以上の経営者、科学者、起業家の証言をもとに、生成AIをめぐるキープレーヤーたちのパワーゲームを描き出す大長編。
第2話では、ChatGPTの衝撃的な登場を受けて、Google、Meta、Microsftといった巨大テック企業がどう動いたのか、各社の興奮や焦燥を生々しくドキュメントする。
AIの覇権は、誰の手に──。
INDEX
  • ①Googleの危機感
  • ②「自社製品」が必要だ
  • ③号砲は鳴った
  • ④2週間で生まれたChatGPT
  • ⑤暗礁に乗り上げるMeta
  • ⑦本気を出すMicrosoft
  • ⑧Microsoft対Google

①Googleの危機感

2022年、クリスマスを控えたある金曜日の午後1時。
Google法務トップのケント・ウォーカーに呼び出された4人の部下たちは、週末の計画を一気にふっ飛ばされた。
Google法務のケント・ウォーカー(EPA=時事)
ウォーカー率いるチームは、SL1001と呼ばれる何の変哲もないビルに作業場を置いていた。
正面に青色のガラスが貼られたビルの内側では、何十人もの弁護士が、世界に圧倒的な影響力を持つ企業の利益を守るべく、業務に昼夜励んでいる。
しかしそんなことは、外からはうかがい知れない。
チームはここで何週間にもわたり、Google幹部が社の製品の安全性について話し合う会議に向けて準備を進めてきた。