(ブルームバーグ): 日本銀行は、賃金と物価の好循環の実現に向けた十分な確証が得られていないため、マイナス金利やイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)の撤廃などを今月急ぐ必要はほとんどないとの認識だ。事情に詳しい複数の関係者への取材で分かった。

これは、日銀が18、19日に開く金融政策決定会合では、金融政策の正常化が見送られる可能性が高いことを示している。関係者によると、賃金の堅調な伸びがデータで確認されるまで待つコストはそれほど高くないとみているという。

日銀はマイナス金利などの解除の条件である2%物価目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況には依然として至っていないとみている。焦点となる来年の賃上げへの期待感は高まりつつあるが、十分な確証は得られておらず、賃金と物価の好循環の実現をなお見極める必要があるとの声が日銀内に多いとしている。

13日公表の12月の企業短期経済観測調査(短観)を含め、経済・物価情勢や市場動向などを直前まで見極めた上で政策対応の必要性を判断するという。日銀は前回の10月会合で、長期金利の1%超えを容認するYCCの運用柔軟化を決めた。市場では早ければ今月の会合でマイナス金利が解除されるとの観測が広がっている。

金融政策運営を巡っては、植田和男総裁が7日の国会答弁で「年末から来年にかけて一段とチャレンジングな状況になる」と発言したことなどを受けて、市場で早期の正常化観測が急速に強まっている。関係者によると、植田総裁の発言は単なる一般的な見解に過ぎず、差し迫った政策変更を示唆するものではないという。

 ブルーバーグによる報道後、外国為替市場では円が対ドルで一時1%安の146円46銭まで下落した。大阪取引所の夜間取引で日経平均先物は上げ幅を拡大し、一時3万2920円を付けた。日経平均の11日の通常取引終値は3万2791円80銭だった。

ブルームバーグがエコノミスト52人を対象に総裁発言前の1-6日に実施した調査では、日銀が現在マイナス0.1%の短期政策金利を引き上げる時期は、来年4月の会合までの予想が67%となった。最多は4月の50%で、前回の10月会合前の調査の29%から大きく上昇。次いで来年1月が15%となったが、今月会合で解除するとの予想はなかった。

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--取材協力:酒井大輔、田村康剛.

(第6段落に市場の動きを追加して更新しました)

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