日本女子inプレミアリーグ_20150415_FC東京

プレミア女子×FC東京 特別対談第2回

ライバルチームとの戦いをクラブがあおるのはタブーか?

2015/4/21
プレミアリーグのビッグクラブで働く本村由希が連載でJリーグ関係者との対談を呼びかけたところ、FC東京の小川知洋・事業部長が手をあげてくれた。プレミアリーグとJリーグの事業には、どんな違いがあるのか? イギリス時間早朝にスカイプにて行なった対談をお届けする。
第1回:プレミアリーグとJリーグのスポンサー営業はどこが違うのか?
FC東京の小川知洋・事業部長。クラブのスポンサーセールスを担当している(写真:木崎伸也)

FC東京の小川知洋・事業部長。クラブのスポンサーセールスを担当している(写真:木崎伸也)

FC東京のソーシャル力はJリーグ屈指

小川:個人的にはFC東京でアクティベーション(スポンサー権の活用促進)を増やしていきたいと思っています。それを私たちの価値にしようと。たとえばスポンサーである飲料メーカーさんの自動販売機の設置をクラブを通じて募集したり、他のスポンサーさんを紹介したりしています。また、スポンサーさん同士でのコラボ企画の提案や、スポンサーさんの企業CM映像の制作なども行っています。

本村:もしアクティベーションを進めるなら、どれだけソーシャルメディアに力を入れているかがカギになると思います。

小川:広報部の頑張りのおかげで、FC東京の「Twitter」のフォロワー数はJリーグのクラブの中でNo.1です。でも、FC東京のスポンサーに関わるセクション(事業部)には、私を含めて3人しかいないんですよ。

本村:そうなんですね!

小川:3人でセールスをしながら、スポンサーになっていただいた企業に対してのケアをしなければなりません。実際には社長をはじめ、他の部署のメンバーにも協力してもらっています。プレミアリーグにはアクティベーションを専門にする人がいるんですよね?

本村:はい。3人だけで全部やるのは本当に大変ですね。

小川:セクションごとのプロフェッショナルがいて、仕事を回せるというのはすごくうらやましいです。だたし、あえてポジティブにみれば、FC東京のいいところは、スタッフ全員で何でもやること。

私たちも試合当日の運営を行うし、ポスター配布や駅頭でのチラシ配りもする。日本的で古いやり方かもしれませんが、みんなでやろうという一体感がある。Jリーグに参入して約15年しか経っていないので、少しずつプレミアリーグのような組織に近づいていきたいです。

本村:時間が必要ですよね。

小川:本村さんが働くクラブには、アクティベーション担当が何人いますか?

本村:スポンサー担当とアクティベーション担当を合わせて40人くらいいます。そのうちアクティベーション担当は10人くらい。1人が3つか4つの企業を受けもっています。スポンサーシップを売れば売るほど人が必要になるので、おのずと多くなります。

小川:ソーシャルメディア担当はどれくらいですか?

本村:戦略を決めているのは1人なんですけれど、統計を取ったりしている担当者が3〜4人います。私たちのクラブの場合、テレビ局をもっているので、その大きなメディア部門の中にソーシャルメディアが入っています。

小川:先ほども少し触れたように、FC東京では広報部がソーシャルメディアを担当しています。その意味では、クラブ内では広報の人数が一番充実していて、約7人が働いています。

ただし、監督や選手の取材対応がメインの仕事なので、ソーシャルメディアに関しては各部門の情報を集めてアップするのが主です。記事を書くことはアウトソーシングしてライターさんに頼んだり、外部メディアを活用して発信したりしている。クラブがオフィシャルで発信するのは、事実に基づく情報発信が多いですね。

プレミアのクラブは「主観」を発信

本村:業務報告的な感じですか?

小川:業務報告的ってことではないのですが、物語やエピソードの発信はしていないですね。

本村:それをクラブの人がやると、もっと影響が大きくなると思います。外部の人がやってしまうと、外部の価値観が入ってしまうから。自分たちの言葉で発信するのが、ファンとしても一番うれしいんじゃないのかな。

小川:そこは日本的なのかもしれませんが、クラブが自分で発信することに躊躇しているところがあるのかもしれません。

本村:そうなんですか?

小川:ファンに「こうなんだ」と押し付けるのではなく、ファンの人がどう感じるかが大事というスタンスです。事実に基づく情報を伝えて、それを元にファンの方たちがつぶやいたり、メディアの方たちが評価してくれればいいという考えです。オフィシャルと別にあるのは、スタッフブログくらいですね。

本村:日本って、すごくブログ文化の国ですよね。

小川:そのブログにしても、「これは個人としての意向で、クラブとしての正式なものではない」っていう見せ方にしています。たとえば、ライバルチームとの戦いをクラブがあおることはありません。

本村:プレミアリーグの場合、全く逆です。クラブがあおらなくて、誰があおるの? という考え。お互いが言い合うのが当たり前。そうすれば話題になるし、話題になればお金になるし、クラブが潤うという感じです。

これからの情報発信は長文より短文

本村:話はそれますが、日本人は書くことがすごく好きですよね。イギリスに8年間住んで気がついたんですが、日本の人たちはすごく日本語に誇りをもっている。長い文章を書くこと、読むことが、他国よりも好きなんだと思います。

だって、日本人は長いメールを平気で書きますが、ヨーロッパの人も東南アジアの人も、メールで長い文章をほとんど書かない。こちらもメールを短くしないと最後まで読んでくれません。電話で話したほうが早いという文化です。

だから、日本のクラブがアジアや世界に出ていくときに、ブログで発信する感覚は変える必要があると思います。

Twitterや「Facebook」でさくっと書いたほうが、絶対に受けがいい。企業やクラブがブログで長い文章を書くのは、日本独特な文化だと思いますね。

小川:日本では、ちゃんとした文章を書けることがステータスになり、勉強ができる人ってイメージがあるのかもしれないですね。

本村:日本のクラブもソーシャルメディアで、短い文章や写真によって、知覚に訴えていくのがいいと思います。

小川:FC東京もこれからは映像に力を入れていきたいと考えています。

※本連載は毎週火曜日に掲載予定です。